2019 第9節 : サガン鳥栖 VS 湘南ベルマーレ

2019シーズン 第9節、湘南ベルマーレ戦のレビューです。

鳥栖のスタメンは、ルヴァンカップ仙台戦と同じメンバーでした。このメンバーでの戦い方に一定の手ごたえを感じたのでしょう。ところが、開始早々の藤田の怪我によって選手交代を余儀なくされてしまい、交代出場した小林が右サイドのウイングバックのポジションにつき、原が右ストッパーの位置に入りました。最終的には、システムを湘南に合わせる形で攻撃時3-4-2-1、守備時5-4-1の形でこの試合に臨みました。

湘南のスタメンは、前節の川崎戦から変更が入りました。杉岡をストッパーの位置に下げて左ウイングバックに鈴木冬を起用。前線は梅崎に代わって鈴木国が入り、川崎戦の前半早々にケガで退いた武富の代わりに大橋が入りました。

■システム

今節の鳥栖は、湘南に合わせる形のセットアップとなりました。湘南が攻撃のフェーズでは、トップ、セカンドトップ、ウイングバックの5枚をそろえてくるので、4バックでサイドハーフ(もしくはボランチ)を下して対応するよりは、最初から5枚を並べた方が明確に相手のマークにつきやすいとの判断でしょう。

湘南はアグレッシブに前線に人数をかけてくるので、人を逃さず、裏を取られないためにも、最終ラインに頭数をそろえておくのは妥当な対応策のひとつです。試合開始当初、湘南のロングボールに対して秀人が最終ラインに下がる動きを見せたので、4枚スタートだったとしても、押し込まれたら5枚そろえる手はずであったかと思われます。

アンヨンウとクエンカはやや下がり目のポジショニングとなりました。これによって、前線からのプレッシングはチョドンゴンが対応することとなり、湘南は最終ラインに3人を置いておく必要がないために、ストッパーが積極的に攻撃に参画することになります。

■パスネットワーク図


この試合の戦術であるカウンター攻撃を表すかのように、最終ライン間でのパス交換がほとんどありません。詳しくは後述に。

■湘南の狙い、鳥栖の狙い
前半早々に藤田がケガでピッチの外で治療を受けることとなり、藤田が外にいるときの鳥栖のシステムは4-4-1で、チョドンゴンをトップに残して2ラインで湘南の攻撃に備えました。

開始早々、思わぬ形で数的優位の状況を得た湘南が攻め立てます。
湘南の狙いは早めに前線にボールを送り込み、山崎(もしくはセカンドトップ)のキープを利用しての波状攻撃です。山崎に求めている役割は重要で、彼がセンターバックを引き付けてキープすることによって、セカンドトップやウイングバックが前を向いてアタックする機会を作ります。

4分には早めに裏に送り込んだことによって得られたセットプレイから大橋が決定的なシュートを放ちますがバーの上でした。

その後の5分のプレーでも、鳥栖のゴールキックの跳ね返しを山崎がキープする事によって、鳥栖のラインを押し下げることに成功。いったん最終ラインに戻しますが、プレッシャーのかからない状態からボールを持ちだした山根がクエンカをはがして山崎へ縦パス。そのまま上がって落としのボールからミドルシュートを放ちました。湘南がこの試合で見せようとした攻撃の形を5分の間でいくつか実現しました。

今のサガン鳥栖に足りないのは、このセンターバックがセントラルハーフのプレッシングをはがして縦パスを送るプレイ、そしてフォワードがボールを受けて飛び込んでくる前向きのプレイヤーにボールを渡すプレイでして、プレッシングを回避してシュートに結び付ける攻撃の術を湘南が教えてくれるかのような一連の攻撃でした。

