2019 第14節 : サガン鳥栖 VS セレッソ大阪

2019シーズン第14節、セレッソ大阪戦のレビューです。

■ システムとスタメン

鳥栖は連勝中のシステムを継続して4-4-2のセットアップで試合に臨みました。トゥーロン国際に出場する松岡の代わりは安在が務めます。リザーブが少し様変わりしまして、コンディション不良のトーレスがベンチ外となり、代わりに樋口、島屋がベンチにスタンバイという状況でした。トーレスはなかなか調子が上がってきませんね。ぜひとも一刻も早く復調してもらって、彼のゴールパフォーマンスを見たいですね。鳥栖に来てから、ゴールは決めるものの弓を射るパフォーマンスはG大阪戦のゴールでしか見ていないので、もっともっとゴールセレブレーションを見たいところです。

■ 鳥栖の守備組織とセレッソの狙い

試合開始と同時に激しく中盤でつぶしあう両チーム。鳥栖もセレッソも激しさの中でセットプレイのチャンスを得て、鳥栖は豊田、セレッソはヨニッチと、互いにシュートまで結びつけるものの、得点には至らず。アグレッシブな中盤での競り合いから始まった激しい応酬は、豊田の激しいスライディングの後に提示されたイエローカードによりいったん終止符が打たれ、ボール保持の展開へと変わっていきます。豊田へのカードは、開始直後ということで今村さんも判断が難しかったかもしれませんが、間髪入れずに提示することにより、両チームの中の判定に対する基準ができあがりました。

序盤、セレッソのボール保持は、ボランチの藤田をセンターバック間に落とすことによって、ボールの循環ルートを確保します。そこからのボールの運びとしては、サイドハーフが中央に入ってくるポジショニング(ちょうど、藤田、デサバト、清武(もしくは水沼)が縦関係に並ぶような形)をとり、デサバトがうまくアングルを作って中央を出口とするルートを探りながら攻撃の構築を試みていました(Aプラン)

中央でのボール保持で鳥栖の守備が密集してきて動きがとれなくなったらサイドへ展開という形も攻撃のアイデアの中に保有しており、その抜け道を作るため、松田と丸橋はボールサイドに加担するのではなく、サイドで幅をとる役目を遂行していました。(Bプラン)

このBプランもかなりの回数発動しておりまして、8分、18分、24分など、丸橋への展開もセレッソの攻撃の一つの軸となっており、これによって安在のポジショニングの取り方が少し難しくなったことは事実です。

鳥栖は、いつものように、金崎と豊田がプレッシングに入り、2人で最終ラインに対するプレッシングをしかけます。今回特徴的だったのは、プレッシングをしかけて前からマーキングを当て込む際に、センターバックに対してサイドハーフを積極的にプレッシングに利用していた事です。

サイドハーフを使うことによって、福田と原川が列を動くことなく中盤で構えることができるので、ビルドアップで中央を使いたいセレッソに対して中央でのパスコースを狭めるという効果を発揮していました。また、豊田と金崎も双方が前に出してしまうのではなく、どちらかがやや下がってデサバトを見るという縦の関係を築くことができていました。

そういった、互いの攻守のパターンが少しずつ明確になってきた中、早速、セレッソの狙いが見えたのは、図3のシーンです。

最終ラインを3人でボール保持を試みるセレッソに対して、鳥栖はサイドハーフを上げて3枚をぶつける形で守備組織を構築しますが、デサバトがうまく角度を作って鳥栖のプレッシャーを潜り抜けるボールを引き出し、藤田からのパスを受け取ります。中央を割られたくない鳥栖は福田がプレッシングに出てきますが、セレッソとしてはボランチがでてくるエリアこそ狙っていたスペースであり、福田が出てきたタイミングで清武とメンデスがビルドアップの出口となるべく、そのスペースに入ってきます。

この5分50秒ではデサバトから清武にボールが渡るものの、原川のプレッシャーによりいったん清武が撤退して最終ラインにボールを戻しますが、実は、すぐ後の5分57秒のシーンでも、ヨニッチ⇒デサバト⇒清武とパスを回し、同じパターンの攻撃を試みます。まさに瞬時の再現性であり、セレッソが福田・原川が前に出てきた事によって生まれるスペースを狙っていたことがわかるシーンです。

セレッソの攻撃の狙いはほぼ、このシーンに集約されていました。鳥栖のドイスボランチが積極的にでてくるように仕向け、そして空いたスペースに対して清武が入り込んでラストパスもしくはラストパスの一つ前のプロセスを組み立てるという攻撃の設計図です。まさに、これこそ『デザインパターン』ですね。(←職業柄、この単語を使いたい(笑))

