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ホーランの肉体の秘密 ~バイオハッキングとは?~

欧州各国メディアがドルトムントに所属するノルウェー代表FWアーリン・ホーランの肉体を徹底解剖している。

■両親からの遺伝

ホーランは母国では瘦せっぽちの子供だったが、今では194cmの巨人にまで成長し、強さとスピードを併せ持つストライカーに変貌した。

ホーランの成長において、偶然なものは一つもない。

アーリンは、元マンチェスター・Cの父アルフ・インゲ・ホーランと、元ノルウェーの七種競技チャンピオンである母グリ・マリタの間に生まれた。

遺伝的にスポーツ界のサイボーグになるようにプログラムされていたのだ。

母親の血を受け継いで、5歳の時に走り幅跳びでは1.63mを記録し、5歳以下の世界記録を更新した。

■幼少期

ホーランの元コーチであるアルフ・イングヴェ・ベルントセン氏は、ホーランが13歳の時にはすでに将来ノルウェー代表に入ることを予感していたようだ。

ベルントセン氏のコメント
「13歳の時に、彼がノルウェー代表に入ることはわかっていた」
「彼にはハードワークの精神と戦術的センスがある」


しかし、ホーランはフィジカルを改善する必要があった。

元フィジカルコーチのエラーゼ・ステーンスリッド氏は、遺伝的な要素がホーランの成功に大きな影響を与えていることを認めながらも、彼自身が誰にも負けないほどの努力をしていることを明かしている。

ステーンスリッド氏のコメント
「彼の体がトレーニングにこれほど反応するのは、彼が遺伝的に恵まれているからだ」
「彼はわずか15ヶ月で12kgの筋肉をつけた。これはクレイジーだった。身長が急に伸びすぎて体のバランスが崩れていたので、彼には必要なことだった。私たちはゼロから彼の筋肉を作り上げたんだ」

また、食事への愛情もホーランの成長に一役買っている。

ステーンスリッド氏のコメント
「彼はいつもビュッフェに一番近いところにいて、彼のお皿は文字通り食べ物の山だった」

■スールシャールとの出会い

もちろん、他のプロスポーツ選手のキャリアと同様、ホーランにとっても簡単なことばかりではなかった。

ホーラン自身、デビュー後しばらくの間はトップチームでゴールを決めることができなかったことを明かしている。

だが、当時のモルデ指揮官であるオーレ・グンナー・スールシャール監督(現マンチェスター・U)との出会いが転機となった。

ホーランは、現在のようなゴール前で冷静にフィニッシュできる危険なストライカーになることができたのは、同胞であるスールシャール監督のアドバイスのおかげであると語っている。

ノルウェーの地元クラブであるブリンでトップチームデビューを果たしたホーランは、2017年2月にモルデに移籍。

当時モルデを指揮していたのが、スールシャール監督だった。

マンチェスター・Uの監督に就任する2018年12月までの約2年間、ホーランはスールシャール監督の下でプレーした。

ホーランによれば、将来を決定づけるきっかけとなった試合は、モルデ時代の2018年7月1日に行われたブラン戦(〇4-0)だったという。

ホーランはこの試合で開始わずか21分で4ゴールを記録した。

ホーランは『Eurosport』のインタビューに対して、次のように説明している。

ホーランのコメント
「その試合の前日に、スールシャール監督と僕はフィニッシュの練習をした」
「単なるクロスからのシュート練習ではない。とてもシンプルなルールを教えてくれたんだ」
「彼からはゴール前で冷静になること。そしてつま先で立ち、常にボールが来てもいいように準備することなど、たくさんのことを教わった」
「ワンタッチによるフィニッシュもだ。力を使い過ぎず決めるということは僕にとって新たなことだった。僕はゴールとGKを破壊することばかりを考えていた(常に思い切りシュートを打つことばかりを考えていた)。少なくともその後の練習ではそれを頭の中に入れるようになったよ」

■ザルツブルク時代

完璧主義の性格であるホーランは、ノルウェーを離れても努力を続けた。

ザルツブルクでは、360度回転する近未来的な「サッカーボット」というマシンを使って、認知能力を向上させた。

しかし、クリスティアーノ・ロナウドのように自己ベストを尽くすことに夢中になっていたホーランは、大怪我をするリスクを冒してしまうことに。

ホーランを指導したザルツブルクのジェシー・マーシュ監督は、オーバートレーニングによる怪我を避けるために、強制的にホーランを帰宅させるほどだったと認めている。

■バイオハッキングとは?

