
アロマクエスト|(1)|異変−1
その日の朝、少年は目を覚ました。
昨日も夜更かしをしてしまったため、まだまだ眠い。
でも、そろそろ起きないと、学校に遅刻する時間だ。
いつもなら、「いつまで寝てるの!」という声がして、
母親がつくる朝食の匂いがしてくるはずだった。
どこかホッとする、そして、食欲をそそる香り。
しかし、今日はその香りがしない。
母親が寝坊したのではないことは、階下の明かりがついていることでわかる。
ベッドから起き上がると、少年はキッチンへと向かった。
◇ ◇ ◇
「おはよう」と言いながらキッチンへ入ると、
「ああ、おはよう」と気のない返事がする。
そして、首をかしげている母親の姿があった。
いつものように、朝食の支度がすすんでいた。
だが。
少年には、まったく匂いが感じられないのだ。
「僕、おかしくなったのかな?」ふと呟く。
「もしかして、あなたも匂いがわからないのね?」母親が言う。
目の前には、フライパンで調理されている料理があった。
まだ熱も感じるし、ジュージューと焼ける音もする。
しかし、匂いだけがしないのだ。
「どういうことなのかしら…」
この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!