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指原莉乃のサシハラスメントで思い出すパンサー尾形の訴え

「女性がついていったのが悪いっていう話をネットでしてるじゃないですか。それがそもそも一種のセカンドレイプなんじゃないかって思う」

ワイドナショー:指原莉乃

ワイドナショーで指原莉乃氏が発言したこの一言で、男側の意見はあっさりと封じられることとなり、言ったもの勝ち社会は一歩前進した。

あくまで告発する女性を守るための発言だったことは想像できるが、結果として、与えた影響が“悪い意味”で大きすぎた。

という話をここでした。

そんな彼女が、13年前のバラエティ番組の動画を掘り返され、炎上中ですよと、先日のYouTube LIVE中にコメントで教えてもらった。

後藤輝基さんと指原莉乃氏が2017年6月までMCを務めていたバラエティ番組『地元ファン獲得バラエティ HKT48のおでかけ!』で、2014年放送時、指原氏が当時11歳や13歳の後輩メンバーの口にキスをしている場面があり、これがなぜか今頃拡散され、指原氏の予定されていたインスタライブも延期されたという。

そらみたことか、何年前とか関係ないんだろ、ブーメランざまあと言いたいところだが、僕は、この動画がそこまで問題だとは思わなかった。だって、テレビ番組だから。

影で強要してたわけでなく、テレビで行われたことであり、キスしてる彼女たちは未成年ではあるが、指原氏と無関係ではなく同じグループで、一般人ではなく、芸能の仕事でお金をもらっているプロフェッショナルだ。彼女たちが指原に謝罪を求めているならまだしも、そんな事実もない。

「あのとき本当は嫌だった」の感情表明で叩かれる次は、「あのとき本当は嫌だったに違いない」という憶測で叩けるとすれば、叩きたがりの人たちにとってはこの上ない飛び道具となる。おそらくこうしてる今も、一攫千金夢見て昔の動画を掘り起こしているに違いない。こうなったら僕も菅田将暉あたりの動画を掘り起こすしかない。

クドカンが、ちょっと下降気味の『不適切にも程がある!』の脚本を急遽書き換える線も考えたが、もう全話撮り終えてるか。

「後輩の未成年アイドルたちは、きっと嫌だったに違いない」

という憶測が通るなら、こういう憶測はどうか。

番「今回は指原のサシハラスメントでいこう」
指「えー。でも実際そこまでじゃないんですよ」
番「それじゃつまんないからさ、誇張してやってくれないと」
指「うーん。どう?みんな。大丈夫そー?」
未「わかりましたー」
番「あ、あと、みんなさ、ちょっと嫌がる感じも出して。楽しそうにされちゃうと面白くないから」
未「わかりましたー」

という、“憶測”。

上岡龍太郎さんと笑福亭鶴瓶さんの『パペポTV』、古舘伊知郎さんと石橋貴明さんによる『第四学区』、島田紳助さんと松本人志さんによる『松紳』、達者な人たちによるフリートーク番組なら、「台本なしで現場で好きにやってください」があり得るかもしれないが、若いアイドルを交えて進行する番組において、全く事前打ち合わせなしでやっているとは思えない、と、僕は“憶測”する。

「そのすり合わせ段階から嫌だったに違いない」とすれば、問題視すべきはディレクターや、番組、放送局になる。または彼女たちの事務所。

本人たちは嫌だったに違いないが、番組側がそれをやってくれと言うし、事務所も了承しているから、そうせざるを得なかったに違いない、という“憶測”。

ただ、こういった憶測が通念化していくと、アイドルはもちろん、芸人はいよいよなにもできない。

落とし穴に落とされれば、やりすぎだ、かわいそう、やめてあげてという声が飛び交い、彼らの仕事は消える。

それを予見したかのような“もし本当にそういう世の中になったら”というドッキリが、2年前水ダウで放送されている。

2022年4月28日放送の『水曜日のダウンタウン』において放送された「若手芸人コンプライアンスでがんじがらめにされても従わざるを得ない説」は、クイズに間違えると電流が流れるというニセ企画で、回答を間違えたパンサー尾形氏が「痛い痛い痛い痛い痛い!」と大声で叫ぶとスタッフがカメラを止め、「痛いっていうのがコンプライアンスに引っかかるんです」と伝え、“痛い”がNGワードになる。

次に尾形氏は「うわうわうわ…」と体を小刻みに揺らし、動きでリアクションを取るが、再びカメラを止められ、「動くのも痛そうに見えるので…」と“動き”も封じられる。

最終的にドッキリだと伝えられると、「そんなんダメになっちゃったら、もう俺(テレビ)出れねぇよ!」と尾形氏は叫んだ。

「死ぬわけじゃないんだから、みんな。死ぬわけじゃないんすよ。ちゃんと訓練受けて、やりたくてやってっから!うれしいんだわ、こっちは!これで子ども育ててんだ俺!わかってください、皆さん。もう真剣に見ないでください。家で寝っ転がってポテチ食べながら見てください!」とカメラに向かって訴えた。

ちゃんとした訓練とはどういう訓練なのか分からないが、確かにそんな世の中になったら、尾形氏の面白さは半減してしまうかもしれない。結果、尾形氏をテレビで見る機会は減ってしまうだろう。

少なくとも今回の一件で、テレビに出る未成年は腫れ物扱いされると思う。バラエティであろうとドラマであろうと、いつ何時誰が「本人は嫌に違いない。未成年だぞ!」と制作サイドを叩きにくるか分からない。とすれば、テレビもエンタメも、未成年の起用には必要以上に慎重にならざるを得ない。使わないに越したことはない。「未成年だぞ!」という批難が来るから。

そうすると、最も影響があるのは子役か、または、10代が旬と言われるアイドルか。

そのうち、未成年がミニスカートで歌うのも「本人は嫌に違いない」と指摘され、人前で歌うときはジャージ一択になるかもしれない。そこに本人の意志や希望は関係なく「本人は嫌に違いない」「未成年だぞ」の理由でがんじがらめにされる。

「自由になりたくないかい!?」

と歌う尾崎豊が日比谷野外音楽堂の照明イントレから飛び降りて骨折したのが18歳。当時の制度ではまだ未成年。これも、「本人は嫌だったに違いない」とされる時代になるのか。

ネットでは、指原莉乃氏のような権威的存在を叩く声の方がしばらく目立つだろう。際立つから。それがネットだから。

でもそれは一時で、そのうち冷静な意見が出てくる。あのアイドルの子たちがなにか声明を出すかもしれないし。

いずれにせよ、あのバラエティ番組の動画だけで指原莉乃氏をジャニーさんと同じ性加害者扱いし、芸能界から追放させようとするのは、あまりにも早計。

指原は今後も芸能活動を普通に続けていくと思うし、それでいい。彼女が辞めるようなことになれば、他にも降ろされる人が出てきてしまう。

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