はじめに|発達障害とは?
忘れ物やミスが多い、上司や同僚、お客さんとのコミュニケーションがうまくいかない、提出物期限が守れない、大事なものをなくしてしまう、仕事や家事の段取りが悪い、空気が読めないと怒られる・・・など、一つひとつは大したことのないように思える問題で、仕事や生活面に何らかの支障をきたしている人が多くいることが分かってきました。
こういったことは誰にでもあることですが、頻繁に起きていて、子供の頃からずっとそうだった場合、もしかしたらそれは努力不足などではなく、生来の発達のアンバランスが関係している可能性もあります。
発達のアンバランス、いわゆる発達障害とは、生まれ持った発達上の個性(特性)があることで、日常生活に困難をきたしている状態をいいます。発達障害の代表的なものとしては、自閉スペクトラム症、限局性学習症、ADHD(注意欠如・多動症)などがあげられます。
これらの特性を持つ人たちは、、障害とは気づかれにくく、必要なサポートを受けられずに困っていることがあります。
また、多くの人は自分なりの工夫や対策を考えて努力していますが、それにもかかわらずなかなか状況が改善されません。
そのため、自分自身で責めたり、本人が怠けている、悪気があってやっている、あるいは親の育て方のせいと言った避難や誤解にさらされたり、つらい状況に置かれがちです。
しかし、こうした問題は、本人の努力不足や家族のせいではなく、脳の発達特性によるものであると考えられます。
本人や周りの人が、その人の発達特性を理解し、適切に対応することで、生活上の悪循環を断ち切り、状況を改善していくことができます。
発達障害とは
発達障害は、生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態です。
そのため、養育者が育児の悩みを抱えたり、子どもが生きづらさを感じたりすることもあります。
発達障害があっても、本人や家族・周囲の人が特性に応じた日常生活や学校・職場での過ごし方を工夫することで、持っている力を活かしやすくなったり、日常生活の困難を軽減させたりすることができます。
自閉症スペクトラム症(ASD)
限局性学習症(SLD)
注意欠陥・多動性障害(ADHD)
チック症
吃音
これらは、生まれつき脳の働き方に違いがあるという点が共通しています。同じ障害名でも特性の現れ方が違ったり、いくつかの発達障害を併せ持ったりすることもあります。
発達障害の定義
広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群等)、学習障害、注意欠陥・多動性障害等、通常低年齢で発現する脳機能の障害
自閉スペクトラム症(ASD)とは
自閉スペクトラム症では、
「社会的コミュニケーションおよび対人関係」
「こだわり」
の特性が見られます。
自閉スペクトラム症は、発達障害の1つであり、遺伝と環境の双方が関与して起こりますが、育てられ方が原因で起こるものではありません。注意欠如・多動(ADHD)などの他の発達障害や、他の精神疾患、身体疾患が併存していることも多く見られます。
自閉スペクトラム症の症状
社会的コミュニケーションおよび対人関係の問題
通常の会話のやり取りが苦手だったり、他人と感情を共有することが少ない。
相手の表情や身振り手振りから、気持ちを読み取ることが苦手。
実際に目の前にないものや、架空の事柄を想像したり空想することが難しい場合があります。
また、仲間に対する興味が薄いことも。
「こだわり」の問題
物を並べたり、叩くといった単調な行動を繰り返す。
同じ習慣への強いこだわりがあり、少しの変化にも苦痛を感じる。
興味の範囲が狭く、特定の物にこだわる。
感覚(聴覚、嗅覚、触覚、視覚、味覚)などが非常に敏感または鈍感。
自閉スペクトラム症の人たちは、生活に困難を抱えながらも外からはそれがわかりにくいため、発達の問題が有ることに気づかれにくい場合があり、「わがままで自分勝手」、「空気を読まない」などと言われ。つらい思いをしてきました。
こうした人達の特徴は、性格の特徴とも言えますが、この特徴が著しく、社会生活を営む上で本人や家族、周りの人が困っていたりつらい思いをしているのならば、適切に行動できるよう対処法を考えたり、支援を受ける必要があります。
日々の困難が積み重なると、精神的にもつらい状況となり、他の精神疾患を併発するなど、二次的な問題につながる可能性もあるためです。
限局性学習症(SLD)とは
限局性学習症とは、知能的には大きな問題がなく、目も見え、耳も聞こえているのに、「読む」、「書く」、「計算する」といった学習技能のいずれは1つ以上が上手くできない状態をいいます。
限局性学習症の症状
「読む」ことの問題
誤った発音をする、文章の文字や単語を抜かして読む、読んでいるものの意味を理解することが難しい、などの状態。
「書く」ことの問題
誤った文字を書く、句読点を間違える、単語の中に誤った文字が混じる、文法的な誤りの多い文章を書く、はどの状態。
「計算する」ことの問題
数の感覚、計算の正確さに困難が有る、数学的推理の正確さに困難が有る、などの状態。