さて、6分頃、サガン鳥栖も対抗して自分たちの形を見せ始めます。高い位置をとっていた松田のトラップミスを見逃さずに原川がカット。素早くアンヨンウにボールを送り、ドリブルによる前進から最後は左サイドを上がってきたクエンカにやさしいパスを送ってからのシュート。この決定的なチャンスを決めていれば、サガン鳥栖がこの試合をものにできている可能性が高くなるシュートでしたが、残念ながら決めきることができませんでした。サガン鳥栖も、開始早々に、引いた守備からカウンターで両サイドの裏のスペースを狙うという形がしっかりと表現できていました。

このプレーの後、アンヨンウのファールでようやくプレーが止まり、小林が藤田に代わってピッチにはいります。小林が入ったことによって、鳥栖のポジショニングが明確になり、この試合のサガン鳥栖の狙いがはっきりと見えるようになりました。

一つ目の狙いは、相手をおびき出すブロック守備からのカウンター攻撃。
最終ラインを5枚ならべ、中盤はアンヨンウとクエンカをアウトサイドに落として中央を原川と義希でフィルターをかけます。トップがチョドンゴン一人になるので、湘南は最終ラインに3人を残す必要がなく、特に山根が積極的にポジションを上げて攻撃に参画してきました。

鳥栖としては、クエンカ、アンヨンウを杉岡、山根にぶつけて前から積極的に奪いに行くという案も考えられたのですが、あえて全体を低い位置に置くことで湘南が前に出てくるようにし向け、そしてボールを奪うと同時に湘南の両サイドの裏のスペースへ向けてクエンカとアンヨンウが飛び出していく形を作りました。彼らがそのままゴール前まで突破、もしくは起点を作ってボールキープの間に小林、三丸のフォローを待ち、早いタイミングでのクロスを中央に待ち構えるチョドンゴンに送る攻撃を繰り出しました。

二つ目の狙いは、長いボールをチョドンゴンに当ててからのセカンドボール奪取からの展開。
正確には、10分頃までは、最終ラインも大久保を利用してボールをつなごうと試みますが、鳥栖の最終ラインの3人に対して、湘南がトップ+セカンドトップの3人でプレッシングをかけるため、同数プレッシングを回避する手立てがない状態で苦し紛れのロングボールを蹴らされる場面が多く訪れました。三丸が窮屈になって長いボールを蹴ろうとしても大橋にひっかけられてしまうシーンはその典型的な例です。

窮屈になってしまうくらいならば、最初から蹴っ飛ばそうというのは自然の流れであって、チョドンゴンに向かって蹴った際に、例え競り負けてもセカンドボールを拾える位置に必ず原川か義希を配置し、奪ってからすぐにサイドハーフに展開というポジショニングを作ることができました。チョドンゴンと原川・義希がしっかりと中央で縦の関係を作れたので、例えチョドンゴンが競り負けたとしても、セカンドボールを狙える形作りができていました。

30分には、フレイレからのロングボールを祐治が弾き返したところ、原川が後ろ向きの状態ながらもダイレクトで右サイドのスペースにはいってくるアンヨンウにボールを送り込みました。そこから小林を経由して、再びアンヨンウに送り込み、チョドンゴンとのワンツーを仕掛けますが惜しくもミス。ただ、原川のアンヨンウのポジショニングがわかっていることを見越してのパスは非常に良かったです。これこそ、戦術的に、配置的に意思疎通ができている事の現れです。

この試合、右サイドの原川、アンヨンウ、小林はグループによる崩しを幾度となく発揮できていました。小林のボールの持ち方とターンの仕方だけで相手をはがして前にボールを送り込むプレーは、是非とも原には参考にしてほしいプレーです。

36分にも鳥栖の狙い通りの形ができて、湘南のロングボールに対して祐治が跳ね返し、チョドンゴンが競って、そのこぼれ球を拾った義希がダイレクトで左サイドの裏に抜けるクエンカに送り出しました。このシーンはクエンカが相手をかわし切ることができずにシュートチャンスにはなりませんでしたが、少なくとも自分たちがどこに選手を配置し、そしてタイミングよく奪えたときにはどこを経由して攻撃をしかけるのかという共通意識が成り立っていました。

