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スナとイワ

川は ゆるやかに大きく 蛇行していた。

そして その両側へ スナ と イワ を生んだ

スナには 空いた場所と 美しい弧、可分性を

イワには 間のある場所と 無数の階段と椅子、 塊を あたえた。 

スナとイワの間を 川は絶えることなく流れ

人は川を渡り、タニシは階段をのぼり 魚は群れて遡上した 

イワの手の中で大きく生まれた渦と

スナの胸のそこから生まれた静かな波は

融け合い大きな水面となって北に流れていった。

       層

空のうえのすじ状の雲

ふく風に揺れる美しい巻き毛

そして美しい衣の襞

笑うと生まれる顔の皺

ななめにさしこむ朝の光の束

ふりしきる雨

赤や青い石の縞状の模様

無数の雨粒による同心円を流す川

ひとつひとつの笑い声が重なり行く時間

真夜中に聞こえる女の吐息

夜と昼

冬と夏

が層状に体積した

あたたかい山羊の角

道路にななめに交差してゆく変成岩

そして

河のむこうに風にゆれる竹林

栗の実の筋模様

大地に露出する変成岩

河の波

            鬼

赤い血肉のなかを、脊髄を横断してゆく一本の角

体を訪れる夜と昼が悲しみと欲望が複雑な層をもって堆積してゆく

カルシウムの結晶

体内の海

隠された螺旋

角にぶつかるたびに肋骨は鈍い音をたてる

日常の平衡にたいして歴史の傾きを啓示する角の断層

焼き場の台車の上で開示される鬼の素姓



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