窓際1番後ろ

高校生になればもっと自由が得られるのかと思っていた。あの制服を着れば私はもっと自由になれるのだと。
教室という箱がとても苦手で、何故みんな揃いも揃って前を向いて座って居られるのだろうかと疑問符ばかりだった。
その頃だっただろうか、文字を書き始めた。

窓際の1番後ろの席が好きだった。
教室という狭い世界の中で唯一部外者として客観的に眺められたから。
ノートの切れ端を手紙にして誰かから誰かの机へと回す。秘密のメッセージ。
誰かの悪口を書いた電子掲示板。
当時好きな人の前の席になって、神様が存在していた事を知る。その人とは名前が近くて俺らはいつも順番が最後なんだと文句を交わしていた。
Re:re:reが果てしなく続けばいいとそう願っていた。

私の前の席に居たある人はよく笑う人で、たくさんの人から好かれていた。
その時はちょうど手持ち無沙汰な自習の時間ばかり続いていた。自習だから各々好きな席に行き、休み時間のような時間を過ごしていた友人を目で見送りながらうとうとと午後の太陽を浴びていた。騒がしいこの教室の中には誰にも気付かれずに居ることが出来ると思っていた。ふと微睡みから目が覚めると前の席のあの人がじっとこちらを見つめ、眠っていたね。と一言だけ話して前を向いた。大切な何かを見られた気がした。誰にも隠していた何かを。その人は新しく学年が変わる前に遠くに引越ししてしまった。それから2年後、東京の忙しない喧騒の中で再会することをその当時の私は知らない。

学年が上がり私はあまり学校に行かなくなった。
ここには何も無いと、そう感じた。
息が苦しかった。

私が何かを見つけようとする話はここから始まる。

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