あとはクエンカとヨンウの個の質だけで勝負とい形にとどまらずに、彼らが抜け出したあとのサポートと押し上げですね。湘南は、この辺りが洗練されていて、前線でボールを保持することができたならば、アウトサイド、ハーフスペース、しっかりとバランスよく全体が押しあがってゴール前に人数をかけてきます。

ただし、上記の狙いにもウィークポイントはありまして、前線のプレッシングがチョドンゴン一人となるため最終ラインへのプレッシャーがどうしても甘くなるシーンが訪れます。16分にはプレッシングがかからない状態でフリーでボールを持ち出したフレイレから、セカンドトップの大橋に縦パスが入り、大橋がダイレクトで落として受け取った山崎がシュートというシーンを作られてしまいました。

このように、前線に当ててから落としたボールを前を向いている選手がシュートというのはこの試合での湘南の一つの狙いでありました。ただ、湘南には前半10本のシュートを打たれていますが、そのうちの7本はペナルティエリア外からのシュートです。最終ラインを引いているのでミドルシュートの形は作られやすい状況ではありましたが、可能性としては低い位置からのシュートでありまして、大久保の好セーブもありつつ前半を無失点に抑えることができています。

最終的には「割り切り」というのが大事であり、自分たちの狙いどころを作ろうとすると、当然のことながら自分たちの守りが薄くなる部分がでてきます。その部分は与えても仕方がないと割り切って、可能な限りシュートの精度を落とすような対応をすることが大事です。そういう意味では、前半の鳥栖の全体を引き気味で湘南が攻撃的に出てくるのを待ち構えてカウンター狙いというのは、非常にいまのサガン鳥栖の実力としては理にかなっていたと思います。チーム全体の意識が同一されていて、(たとえミスになったとしても)ボールを奪ってからの走りだしとパス出しに迷いがない状態というのは、自然と良い状況を生み出すことができます。

危ないのは、全体で統一した狙いを実現できずに、準備ができていないのに中途半端な事をやろうとしたタイミングでありまして、26分にはボールを奪ってチョドンゴンに当てたのですが、秀人がそのままこの試合の狙いであった左サイドの裏のスペースをつく動きではなく、センターバックのポジションだったからというのもあるでしょうが、オーバーラップを自重していったんボールを保持しようとする動きを見せます。ボールが循環しないと運動量豊富な湘南がプレッシングにくるので、回避するために逆サイドに大きな展開を試みましたが、危うく鈴木に引っ掛けられて決定的なピンチを迎えるところでした。

フリーキックのチャンスでも、センターバックを上げているのにつなごうとして、単純に最終ラインに人数がいないまま、プレッシングを受けて窮屈になってボールロスト。

前半終了間際も、ボールを保持する仕組みが整っていない状況で最終ラインでのボール回しを行ってしまい、危うくひっかけられるところでした。

選手の配置に応じた適切なプレーの選択をしないと、簡単に数的同数を作れる湘南のアグレッシブな守備では、簡単にボール保持を許してくれません。

■ 後半

後半になると、湘南が鳥栖への対策を見せます。裏を突かれる要因となっていたセンターバックの攻撃参加回数を少し抑え、裏のスペースを作らないように慎重な動きを見せます。アンヨンウに対しては、ストッパーの杉岡がヨンウの狙うスペースを消すようにややサイドにポジションをとるようになりました。また、ミドルサード付近では右サイドの岡本を少し引かせてクエンカを見るようにし、押し込んでいる状況ではネガトラ対策として、斎藤がクエンカの動きに注意を払うようになり、鳥栖がボールを奪ってからクエンカに渡ったボールをいち早くチェックできる形づくりを行います。これによって、前半は機能していた鳥栖のカウンター攻撃がやや鈍ることになってしまいました。このあたりの湘南の対応は非常に素晴らしいなと思います。

