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セリノオ

白市「この歌、あんまりでしょ?」

凡内「うん…俺はあんまり好きなタイプじゃない」

白市「私もこの歌嫌いなんだ」

凡内「あのさ…なんで恋人に自分が嫌いな歌聴かせてくるの?」

白市「昔、友達に紹介された男の人と映画に行ったの」

凡内「へぇ、なんの映画?」

白市「忘れた」

凡内「なんで?」

白市「全然面白くなかったの」

凡内「どんな映画だったの?」

白市「だから忘れたってば」

凡内「なんで俺がちょっと怒られたの?」

白市「最初から最後までつまんなかったんだけど、途中で一つだけとても素敵なセリフがあったの」

凡内「へぇー。どんなセリフ?」

白市「忘れたの」

凡内「……。」

白市「で、帰りにその男の人と映画の話をするんだけど、その人にはその映画がすごく良かったみたい」

凡内「そうなんだね」

白市「びっくりしたのが、私に唯一刺さったセリフが、その人には刺さってなかった」

凡内「そのセリフ次第だと思うけど…どんなセリフだったの?」

白市「だから忘れたってば」

凡内「うん…」

白市「この人変わってる…私とは合わないって思った」

凡内「うん…せめて映画のタイトルがわかれば、どっちが変わってるかわかったかもしれないけど。で、その映画の主題歌がさっきの歌なの?」

白市「ううん、違う」

凡内「違うの?え、映画の話はなんだったの?」

白市「何か関係性はあったんだけど…忘れた」

凡内「まぁ…まぁね、そういう時もあるよね」

白市「私、興味がないことは全く頭に入らなくて」

凡内「…俺のこと覚えてる?」

白市「こないだ喧嘩した」

凡内「うん…そうだね…」

白市「仲直りしてステーキ食べた」

凡内「うん…そうだったね」

白市「大きいサイズは苦しくなるからやめておきなさいって止めたのに、全然聞かなかった」

凡内「うん…」

白市「最後のほうで、ステーキが嫌いになりそうって言ってた」

凡内「うん、言ったよ」

白市「食べ過ぎてお腹どころか頭も痛いって言ってた」

凡内「すごく覚えてくれてる…」

白市「黒烏龍茶が欲しいと言ってコンビニに入ったくせにコーラゼロ買ってた」

凡内「ちょっと!ちょっとそこの制御不能!他人の時だけ鬼になるよね」

白市「ずーっと手を繋いでる人」

凡内「うん…そうだね」

白市「ずーっと手を繋いでくれてる。わかってくれてる」

凡内「うん。なんで歌を聴かせてくれたのか、ちゃんとわかってるよ」


ホワイトデーは、好きな人と二人で泣きました。目の前の幸せに怯えて二人で泣きました。

幸せを見ることすら怖い二人が、いつか二人で「幸せだね」って言えたらいいですよね。

あと、今日は鼻血が20センチ出ました。

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