ホーランは肉体管理を徹底している。

独『Bild』や伊『Gazetta dello Sport』が報じたところによれば、ホーランは、アメリカのフィットネスメソッドである“バイオハッキング”に従って生活している。

“バイオハッキング”とは、「シリコンバレー式 自分を変える 最強の食事」の著者であるデイブ・アスプリー氏が考案した哲学だ。

自らの環境(食事、睡眠、毎日のルーティーン、トレーニングなど)を意図的に変えることで、身体や精神・頭脳のパフォーマンスを向上させ、生産性を高める方法である。

以下が、ホーランの特別なライフスタイルである。

・栄養

“バイオハッキング”の初歩は、健康的な食事で体を健康に保つことだ。

メニューには、高品質の肉と魚、健康的な脂肪(アボカド、ナッツ、種子)および野菜がタンパク源として含まれる。

砂糖、アルコール、パン、パスタ、揚げ物、シリアルは厳禁。

食事時間も決まっており、断続的に断食も行う。

8時間以内に食事をし、残りの16時間は断食することで体を再生させる。

毎朝レモン汁と海塩が入ったコップ1杯の水を飲む(消化機能を刺激する)。

通常のコーヒーの代わりに、「バターコーヒー」を飲む。これはココナッツミルクや牧草で育てられた牛の乳で作られたバターなどの脂肪が豊富で、血糖値を調整するのを助ける。

しかし、カフェインの摂取は、睡眠の5時間前から避ける。

・休息と運動

フィットネスは、日常生活にしっかりと組み込まれている。

毎朝早起きして、朝の散歩をする。

新鮮な空気の中を定期的に歩くことは、職場で1時間おきに立って移動するのと同じくらい重要だ。

「高強度インターバルトレーニング(「HIIT」)」に依存しており、トレーニングは短時間で集中的に行う。

安らかに眠るために、夕方にはスポーツや運動を避ける必要がある。

だが、毎日の休息時間も同様に重要だ。

一定時間の定期的な睡眠も非常に重要。

常に同じ時間に寝て、1日7~8時間の睡眠をとる。

・ブルーライト遮断

フリータイムでは、TVや携帯電話からのブルーライトを遮断する特別な眼鏡をかけている。

これは睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌にプラスの効果があり、睡眠と再生を改善する。

スマートフォンなどのデジタルデバイスは、就寝時刻の1~2時間前から避け、寝室に持ち込むことを禁止する。

・瞑想(ヨガ)

ルーティーンには、スイッチを切って体に休憩を与えるための数分間の瞑想(ヨガ)も含まれている。

寝る前に、心を解放するために瞑想(ヨガ)を40分間行う。

・冷たいシャワーを浴びる

“バイオハッキング”には、午前中の冷たいシャワーも含まれる。30秒で十分だ。

体への「冷却刺激(コールドショック)」は、脂肪の燃焼を助け、抗炎症効果があると言われている。

・その他

ホーランは好奇心旺盛で、読書をする。

ステータスシンボル(高級住宅や高級車、高級腕時計など)にはほとんど興味を示さない。

■ケルンスポーツ大学のインゴ・フロベーゼ教授による分析

・常にゴールを狙う目

ホーランの青い目を見れば、ディフェンダーは恐怖を覚える。

ホーランの目からは誰もが勝利への抑えがたい意志を感じ取ることができる。

フロベーゼ教授は、「彼の表情からはすべての試合に勝ちたいという気持ちが伝わってくる。全体的に見て、ホーランは誰にも負けない印象的なボディランゲージを持っている」と語っている。

・筋肉質の腕

他のプロ選手が夏休みで足を休めている間、ホーランはノルウェーで木を切っている。

ホーランは子供の頃から家の手伝いをしている。

ホーランはウェイトルームの常連だ。

ザルツブルクで指導したジェシー・マーシュ監督は、「彼はいつも一番長くトレーニング場にいた」と振り返っている。

フロベーゼ教授は、「ホーランは腕の筋肉も非常にはっきりしている」とコメントしている。

・丸太のような太もも

ホーランの太ももは、他のプロサッカー選手よりも筋肉量が多い。

理由は、子供の頃からノルウェーの山でスプリント走をしていたからだ。

今でも、休暇で帰国した時には高地トレーニングを欠かさない。

フロベーゼ教授は、「彼は脚の筋肉が印象的だ。定期的にスプリントトレーニングを行うことで、筋肉量の増加を早く実感することができる。そのため、トップスピードが速いのも納得だよ」と語っている。

・比較的小さい足

ホーランはすべてが巨大なわけではない。

「194cmの身長にしては、足のサイズは43(日本のサイズ表記だと28cm)と比較的小さい」と、フロベーゼ教授は語っている。

だが、シュート技術とジャンプ力は特徴的だ。

フロベーゼ教授は「(レヴィア)ダービーでのホーランのゴールはその典型的な例だ。高くジャンプして、空中で横たわっている」とコメント。

元ノルウェー代表のヤン・オーゲ・フィヨルトフト氏は、「彼のフィニッシュテクニックはセンセーショナルだ。彼が左足でボールを持っていれば、実際にはゴールは決まったようなものだ」と語っている。


参照:Bild、Gazetta dello Sport、AS、Daily Mail


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