55分、鳥栖は変化を加えるためにチョドンゴンに代えてフェルナンドトーレスを投入します。ところが、トーレス投入した直後に、湘南がこの試合何度も繰り返して送り込んでいたロングボールを使った攻撃で先制します。大久保からフェルナンドトーレスに送られたロングボールのこぼれ球を杉岡が拾い、すぐさま長いボールを前線の山崎に送り込みます。山崎がそのボールを収めることに成功。鳥栖も必死でクリアしようとしますが、ボールが義希の足にひっかかってリフレクションする中で、左サイドから湘南が強烈なシュート。このシュートを大久保がキャッチングに行ったのですがファンブルしてしまい、武富の折り返しから大橋に詰められてしまいました。

先制点を奪われた鳥栖は攻撃のスイッチを入れようとしますが、なかなか攻撃のスイッチがはいりません。得点を奪うために、両ウイングバックが高い位置をとりますが、高い位置を取ることで逆に最終ラインの3人からのボールの出しどころがなくなってしまい、最終的にはストッパーが苦しい状態で蹴っ飛ばすしかない状況を生み出してしまいました。トーレス投入の影響か、先に失点してしまった影響か、前線がボールを奪いたいばかりに前がかりになってしまい、連動していない状況下でプレッシングをしかけるシーンも増え、湘南に簡単にいなされてきわどい攻撃にさらされる回数も多くなってきました。

65分は典型的なシーンであり、最終ラインでボールをつなごうとするものの、湘南の同数プレッシングにはまってしまい、原にボールが回ってきましたが、小林が高い位置をとっていたためにボールの送りどころがなく、結果的にロングボールを蹴らざるをえなくなりました。ロングボールを難なく湘南が回収したのですが、トーレス、クエンカ、ヨンウ、義希が最終ラインが押しあがらない状態でそのままペナルティエリア付近まで向かってプレッシングにいってしまい、義希が空けたスペースを湘南のボランチが使い、出て行った義希のスペースを埋めるために秀人も出て行ったのですが、そのスペースを狙って岡本が抜け出したシーンが下の図です。クロスから山﨑のシュートを受けたのですが、前から奪いたいばかりに出ていてしまって逆にピンチを迎えるという、チームとしては連動性の低い守備になってしまいました。

後半はフェルナンドトーレスのポジショニングが固定されていないため、蹴っ飛ばした先がクエンカであったりヨンウであったりと決して空中戦に強い方ではないメンバーが競ることとなり、セカンドボールを湘南が拾う回数が徐々に増えてきます。それにもまして、風下や疲れの影響なのか、大久保が蹴ったボールが前に出ていこうとする鳥栖の前線まで届かないケースが多発し、湘南がフリーで前線に跳ね返すケースも増えてきました。また、前半は、チョドンゴンのロングボールは手前で待つ義希や原川に落とす狙いがあったのですが、トーレスは前方へフリックするようなヘディングが増え、せっかくデュエルに勝っても鳥栖の選手が誰もいないところに送り込んでしまい、セカンドボール回収の確率もなかなか上がってきませんでした。

チョドンゴンの交代によってロングボールに対するスキーマがあやふやとなったことで、65分を過ぎたころから、長いボールを活用した攻撃ではなく最終ラインからのビルドアップで打開しようと、原川が最終ラインにひいて湘南の同数プレッシングの回避を狙います。この原川の動きは非常に良くて、3-3でプレッシングを仕掛ける湘南に対して、原川が下りることで4-3の形を作り、原を右サイドから前進させるような仕組みを作ります。

67分には、原川のビルドアップで原が前を向いてボールを受けてクエンカにつなぐかたちを作り、湘南のプレッシング回避に成功します。ところが、そこから攻撃のスピードを上げるべくトーレスに当てようとしますがこれをトーレスが納めきれず。ビルドアップの出口を作ってもそこから攻撃のスピードが上がらないのは、サガン鳥栖としては非常にもったいない攻撃でした。

ところで、トーレス自身のコンディションは果たしてどうなのでしょうか。足元にボールが収まらないシーンもありましたし、トップパフォーマンスにはまだ戻りきれてないのかなとも思います。

