アクアヴィーテ雑記

(こちらは以前ツイッターで書いた、アクアヴィーテの感想と、その追記です)


宝塚宙組「アクアヴィーテ」すごくないですか?すごいですよね?これが宝塚だって言われたらもう屈服するしかないです。幸福も愛も苦悩も哀愁も運命も、全部振り切って別の何かになっている。それを、「酒」というワードでまとめ上げるその腕力よ。宝塚という歴史に、否応なく説得力を感じました……。宝塚という存在、出演者たち、演出、劇場という場。表現は人に快感をもたらす、ということをこんな強烈に、直感的に証明してくるなんてすごすぎます。群舞のたびに涙が出る。歌詞が頭の中で勝手に反復し続ける。私は、ああいう腕力を持つものが、いつか書きたいんだなあと思った。

こういう、人を楽しませるために関わる全員がアクセル踏みっぱなしにしている作品に私はめちゃくちゃ弱いんです……。舞台って元々その方向にあるものなんですけど、この演目はその踏みっぷりがすごくてびっくりしてしまった……冷静になったらもっとちゃんと宝塚について、どこかで書こうと思っていますが……とりあえず歌詞のことを書かせてください。

「アクアヴィーテ」の歌詞。これは、まじですごいと思います。ストレートのストレートのストレートをやると真空が生まれる、って感じのパワーワードで、強すぎる……筋肉が違う……ってなる。ウイスキーがテーマのショーなんですけど、「ウイスキーがテーマ」をここまでやりきるって、もうホームランしか打たない!!って気力じゃないと無理だと思います。「ど、どういうつもりで書いているんだ?!」ってなる言葉の連なり、しかしその振り切りっぷりが「アクアヴィーテ」の肝となっている。つまり圧倒的に真顔で、意図的に書かれているんですよね……強すぎるなあ……。だから振り切ってるけど空中分解しないんだ。すごい。力技だと思います。

ショーの間、歌詞は頭に殆ど入ってこないんですけど、この入ってこなさ込みで印象に残ります。うろ覚え感があってこそ完成する歌詞っていうか……。要は言葉にまで酒を飲ませてるって感じがして、「わあ、舞台のための歌詞だな」ってめっちゃ思いました。

(ここから追記)

歌詞について、もう少し詳しく書くと、

スコッチ お前飲み干したい
アイリッシュ 爽やかな風
アメリカン ユニークなお前
カナディアン 高貴な香り
そしてジャパニーズ シンプルに愛してる

上記の「アクアヴィーテ」のサビのところ(太字のところをトップスター真風さんが歌い、それ以外は他の人たちが合唱)は、真風さんが一人で歌う部分だけだと愛のメッセージのように聞こえるんですが、コーラスを合わせて聞くと、ウイスキーを種類ごとに褒めている歌詞になるんです。トップとして光を浴びて歌う真風さんに見入っていると、真風さんの言葉ばかりが耳に残るという……お酒に酔って文脈がめちゃくちゃになったまま、人の話を誤解して覚えるパターンそのものやんけ……としみじみしてしまいました。口説かれたと思ったらウイスキー褒めてただけやった……という、酔っ払いの聴覚を再現するような歌ですばらしいです。いや、ほんとすばらしいのです。この前後不覚になる感覚で、金ピカきらきらなジェンヌさんたちが入り乱れる「アクアヴィーテ」は脳に直接ビタミンを送り込む演目だと思います。人類を元気にするために頑張る劇団、宝塚歌劇団……。



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リリカルを生業にして候。ここは宝塚のことを書く場所です。趣味の場。