
アロマクエスト|(2)|異変−2
少女は、あたりが暗いうちから起き出していた。
精油を抽出するために、花びらを集めるためだ。
花を摘むのに適した時間は、夜明け前からの数時間。
その時間帯を見計らい、急いで作業をする。
丁寧にひとつひとつ、手で花を摘むのだ。
一生懸命集めた花びらから採れる精油は、とてもわずか。
そのため、非常に高価なものとして市場に出回るのである。
しかし、自分たちの賃金は高いとは言えない。
それでも、家族のために働かなければならない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日も、いつものように起きて、農園に向かった。
現地に着くと、先に着いた仲間が集まっている。
しかし、いつもと様子が違う。
だんだん、自分の中でも違和感が大きくなっていった。
最初は、自分の鼻の調子が悪いのだろう、くらいに思っていた。
しかし、集まった仲間たちもそうだと知ると、あまりの事態に愕然とする。
どういうわけか、まったく花の香りがしないのだ。
「どうして、こんなことに」
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