2020 第6節 : サガン鳥栖 VS 清水エスパルス

2020シーズン第6節、清水エスパルス戦の簡易レビューです。時系列に感想を述べます。

結果

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(サガン鳥栖公式Webサイトより引用)

時系列感想

0308
森下がサイドからドリブルで奥井とのスピード勝負で突破を図ろうとします。ちょっと押された形になって倒れたもののノーファール。今日の試合の基準で、このくらいの接触と手の使い方ではファールは取らないという村上主審の意思が表れていたのかなと思います。

0335
内田と小屋松が高い位置に出て行ってボールを一旦カットするものの、ボールコントロールが出来ずに再度清水に奪われ、即座に内田が明けたスペースを使われてカウンターでシュートまで。カルリーニョスジュリオが引いて受けようとしたスペースにポジションチェンジで上がっていたエウシーニョのファインプレイ。(清水の組織戦術では約束通り?)鳥栖にとっては、高い位置からのプレッシングのリスクを突かれた格好でした。

0449
清水コーナーキック。鳥栖はゾーンとマンツーマンの併用でした。
ティーラシン(181cm)と金森(171cm)
立田(191cm)と松岡(170cm)
ヘナトアウグスト(185cm)と森下(170cm)
がマッチアップ(マーキング)するのはちょっと鳥栖にとっては苦しいですね。

0529
松岡が最終ラインに下がり、エドゥアルド、原、松岡の最終ラインでビルドアップ。森下は奥井と1対1になるがかわせず。少しずつ、森下と奥井の格付けができていきます。(質的優位でかわせるのか、かわせないのかの判断、そして対峙する際のメンタル)

0815

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清水がプレッシングに出てきて、鳥栖のミスを誘いこもうとします。フィールドプレイヤーは捕まえ切れていますが、高丘と原のところが後藤ひとりになってしまいます。また、小屋松の中央への移動(ジョンスと松岡が下がったスペースを活用した小屋松のポジション取り)に対して清水が対応できていません。そこをしっかりとついた高丘のパスはファインプレイ。しかしながら、左サイドに展開してからの内田のクロスが合わない。この試合のクロスの精度は、得点を1しか上げられなかった要因の一つですね。

1140
ハーフスペースにいる小屋松に向けたエドゥアルドの縦パス。清水の守備として、サイドを取る人間とハーフスペースを取る人間に対して、どこで捕まえるのか意思統一がうまくいってなかったのではないかというシーン。

サイドバックが最終ラインに構えたままで、鳥栖の中盤の選手がフリーとなるケースが多かったです。試合を通じて、前線からのプレッシングと背後を消すポジショニング(カバーシャドウ))が緩くなった時に鳥栖はしっかりとパスを入れており、配置で優位に立てていた試合だったかと思います。入ったばかりの石井がボールキープから内田に流し込むポストプレイを見せますが、内田のクロスは外へ。最後のクロスの精度はやはり大きな課題。

1256
ここも松岡が最終ラインをセンターバック脇のエリアでビルドアップをケア。前半は、この形が多かったです。

1316
エドゥアルドからの長いボールを前線で競り、セカンドボールを拾って右サイドの森下へ。森下はサイドでボールを受けますが、クロスは立田に阻まれます。どうしても、サイドバックの突破とクロスのところが、得点に向けた最後の壁となってしまっています。

しかしながら、エドゥアルドの長いボールを見て、サイドから良いところに走りこんでポジションをとって、ゴール前で勝負できるところまで持っていけている森下の動きは素晴らしいです。あとは突破の所が身につけば。奥井にも勇敢に立ち向かっていますし、メンタルと走力はまったく問題なさそうです。

1550
内田がサイドから中に切り込んで、ポストからの落としを狙って原川へパスを出すもパスがずれて合いませんでした。ちなみに、今節、名古屋も同じようなシーンがあって、吉田豊が金崎にパスを預け、金崎がうまく落としたボールを吉田がゴールにねじ込みました。崩しのところはできていますが、最後はパスの精度。ここさえ合えばというところまでは持っていけていますのであと少し。