トーレスと周りの意思疎通のところなのか、チームとして誰がどのようにゴール前でポジションをとるのか決まっていないのか、本来はビッグチャンスだったのに逸してしまったというシーンもありました。65分に、クエンカのボールキープから裏へ抜け出した三丸が、幾度となくクリアされていたフレイレの頭を超える素晴らしいクロスボールを送り込んだシーンです。(図4)

この素晴らしいクロスに対して、本来は飛び込んできてほしいはずのトーレスがファーサイドに逃げる動きでそのボールに対してシュートに行くことができず。義希もニアサイドにはいたのですが、クロスに対する飛び込みができずチャンスを逃してしまいました。クロスが味方に合わないシーンが続きましたが、決して三丸だけの責任ではありません。

サガン鳥栖は71分にイバルボを投入して、システムを4-3-3に変更します。このシステム変更によって、鳥栖はビルドアップでの崩しへと戦術の切り替えが行われました。74分には、クエンカの左サイドでのキープから右サイドへ展開。原川にボールが渡ったところで、秀人が裏に抜けようとした動きに湘南のディフェンスがつられたのを見逃さず、トーレスへの縦パスが入ります。ここで、イバルボが中央による動きを見せてディフェンスを引き連れて、三丸がフリーとなりました。三丸のシュートは惜しくも枠の外。ここでクロスの選択なのか、シュートの選択なのか、それはチームで話し合ってもらいましょう。前のシーンでクロスに誰も飛びこんでこなかったので、それならば自分でシュートを打とうと思った気持ちも理解はできます。

湘南も、リードしている状況ではありますが、鳥栖の中盤が薄くなったのを狙い目として攻撃の手を緩めません。87分には、山根の攻撃参加によって三丸を引き付けて裏のスペースを作り出すことに成功し、裏のスペースに抜け出した武富のファーサイドへのクロスから、これまた山根がフリーとなってからのシュートを放ちます。このシュートは原がクリアしたのですが、リードしているこの時間帯でもストッパーが攻撃参加してしかも決定的チャンスを作りだす動きは、チームとしての完成度をまざまざと見せつけられる格好となりました。

そして、なかなか攻撃の手筈が整わないサガン鳥栖をしり目に、ついに、88分には、大久保のロングキックを、後半に何度も発生してしまった鳥栖の選手が誰も競らない状況でフレイレに弾かれ、武富のキープから梅崎のゴールを食らってしまって試合が終わってしまいました。

■ビハインド時の選択肢
サガン鳥栖は、しっかりとした守備からのカウンターという作戦であったため、先に点を取られると戦術の変更をしなければなりませんでした。これまで何度も見てきたように、失点を喫した後の戦術変更が今シーズンは特にうまくいきません。今のサガン鳥栖は、試合中に失点してしまうと、改善策を打ちますが、本当は問題ではなかったところにも手を加えてしまいます。そのことによって新たな問題を引き起こしています。

攻撃に関する問題解決策は、前線の人数を増やすことだけではありません。相手をうまく押し込める形を作って、最終的にゴール前で人数をかける仕組みが必要なのです。そのためには、中盤の運動量を増やしてボールを循環させる、最終ラインに精度の高いボールを蹴ることのできるメンバーを置く、なども改善策の一つなのですが、前線を増やすことがあたかも最善の解決策であるかのような選手交代がよく見受けられます。それは、開幕の名古屋戦で藤田を豊田に代えたことからずっと続いています。これがカレーラス監督の思想なのでしょう。

この改善策であると、守備の局面での人数不足に陥りやすく、博打性が高いため追加点を奪われてしまうリスクがあります。実際問題として、名古屋戦、仙台戦、FC東京戦、湘南戦と攻撃に人数を加えようとして失点を重ねてしまいました。

昨年度は、失点を喫しても良くも悪くも変わらないコンセプトでのサッカーであったため、続けての失点を防ぐことができ、最終版の残留争いで何とか得失点差で優位に立つことができました。今シーズンは、得失点差というアドバンテージはおそらく得られないでしょう。

