現代童話

むがぁす、あったどさ。


広田の長洞つ浜ど、小友の唯出つ浜どが、ひとつの湾の中で隣り合ってらったど。


湾の真ん中を境目に広田と小友の村の境目があってす、まんつ、昔っから「ば!あっちの連中どぁ、こっちゃ来て魚っこ獲ってらじゃ」つような、言い争いが絶えなかったんだど。


ある年のアワビの時期、長ぁく言い争いが続いて、ついに「もぅは、おらどでは決められね!アワビさ決めてもらうべ」となったど。


つまり、広田と小友の両側から活きったアワビを放して、アワビが進んだところまでを漁の境界にしようっつことにしたんだど。


二つの村で、いついつの日の朝にやっぺつごと決まったれば、広田の連中どぁ、しゃあしゃあど浜さ出はってアワビ獲ったんだど。までに生簀に入れて大事にしてたんだど。


そして、その日の朝になったど。
合図とともに広田と小友の両側からアワビを放ったんだど。したれば、小友からのアワビの威勢の良いこと良いこと。
小友の連中どぁ、その日の朝に獲った、いっとぎ活きの良いアワビ使ったんだど。


して、小友からのアワビは真ん中の村の境を越えて広田側の海まで入ぇったために、その日から小友の連中どぁ、広田の方まで漁に出ることができるようになったんだど。


今でも広田の連中どぁ、アワビの節になるつど、この話っこ語って、まんつ悔しいと思うんだど。


ちなみに、アワビだのウニだの獲るっこで使う箱メガネっつの、あるがすぺ?
あれは、広田の長洞の連中どぁが使い始めたのが最初なんだと。んだがら、箱メガネつのは、先祖がやった過ちを晴らすための広田の意地だったんだぜぇあ、っつ話だなっす。


どっとはらい。