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【毒りんご】


たぶん、
それでも食べていたと思う。

もし、最初に少しの違和感を感じていても、
もし、もう目が覚めないと分かっていても、
もし、王子が来なかったとしても。



それでも、毒は
あの一瞬の「魔」を突き射し、
数秒の「蜜」を摘み取る。


圧倒的なものに出会うと、
抵抗する余白もなく魅了され、
そのまま我を忘れ続け、
理性がそのスピードに追い付く頃には、
もう、手が付けられないところに
佇んでいる。



*



ここまでの道を糸にして、
辿り寄せてみる。


いくつかの
絡まったとこで手が止まる…。



そして、いつも思う。




何度戻っても、
私はあの時、あの選択をしていた。
あの時は、限界に悩んで選んでいた。




この味を知らずに生きていくよりは、
毒と蜜の振り幅を楽しんで、
優雅に無邪気に
咀嚼できる人でいたい。




だって、私は知っている。




何があっても大丈夫なんだと、
それでも信じていると、
世界は想像以上に優しく、
それが鮮やかに彩付き、
ただただ、魅せられていくことを…。



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