もちろん、勝ち点を重ねれば問題のないことなのですが、現状を考えると、この得失点差のアドバンテージを得られない事が最後に響かなければいいなと思っています。

この試合での前半の戦いは、決定的なチャンスは少なかったものの、チャンスメイクに向けた選手全員のベクトルは一定の方向を向いていました。ポゼションは取れずとも、しっかりと引いてからのカウンターという、ある意味割り切った戦いで、耐えながらも数少ないチャンスをつかもうとする動きが見えました。

ところが、後半にリードされてからは、選手投入、システム変更と相まって、選手全員がどういった攻撃を仕掛けたいのかの共通理解が見えないまま試合が進んでしまいました。最終的には前線の動き出しがなくなってしまい、オフサイドが頻発し、単調な攻撃に終始してしまいました。

今一度、自分たちの立ち位置を見つめなおし、組織としてやれることをチーム内で見出すことが必要です。

そして、リードされてもまずは焦らない事、気持ちを落とさずにその試合で準備してきたことをしっかりと全うすること、それがいまのサガン鳥栖には必要な事だと思います。

準備できていないこと(準備が足りない事)をその場の即興でやって得点をとれるほど、甘くはありません。じっと我慢して戦況を見つめながら、相手の守備の綻びを見つけながら、最後の数分に最適な手を打つこともまた一つのやり方です。

湘南は、鳥栖がどのような対応をしてきても、素早くベンチから自チームの選手名と鳥栖の選手の背番号を示すサインボードが掲示されました。あらゆるシチュエーションに対する想定・準備がされていることがよくわかります。ベンチ、選手が一体となって戦っていますよね。

大分戦はある意味分水嶺の戦いになりそうですね。この試合で負けるようなことがあると、さすがに、何かの動きがあるかもしれません。

■応援について
結果がでていると、本当は潜んでいるかもしれない問題点が見えづらくなります。
結果がでないと、本当は問題点ではない事までもが、あたかも問題であるかのように見えてしまいます。
いまは、結果が出ていないので、サガン鳥栖の試合の何もかもがうまくいっていないように見えてしまいがちです。

もがき苦しんでいる選手たちの後押しをするのは、我々サポーターしかいません。

今年も昨年と同様に苦しいシーズンとなってしまいましたが、何とか選手たちの力になれるように、応援していきましょう。

応援をやめたら、間違いなく選手たちのモチベーションが半減します。
プロスポーツという職業ですが、支えてくれる人、励ましてくれる人、喜んでくれる人がいるからこそ、激しく厳しい戦いの場に気持ちを込めて臨むことができます。

何のために応援するのか、誰のために応援するのか、それぞれみなさんの心の中にあるものをもう一度奮い立たせて、みんなでサガン鳥栖を楽しみましょう。

■ Appendix < ざっくり用語解説 >
・ ビルドアップ
ゴール前にボールを運ぶための仕組みづくり(パス交換の仕組みづくり)

・ トランジション
攻守の切り替え

・ ポジトラ
ポジティブトランジションの略。守から攻への切り替え。

・ ネガトラ
ネガティブトランジションの略。攻から守への切り替え。

・ ハーフスペース
4バックだとセンターバックとサイドバックの間。3バック(5バック)だと両ストッパーの位置

・ デュエル
相手との1対1のマッチアップ

・ ディフェンシブサード
フィールドを3分割したときの自陣ゴール側

・ ミドルサード
フィールドを3分割したときの中央

・ アタッキングサード
フィールドを3分割したときの相手ゴール側

・ リトリート
自陣に引いている状態、もしくは自陣に下がる動き

・ レイオフ
ポストプレイからの受け手が前を向けられる落としのパス

・ オーガナイズ
組織化されていること。チームとして秩序が保たれている事

・ 偽サイドバック
サイドバックがポジションを変えてセントラルハーフのような役割を演じる事


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