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ミュージカル「ヘタリア〜The world is wonderful~」 東京12月25日のレポというか感想。《2》


 もう誰も読んでないだろうが、語りたいから語るヘタミュ感想続き。
 思ったことをそのまま書いているので読みにくい。①の感想とダブってるところが多々あります。
 ちょっと苦言多めで、楽しい感想は配信や円盤が出されたときにまたやりますね。




《ヘタミュで気づいたこと。》


 たぶん意識して『戦争』って言葉を使っていない。プーの台詞でも確か徹底して『いくさ』だった気がする。
 やっぱり“戦争”って言葉を使うと、舞台のキラキラでぼやかしているものが一気に生々しくなるんだとうなと思った。



《ヘタミュで明確に駄目だった所》


 例えギャグでも他国の伝統料理(スターゲイジー・パイ)をゴミ扱いしちゃ駄目だろう。
 日本の料理だって他国から見たらゴミや気持ち悪い食べ物(もんじゃ焼きや納豆、白子やひじきなど)がたくさんあるし、それを異国の舞台劇でゴミ扱いされていたら不快だろう。
 脚本家、これさすがに言葉が強すぎるとは思わなかったんだろうか。
 せめてゲテモノならわかるが、クリスマス配信まで特に直されることなく進んでいるということは、観客もクレームをつけなかったということか。
 いやーーーーーー、ちょっと私は問題あると思いましたね。
 ゴミはないでしょゴミは。

 

《中国》


『私は面白いと思ったアル!!』のアドリブカバーが秀逸すぎて。
 何度笑ったかわからん。もうナイスカバーというか、あそこまで切れ味のいい優しさのアドリブを入れられる役者さんの技量が凄いし、長兄の優しさで年少者のミスを庇う感じがまた中国さんらしいんだよね。
『長え上に面白くねえアドリブかますじゃねえよ』のイギリスさんや『これがリアルなダメ出しさ。恐ろしいだろう?』のアメリカ、『俺たちまで怒られた気持ちです…』のイタリアちゃんのアドリブもすごく面白かったんですけどね(『毎回心臓がギュっとなるんだぜ』のリアルな中の人のドキドキさがまた面白しろかった!)
 それに畳み掛けるような『ああ!? ワタシは面白いと思ったアル!!』が見事すぎて。
 私、基本的に舞台のアドリブが嫌いなんですよ。映画みたいに完成された台詞ではないし、客に受けるかどうかは運次第。
 あの『受けるかな?受けないかな?どっちだろ』っていう手探り感が嫌いなんですよ。あぶなっかしすぎて見ていられない。
 でもヘタミュにはそれがない。
 全部のアドリブが面白い!(特に今回、アメリカさんのアドリブの凄さは素晴らしかった。そりゃそういう仕事しかこなくなる。毎回楽しくて面白いて)
 弟相談所でイギリスに急に『俺の弟にならないかー!!』と言われ、素で自分に対するフリだと気づかなかった中国さんも可愛かった。戸惑い方に上品な可愛さがあったんだよね。
 イギリスの星を見上げるパイを『まっずー!』と言うスペインに対し、『ちょっと言い過ぎあるよ』という所とかね。やっぱりちょいちょいした所で、長兄としての優しさを見せるところ好きです。
 イタリアちゃんに統一の大変さを語る所とかね(中国統一ネタを北斗の拳で説明した所は面白い上に感心した)
 でも今回はその長兄としての優しさをクローズアップして逆に問題だと思う所もあって、前の記事でも言ったが、日本との兄弟関係がウエットすぎる。 美しく描きすぎ。
 なるべく歴史的な暗い部分には触れない形で極東兄弟の関係について描いたつもりなんだろうが、私には逆にそれが日本を良く見せるための美化にしか見えなかった。
 劇中でも眠れる獅子について触れていたが、西洋列強から『眠れる獅子』として恐れられていた中国が『太った豚だ』と露見したのは、日清戦争で中国が日本に負けたからなんですよ。
 そういう史実を知っているからこそ、アメリカやイギリスにもみくちゃにされている中国を見て日本が切ない声で『中国さん…!』というのは違和感を覚えるし、アメリカに手を強引に引きずられる日本を助け、『極東をナメるんじゃないある!』と長兄としての責任感や強さを見せる中国にも違和感を覚える。 
 日本は常にアメリカや西洋の国に振り回される被害者の国か?違うだろ。
 こういうところが『ヘタリアは令和に復活させてはいけないコンテンツ』とか言われるんだよな。(私は半々の気持ち。ヘタリアの良さや功績を否定はできないなって立場)
 ヘタミュの中国さんの長兄っぷりが素晴らしいからね。優雅さと愛嬌とアジア的な兄らしさがよく出てて好き。ファンからにーにと慕われるだけの寛容さや周りへの気配りができている人だからこそ、公式は中国を描くとき、あんまり日本との兄弟関係をクローズアップしてほしくないなあと思う。気を使いすぎて逆にメチャメチャ駄目な部分を踏んでいる。


