「財布を拾ったときの心の声」【ニジソウサク ショートショート】

財布を拾った。マジックテープのやつ。


おそらくガキのだろう。今の子はガキでもパチンコの足しにはなるくらいは入ってる


そのとき心の中から声が聞こえた。



「お財布を拾ったら交番に届けなきゃダメだよ」と、俺の中のあゆみちゃんが言う。


「その金で鰻重、くっちまえよ!」と、元太。


「いいや、元太君それは立派な犯罪ですよ。」と、光彦。


「盗みなんて、最低ね」と、灰原さんが冷たい声を浴びせる。


どうやら俺の中の天使と悪魔は、デフォルトで少年探偵団のようだ

チッ!、黙れガキども、バレなきゃ犯罪じゃねーんだよ。そう言って俺は、俺の中の少年探偵団を消し去った。


すると、後ろから声が、
「ねぇお兄さん、この辺に財布落ちてなかった?」


俺は、冷静に答えた。「えっ?子供の財布?知らねえよ、落としたんか?」

するとその話しかけてきた蝶ネクタイのガキが
「うん、友達が落としちゃったんだけど、、、あれれ?おかしいなぁ?僕は財布とは言ったけど、''子供の''とは言ってないよ?何で、わかったの?」

うっ!と思ったが、その瞬間無意識に口がうごいた




「子供が聞いてきたから、子供ってつけただけだ。あとこれ。見ろこれは俺の財布だ。マジックテープのだろ。良い年して子供のような財布使ってんだよ、ろくに働いてないからな、それが恥ずかしいし、だからそこを気にして子供のってつけた。

中も見ろ、パチンコ屋の隣の牛丼屋のクーポンばっかだ。そうやって人を泥棒みたいに言いやがって名誉毀損だぞ、ていうかお前はそうやって大人を騙そうとしてるのか?子供だからってなめんなよ。

おっと、泣いてもダメだ、名誉毀損だけでなく立派な詐欺だからな、親呼んでこい警察でも呼んでやるから、金はないけど時間だけはあるんだ」


気づくと拾ったものをさも自分のものかのように細工し、口から出まかせに、逆に子供を追い詰めていた。


俺の心の中の青山剛昌は、少年探偵団に黒幕感を抱かせすぎている。

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