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儚くて美しい物語り

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儚くて美しい世界ってどうしてこんなに魅力的なんだろう。
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2024年6月の記事一覧

夢幻の瓶と夢の中で(仮)

遠い世界のどこかに 天使と悪魔の小さな子供がいた 天使は白い翼を広げ、 微笑みながら空を舞い、 悪魔は黒い角を揺らし、 気ままに風を切っていた ある日、天の高みと地の深みから、 二人に与えられたのは試練の呼び声 「夢幻瓶の中に、 君たちの使命が眠っている」 それは、宝石のごとく輝く瓶の海 木々の枝に揺れ、 海の波間に揺られ、 草むらの中でひっそりと息を潜めている 瓶の中には夢が溢れ、 星屑と花びらが舞う空間 天使は善の道を照らし、 悪魔は欲望の声を囁く ある瓶には、

フラスコの夢

目を開ければそこはフラスコの中だった 蒼い液体がゆらめき、泡が音を立てて消える 世界は液体の中に溶け込んで 浮遊する光の粒が踊り、星のように輝く ガラスの壁越しに見える、もう一つの世界 そこには記憶のかけらが漂い、夢のかけらが揺れる 僕は透明な中で漂いながら 過去と未来の狭間に囚われている 手を伸ばせば届くと思ったが その先には無限の空間が広がっていた 声を出しても誰にも届かず ただ、無音の静寂が耳を塞ぐ それでも、光は優しく僕を包み 希望の灯が揺らめき、心に響く

追いかける風

人間は怖い。一昔前、人間の友達が出来た。僕は化けて人間と遊んでいた。冷やかしてやろうと思ったんだけど、すんごく楽しくていつしか友達になっていたんだ。 あの日は風が少し強くって、でも一緒に遊んでいたら突風が吹いて、僕は驚いて耳としっぽが出てきちゃったんだ。そしたら友達がすごく怖い顔をして大人たちを呼んで、僕を追いかけまわしてきたんだ。怖かった僕は森の中に逃げ込んだ。 友達だと思ってたのに、悲しかった。あれ以来人間が怖い。だらか僕は人間にちょっと悪戯をしては驚かすんだ。自分の

深海の光

息継ぎを忘れた魚のように 尾びれを揺らして眠りにつきたい 忘れがちな記憶と生命力は 透けて見えなくなってしまっても それでいいんだ。 大人になろうとすればするほど 上手に泳げもしない私を、残酷で冷酷な目で見てくる。 見たかった風景は美しくて好きだけど 少し疲れた私は水面に浮上する。 そのことがとても虚しくて、悲しくて まるで売れ残りの魚のように息絶えるようだった。 「おはよ」って優しい色の海に言えなくなってからは 正解を探して、空を眺めている。 私の切り取った輝かしい過