限局性学習症の診断は非常に慎重に行われる必要があります。
栄勝支援としては、書くことが苦手な人ではパソコンを使う、計算が苦手な人では電卓を活用する、また書き写すことが苦手な人ではカメラで記録するなど、それぞれにあったツールを活用することで、困難を補うことができます。
育てられ方などが原因ではないかと誤解されることもありますが、発達障害の1つであることをご理解ください。
ADHDとは
ADHDは発達障害のひとつです。現在広く用いられている診断基準では、12歳になる前からその症状がみられるものとされています。
これまで、ADHDの症状は年令を重ねると収まる傾向にあるとされてきましたが、最近の研究では、約60%の人で成人期にも症状が残るといわれています。
個人差はありますが、大人のADHDは、子供の頃と比べて多動性が弱まり、不注意が目立つ傾向にあるようです。
ADHDの症状の変化
子供の症状
多動性
落ち着いて座っていられない
遊びにおとなしく参加できない
過度におしゃべりする
衝動性
質問が終わらないうちにだしぬけに答えてしまう
順番を待つのが難しい
他の人がしていることを遮ったり邪魔したりしてしまう
不注意
勉強などで不注意な間違いをする
同じことを繰り返すことが苦手
話を聞いていないように見える
課題や活動を順序立てて行えない
興味のあることに集中してしすぎてしまい切り替えが難しい
大人の症状
多動性
落ち着かない感じ
貧乏ゆすりなど、目的のない動き
衝動性
思ったことをすぐに口にしてしまう
衝動買いをしてしまう
不注意
仕事などでケアレスミスをする
忘れ物、なくしものが多い
約束や期日を守れない、間に合わない
時間管理が苦手
仕事や作業を順序立てて行うことが苦手
片付けるのが苦手
特にお困りの症状があれば、この表のような言葉で医師に説明すると伝わりやすいでしょう。
ただ、こうした症状がある人がすべてADHDというわけではありません。ADHDに似た症状を示す障害は他にも有るため、最終的な診断を下すためには、他の障害や病気ではないことを確認する必要があります。
また、ADHDには自閉スペクトラム症などの他の発達障害や、他の精神疾患、身体疾患が併存していることも多くみられます。
他の障害や疾患が合併していると、ADHDの症状が見極めにくくなったり、治療効果や将来に影響を及ぼしたりする可能性があるため、併存症の有無も適切に診断する必要があります。
相談できるところ
診断を受けたい
医療機関→精神神経科、心療内科など
子供の発達障害は主に児童精神科、小児精神科、小児神経科といった専門医が対応します。しかし、大人の発達障害の専門医は少ないため、多くの場合、一般の精神神経科や心療内科などを受診して、必要に応じて専門医を紹介してもらいます。
具体的な対策を知りたい
●発達障害者支援センター ●地域療育センター ●総合精神保健福祉センター ●自治体の福祉担当窓口 など
発達障害者支援センターや地域療育センターは、家庭や職場など、日常生活のさまざまな相談に応じてくれます。
総合精神保健福祉センターや自治体の福祉担当窓口は、福祉相談の他に、障害者手帳の申請についても聞くことができます。
発達障害者に対する独自の手帳制度はありませんが、療育手帳や精神障害者保健福祉手帳の交付基準に該当する場合、手帳の交付を受けることができます。
各自治体により対象者が異なる場合があるので、お住いの福祉担当窓口にお問い合わせください。
仕事について相談したい
●地域障害者職業センター ●ハローワーク
就職に向けての職業準備支援や、就職先の紹介などを頼むことができます。
また、職場へのジョブコーチの派遣も行っています。
※ジョブコーチ:発達障害がある人に、仕事の数s目方を実践的に指導する役割です。
話を聞いてほしい
●民間の支援団体 ●患者・家族会 など
当事者同士の情報交換や、経験者からのアドバイスを聞くことができます。
成人期のADHDの自己記入式症状チェックリスト
本チェックリストは、ADHDの症状が有るかどうかを確かめるためのものです。
医療機関を受診する際に、現在の症状をチェックしてお持ちいただくと、診察の参考になります。
本チェックリストはパートA,パートBの二部構成になっています。
パートAは、ご自身でADHDヂョ有情の有無を確認するのに役立ちます。
パートBは、医師にとって役立つ情報となりますので、もし医療機関を受信される可能性が有る場合、チェックをしてください。
パートAの色がついている部分に4つ以上のチェックがついている場合、ADHDの症状を持っている可能性が考えられます。
このチェックリストは、医師に相談する際に症状を的確に伝えるためのものであり、診断結果を表すものではありません。
ADHDの症状と似た症状を示す精神疾患は多く、ADHDとこうした疾患とを区別するためには、慎重な診断が必要です。
このリストをチェック後、受診の際にお持ちください。
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