1723
清水のやりたいことが表現できたシーン。プレッシングにでてきた鳥栖の中盤の背後のスペースを使って、ワンタッチで前進しています。その後の展開も、中央に絞った奥井(偽サイドバック的なポジション)をとっていた奥井を経由してシュートまでつなげました。

1805
清水先制点。
鳥栖のコーナーキックのゾーン守備の外にいて、かつ、マンマークの対象となっていないヴァウドの折り返しを立田につなげられてゴールを許します。ゴール前において3本連続でヘディングに競り負けたらさすがにゴールを奪われますよね。鳥栖のゾーンとマークを併用している守備の弊害をうまく使われ、立田と松岡のマンマークミスマッチもつかれた格好でした。

2152
カルリーニョスジュニオが、ボール保持者へのプレッシャーにもパスコースの制約にもなっていないです。エドゥアルドから内田へのパスルートができ、エウシーニョが出てきたスペースを小屋松や林・石井が狙う仕組みが取れています。ここもスペースで林が受けますが、ボールが足元につかずにゴールキックに。

2418
ここもエドゥアルドから内田へ。エウシーニョが上がった背後のスペースを小屋松が利用しています。この時間帯で、清水の守備を利用した前進の形は完全に確立した模様ですね。小屋松のクロスを石井がヒールで狙いますが惜しくもゴール外。小屋松のパスが少しずれましたが、それを利用した形で石井のセンスが垣間見えるシーンでした。

2617
ボールを左右に回して、内田がカルリーニョスジュニオとエウシーニョの間の位置で受けられるタイミングを作り出して、エドゥアルドから展開。完全にビルドアップからの前進の再現性が出来ています。ただし、クロスの精度が悪いのも同じく再現!そこは再現しなくても良かったのになという所です(笑)

3110
清水はビルドアップで中村を落として人数を確保しつつ出口を探す形は序盤から変わらず。ヘナトアウグストと後藤が鳥栖の2列目の背後のスペースに出入りしているので、狙い目をここに置いているのだろうなと見える動き。ただ、石井、松岡、小屋松、ジョンスがうまくスペースを狭めているのでなかなかパスを出せません。この守備のスクエアは非常に良かったです。直接のパスが無理なのでヘナトアウグストを経由して後藤に渡すルートを探りますが、エドゥアルドが列を上げてケア。清水のビルドアップで狙いたいエリアに対する鳥栖の守備が機能しているのを感じさせるシーンでした。

3255
ここでも松岡は原の脇のエリアでサポート。ビルドアップの形ですが、前半はこの形で最終ラインを構築していました。ここで原は松岡を飛ばして長いボールを森下へ出しますがつながらず。森下のハイボールへの競り合いの強度を考えると、この試合でいくつかあったこの展開はあまり有効ではありませんでした。

3358

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得点シーンです。この試合のビルドアップ王道ルートであるエドゥアルドから内田へ。再三攻撃を受けていたので、これで清水の守備全体が鳥栖の左サイドへスライドします。

ここで清水のプレッシャーが強くなったので、小屋松が逆サイドの原へ展開。この段階で、清水の守備の状態として後藤のスライドが遅れて、原がフリーで前を向き、パスコースもスペースを空けてしまっています。さらに、松岡が原の脇の位置(前半のビルドアップの肝)、森下が幅を取っているため、それぞれ西澤と奥井がケアの準備のために外側にすこし気が向いています。そこでハーススペースにポジション取りしていた原川へのルートが開けます。

もう一つのポイントとしては、原川からボールを受けた石井が、立田、アウグストにゴール前正面で勝負を挑み、ボールをキープしたまま清水のディフェンス陣を引き寄せます。これで原川がフリーとなって正面でシュートを狙う事ができました。この石井のプレイに関しては、豊田、レンゾロペス、林というフォワード陣とは異なるプレイ選択であり、彼の持ち合わせたスキルですよね。今シーズンの鳥栖の攻撃の構築においては、石井のプレイスタイルは向いているだろうなという感じでしたが、それをアシストという形で表現してくれました。

