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言葉の羅列から生まれるストーリー

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言葉の羅列から生まれるストーリー無造作に無作為に言葉を羅列するそのままの順番でストーリーを作る
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2024年5月の記事一覧

青い海の虚無感

ミライと名付けたその野良猫は警戒心がなく、初めて出会う僕の隣へ座った。釣れない魚を釣る、このなんでもない時間にどんどん引き込まれていった。雨の日の午後は、いつだって悲しい色だった。誰もいない海と猫、横へまっすぐに伸びる水平線。雨は次第に曇りとなり、水平線をぼやかせた。部屋の窓から見える景色とは違った圧倒的風景に、僕は何か感じるものがあるだろうか。かつて没頭したことは全て過去となり、未来へ残るものがあっただろうか。歪んで見える水平線は、一体何を意味しているんだろう。 いつも通

見えない彼女と見える僕

僕は僕で生きる世界があって この世界に流れる風は、どこまでも冷たい 幾千の星々は、そんな僕にも笑いかけ でもやっぱり、朝になれば泡のように消えていく そこら中を見えないモノたちが潜んでいて 願い事を託す、彼らにはこの世が まるで穴が開いた空のように映っているんだろうか 嫉妬と焦りと闇が漂う世界に何を望むだろうか 冷たい空に見える君を、僕はどうすることもできなくて 海が見える踏切で一人考えてしまう 君に近づく方法は何通りあるのだろうか。 君を見つけてから、灰色であるはずの

探し物と碧い空

探し物が見つからない。どこを探しても見つからない。 もう、探しているものが本当にあったのかもわからないけど。 探し物を探す。 尖った心は誰も近づけさせず、人の話を片っ端から 「そうなんでしょ」って切っていったら 冷たくて、寂しくて、苦しい場所から抜け出せなくなった。 家まで送ってくれた先輩は私に夢を見させてくれたが 結局それは、先輩にとって苦しみしかないんじゃないかなと思う。 ある日、先輩は絵具を持ってやってきた。 首をかしげる私に「君を救い出そうと思ってる」って真剣に言

休息の花

まだ寝てていいよ、安心できるこの場所で 夢の続きを見よう、まだ起きなくていいから。 振り向いた先には、頑張って頑張って一人ずっと頑張って 認められたくて、もがいて、一度壊れた君がいて 夢を叶えたって、息をしたって、うまく笑えない君は 「神様は、笑ってくれない」って泣いていた 運命は変わらなくて、過去に戻ってもきっと同じことの繰り返しで 最高に自分を好きだったあの頃を、今でもあんなに執着してしまって ぐちゃぐちゃの泣き顔は、優しい君のままなんだけど 君は君の優しさで、押しつ

昨日までの僕が、僕を沈める

沈む、沈む、浮かび上がろうと、また沈む 昨日までの僕が、僕を沈める こんなに静かな朝だというのに、変わろうと決心したのに まだ同じ世界線にいる僕は、昨日までの「僕」にまた静かに沈まされる 口笛を吹いて新しい世界へ生まれ変わりたいと決意したけれど すり減った僕の何かは息苦しいままだった だから、「同じ道を歩こう」と僕の中の僕が言う 地に足をつけたはずだったけど、この浮遊感はなんだろう まるで砂時計のようにこぼれ落ちていく僕の夢は そこにあるのに掴めないような感覚に陥る 「そ

君のこの人生を

君が欲しかったものは何だい 君が望んでいた世界はどこだい 君がそれを目にしたとき その美しさに、涙を流すほどの 感動が手に入らないのは なぜだと思うかい 近道しようと縮めた空間は 悲しいだけで何も生まれないよ ふわふわと浮遊しながら泳いでは 意味がないと嘆くことを もう終わりにしよう 一筋の揺れる光は、心の中にあって まるで君の信念のように揺れてしまっているよ 月を見てはため息をつく君は 自分の世界に閉じこもり 頭の中は理想で埋めつくされ 独りよがりの世界に浸り 侵入者を

飴色の夕焼け

空が遠い。僕には手の届かない場所。 陽が落ちるこの時間帯は、なぜ物悲しい気持ちになるのだろう。 まだ落ちないで太陽よ、月よあと少しだけ待っててよ。 見送りたくて、バス停まで君と肩を並べて歩く。 話したいことが頭の中で文字になって舞い上がっている。 ふわふわする頭と心と足をどうにか地につけて、 消える太陽を見る君を僕はのぞき込む。 夕日が反射する美しい瞳に何かが割れる音がした。 ふわりと体が浮くような感覚に、胸が痛みだした。 飛び回る鳥を見て僕も一緒に飛びまわれたら この痛

寂寥

ぼんやりと月を眺める。 まん丸の月は満面な笑みで、微笑んでいるように見える。 私も思わず笑って、忘れたい感情を滲ませる。 泣けば泣くほど、不思議と笑顔になって空を見上げるのが こんなにも気持ちが良いなんて初めて知った。 昨日までの感情は地上へ残し空へと舞いあがりたい気持ちだ。 地上に残した感情の名前を知りたくて辞書を引いてみるんだけど 何が当てはまるのか分からなかった。 せめて答えだけでもわかったなら、心のざわつきも 少しは落ち着きそうなんだけどな。 映画なんてほとんど見な

うつろい儚く散れますように

声が、声が。出そうとしているのに出てこない。どうしてこうなったのか全く覚えていないけれど、私はどうやら死んでしまったようだ。そして病む私。死んでも病んじゃうんだ、つらい。 目の前には夫が私の名前を呼びながら泣いている、ねぇ私ここにいるよ? もう何十回何百回、いや何万回と叫んだけど私の声は届かなくてそれでも彼の時間は進み続けることに後悔している。 知らなければよかった、あなたがこんなに私を思っていただなんて。私が死んで20年。変わらず私を愛してくれている。なんでそこまで私にこ