《日本》


 中国との兄弟関係描写についてメチャメチャ文句を言いましたが、ヘタミュの日本自体は素晴らしいと思っているんですよ!
 再現率高ッッッっ!!!
 よくあんな再現が難しいキャラクター性(過激な主張はしない・前に出すぎても何か違う・でも地味ではなく、存在感というか注目度やファンからの思い入れ度は高いキャラクター)を舞台で再現できたなと思います。
 実際、演じると難しいだろうなと思いますよ。ヘタレとか筋肉!とかアイ・アムNO1!とか、これやっとけ!!みたいなわかりやすい特徴がないわけですから。
 でも舞台の日本は大和撫子的な奥ゆかしさを出しつつも、周りの国と見劣りしない。しっかりとした存在感がある。
 あと『私なんかが…』と謙遜したり、周りの国のパワフルさに振り回されはするが、あんがい神経は図太いんだよね、日本って。気弱だとか繊細キャラとかではない。
 アメリカとかに強引に肩組みさせられてても、『隙あらば周りを出し抜いてやろう…ゲイツゲイツ』ぐらいのことは考えてるふてぶてしさはあるわけで。
 そのふてぶてしさも、ちゃんとあの奥ゆかしさの演技の中に感じられて凄いなと思うわけですよ。
 本当にヘタミュの日本は奥ゆかしさと周りに負けない神経の図太さが同時にあって最高。
 それでいて中の役者さんの素の性格は全然違いますからね。
 ヘタライでしか中の人の性格やコメントを知りませんが、けっこうなオラオラ系というか、体育会系な気風を感じる喋り方。
 舞台上での大和撫子……な日本とはぜんぜん違う。
 そのギャップに驚いたし、中の人の演技力すげえな…と脱帽しました。
 今回もその中の人のオラオラさは微塵も感じさせない奥ゆかしい演技でヘタリアの日本を演じきってくれたし、唐突な渡る世間に鬼はなしパロディにも大いに笑いました。
 あの音楽とあの演技は卑怯。どうやっても笑ってしまう。
 演歌うまいな祖国。



《スペイン》


 今回の優しさ担当。
 ロマーノと一緒にダンスをする姿が可愛くて!個人的にヘタライで国旗を旗振っている惚れた。
 今回、オーストリアに引き取られたイタリアちゃん、スペインに引き取られたロマーノを見ていて、どっちの愛情のかけ方が正しいのかなあと思った。
 宗主国と属国という立場の違いをはっきりし、上司としてイタリアに仕事をしっかり教えるオーストリアと、家族同然に甘やかしてくれるが、実際は家族でも兄弟でもなく南イタリアを支配している強国スペイン。
 どっちも愛情はあるしイタリア兄弟を守ろうとしているんだけど、まだオーストリアさんの愛情のほうがまともだなと思った。
 独立は許しません!と、属国に逃げられると困るという国としての立場をはっきり声明してるしね。
 けどスペインはロマーノには優しさしか見せていなくて、逆に怖い。
 別に家族じゃないのに。国として、ロマーノを対等な存在として見ているわけじゃないのに。
 別にスペイン、優しい国じゃないですからね。
 冒頭で無邪気に『世界中に弟作ってやってんでー!』(つまり新大陸開拓と植民地支配)言ってるし、アメリカの独立ではフランス兄ちゃんと一緒に楽しそうに利益目的で暗躍してたわけだし。
 そういう血なまぐさい歴史と野心がある男なのにロマーノにだけ優しく、『イタリアちゃんを信じたって』と独立を応援するの、宗主国としてどういうスタンスなんだ?と混乱した。
 結局、イタリア統一もふわっとしたファンタジーで締められたしあまり深く考えちゃ駄目なんだろうが、フランス兄ちゃんが今作の悪役を一身になっていた分、スペイン兄ちゃんには『優しさ担当…』という印象が拭えなかった。
 せめてロマーノがスペイン兄ちゃんに対し、『こいつの優しさはどこかおかしい』という描写があれば、スペインの歪さや、最終的にロマーノはイタリアと一緒になる展開も色々納得できたかもしれない。


《ロマーノ》


『戦争をすれば弟や多くの人が傷つく。だから強いものに従い、庇護される道を選ぶ』は弱者の戦略だなと思った。
 イタリアちゃんみたいにすぐに白旗を振るヘタレギャグではなく、シリアスな面から見た弱小国の生き抜き方。
『自分に力がないからこそ強いものに従う』という弱者の論理が等身大の私達に近くて良かったですね。
 戦争は怖い。痛いのは嫌だ。身内が傷つき、失うのはもっと嫌だ。
 果たせるかどうかもわからない独立を目指しボロボロになるより、『舎弟としてうまく利用しようとしているだけ』でも、平穏な隷属を選ぶ。
 まあ、そういう立場でも独立を選べる強さを持ったのがイタリアちゃんなんだろうな。
 もちろんそれでロマーノが駄目とかではなく、むしろ国でありながら人間臭い弱さや躊躇いがあって、今回の舞台でロマーノというキャラクターに深みが増したような気がします。


《イタリアちゃん》


 『パスタ〜』と言ってるイタリアちゃんも可愛いですが、私はやはりシリアスで悲痛なときの演技の彼のほうがメチャメチャに好きです。
 等身大の青年らしいというか。『兄ちゃん!』『神聖ローマ!』と叫ぶときの悲痛さが美しい。
 原作やアニメでは難しい、幼稚ではないイタリアのシリアスな存在感と苦悩があり、キャラクターの解釈の深みや国擬人化作品としての厚みが出て、今回も後半泣きそうになりました…。
 私は中の人のことをさっぱり知りませんが、アメリカさんのアドリブに翻弄されるときに垣間見える素の戸惑いやシリアスな時の歌声が綺麗で、好青年なんだろうなーと勝手に思っています。
 それくらいシリアスなイタリアちゃんの演技はよいぞ!!