4425
鳥栖がボールを奪って前に出ていこうとしたシーン(ポジティブトランジション)で鳥栖のボール保持を許さずに、清水が激しくプレッシングで松岡を包囲。松岡のパスがヘナトアウグストへ行ってしまい大ピンチ。絶体絶命のピンチをエドゥアルドがゴール前でブロック。Twitter上でいくつか神様仏様エドゥアルド様という書き込みを見ました(笑)

4510
前半と同じく、パスカットにでてきた内田の背後のスペースをつかれて早速攻撃を受けました。前からボールを奪いにいって、取れなかった時の内田の背後は今後の試合でも狙われそうですね。ボールを触ってもコントロール配下におけないプレスが何回かあるので、その状況で前に出る必要があるのかというのは気になる所ですね。

4710
アウグストが鳥栖のプレッシングの背後のスペースでボールを受ける動きを見せます。46分台の攻撃も同じような形があり、清水もやりたいことがある程度できているのかなというのは感じました。

5130
後半になって、鳥栖がビルドアップのポジションにやや変化を入れていました。センターバック脇に下りていた松岡がひとつ高い位置でやや中央寄りに。原を外に広げて森下との距離を近くしようとしたのかもしれません。左サイドは、幅をとっていた内田が、ややポジションを内寄りに変えて小屋松がサイドの位置へ入るような入れ替わりもありました。清水の前線のスクリーニングがあまり機能していないので、清水のボランチ周りでの崩しや、中央でボール保持してから外へのルートを使った攻撃を狙おうとしていたのかなと思いました。

5145
鳥栖がボール保持していましたが、一旦、高丘にバックパス。ここで清水の前線が出てきたので、中央にポジションを取っていた松岡へ。松岡がばらついていた清水の守備陣の間を縫ってドリブルで前進。原川のシュート⇒森下のクロス⇒コーナーキックへと攻撃を繋げます。松岡は、高丘にバックパスをする意図と意味を理解して、しっかりとスペースを利用したナイスプレイでした。

5415
前半はエドゥアルドから内田のルートだったのですが、このシーンは前述のようにあエドゥアルドから小屋松のルートへ。松岡が高い位置(中央)で経由地点となり、森下に展開しますが、奥井を引き付けてから原川へ戻してクロス。前半の課題であった、マッチアップの格付け問題を解消するような配置とパス回しでした。

5650
内田が鋭い出足でエドゥアルドのところまで出ていきパスカット。逆サイドでは奥井が高い位置を取っていたので帰陣に間に合わず、そのスペースをついてフリーとなっていた原川へこの日一番のナイスクロス。原川のシュートは惜しくも左へ。積極的な前進でプレッシングは、取れなかった場合はリスクとなりますが、いざボールを奪えてコントロール下においた場合はビッグチャンスになりますね。こういう所で決めきれると勝ち点3が容易に奪えるようになってくるのでしょうね。

ここから、選手がいろいろと変わってくるので、戦い方は準備していたものというよりは、選手個々の能力を生かしたものと変わってきます。機会があれば、またこの続きを。

■ Appendix < ざっくり用語解説 >
・ ビルドアップ
ゴール前にボールを運ぶための仕組みづくり(パス交換の仕組みづくり)

・ トランジション
攻守の切り替え

・ ポジトラ
ポジティブトランジションの略。守から攻への切り替え。

・ ネガトラ
ネガティブトランジションの略。攻から守への切り替え。

・ ハーフスペース
4バックだとセンターバックとサイドバックの間。3バック(5バック)だと両ストッパーの位置

・ デュエル
相手との1対1のマッチアップ

・ ディフェンシブサード
フィールドを3分割したときの自陣ゴール側

・ ミドルサード
フィールドを3分割したときの中央

・ アタッキングサード
フィールドを3分割したときの相手ゴール側

・ リトリート
自陣に引いている状態、もしくは自陣に下がる動き

・ レイオフ
ポストプレイからの受け手が前を向けられる落としのパス

・ オーガナイズ
組織化されていること。チームとして秩序が保たれている事

・ 偽サイドバック
サイドバックがポジションを変えてセントラルハーフのような役割を演じる事

・ チャンネル
センターバックとサイドバックの間のスペースの事

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