アロマクエスト|(9)|旅立−1
ある日から、「香り」がなくなった。
生態系バランスの崩壊。
人の心と身体の衰弱。
スウェイング・シャドウの増殖。
人々は、環境の変化に怯えながら、日々を過ごしていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
周りを海で囲まれた、小さな島がある。
大陸の人々からも、その存在を忘れられた島。
意外なことに、その島には人が住んでいた。
荒れ果てた平原を走る、ひとつの小さな人影。
小動物を追いかけているようだ。
最近見かけない、久しぶりの獲物である。
持って帰れば、みんなも喜ぶだろう。
あと少しで獲物をとらえようとした時、
「誰か…」
突然聞こえた声に、立ち止まる。
(呼んでいる…)
「誰か…助けて…」
(誰なんだ…)
この小さな島に、住む者は少ない。
心当たりのないその声は、どこか近くで助けを求めている。
「助けて…この世界を…」
どこからだ?
耳をすませて、あたりを見渡す。
「!?」
少年は、自分が目にしたものに驚いた。