この、中央を抜けるようなビルドアップは、セレッソにとっても諸刃の剣となる部分はありまして、中央でパス交換するということは、ミスが発生した際に鳥栖に中央の高い位置でボールを奪われるというリスクもあります。鳥栖にとっては、全体が前からボールを奪いに行っているため、カウンター攻撃に入った時(ポジティブトランジション時)に、攻撃に使える人数が前線に残っているという状況を作れるため、ある意味、高い位置からのプレッシャーによって作られるカウンター設計でもありました。

実際に、26分には中央でボールをカットしてカウンター攻撃(結果的に藤田のファールによってイエローカードを与える)につなげたり、36分には金崎が中央でカットしてそのまま福田がゴール前まで迫ることができました。鳥栖としては、そこでシュートまでしっかりと持っていってゴールを脅かすことができなかったのが残念ですが、良い位置からの攻撃の機会は少なからず得ることができていました。

■ 質について
上記の5分57秒のシーンには続きがありまして、5分59秒にはデサバトが清武を狙ったパスがミスとなって秀人がカットします。このカットしたボールをカウンターにつなげるべく、前線に残っている金崎に送り込みますが、秀人のパスのボールがバウンドしてしまった事もありますが、金崎がうまくコントロールできずに攻撃につながらず。さらに、ルーズボールを福田が拾って豊田に送ろうとしますが、そのボールも藤田にカットされてしまいました。つながれば決定的なチャンスにつながりそうなカウンターの機会であったものの、些細なミスが発生してしまったばかりに、シュートチャンスができないどころか、逆にセレッソのカウンターを受ける事になってしまいました。

67分にも、金崎が左サイドを独走して、中央でよいポジションに構えていた小野に対するパスを出しましたが、直接ゴールラインを割ってしまう結果に。後半の時間帯で30mほどドリブルしてからのパスだったので、苦しい状況ではあったでしょうが、このパスも小野の足元に収まっていれば1点ものというシーンでした。クロスの質も同様でありまして、鳥栖は何度も良い形でクロスを上げるシーンがありましたが、結果的に、良い態勢でシュートを打てるようなクロスは1本も上げることができず。72分のカウンターからの三丸のクロスは、シュートにつなげたかったですね。そのほかにも、質によってチャンスが潰えてしまったシーンは、数え上げれば枚挙に暇はありません。

ミョンヒ監督が試合後のインタビューで語っていた、「質」というのは、チャンスをつくるきっかけはできているという言葉の裏返しかもしれません。チーム全体としての理解度は高まってきているので、あとは、ボールを受けた選手個々が、動けるスペースを確保している選手を正しく選択し、受け手がコントロールしやすいボールを送り込むことによって、得点できるチャンスは目の前に転がっていると。清武が適切な判断力でパスを前線やサイドに送り込み、丸橋が正確なクロスで得点を記録したのと比較すると、この質の違いが結果として現れた形となりました。

■ セレッソの得点に向けた攻撃の変化

鳥栖としては、セレッソの攻撃のパターンがある程度見えてきていたので、守備の対応を変えるという選択は可能でした。セレッソがAプランにおいて清武を活用したいことは十二分に見て取れましたし、Bプランにおいては、左サイドから清武や丸橋がクロスを上げる際に、安在の戻りが間に合っていないケースが発生しておりました。

それは、安在がセレッソのセンターバックに対するプレッシャーをかけるために高い位置をとっているから当然の事ではあるのですが、安在が気にするべきはこれまで通りビルドアップ隊となる「木本」なのか、中央に入ってくる「清武」なのか、サイドでフリーになる「丸橋」なのか、ミョンヒ監督の選択が段々と重要になってくる時間帯でもありました。

さて、そういった状況である中、20分頃から、セレッソがボール保持の仕組みを変えてきます。試合開始序盤からは、藤田がセンターバック間に下りて攻撃を構築していましたが、鳥栖が最終ラインに下りる藤田に対して福田や原川を上げてまでもプレッシングに当てるような対応をとらず、サイドハーフを動かして最終ラインにプレッシャーを与える守備組織であったため、セレッソの狙いである中央のスペースがなかなかこじ開けられない状況でした。

そこで、福田・原川をどうにかして動かすことができないかと、少しずつ、ボール保持に関して工夫を施してきます。藤田が下がる位置をツートップの脇のスペースに変える、最終ラインに下がるのを藤田ではなくデサバトに代える、ボランチ2人を高い位置に置いたままセンターバック脇のスペースに清武が下りる、サイドバック(松田)を絞らせてボール保持係として活用する…などなど、鳥栖のプレッシングの対象をずらすように、様々な形でビルドアップの形を探るようになりました。

こうして、様々な工夫の中、藤田とデサバトが下がらなくてもボールを保持できるような形をとることによって、デサバト1人を原川・福田で見ていた状況から、藤田・デサバトを原川・福田が見なければならない状況をすこしずつ作り出すようになってきました。そのセレッソが作り出した罠にはまってしまったのが39分の失点シーンです。

まず、序盤と異なるのは、最終ラインのビルドアップに藤田が参画しているのではなく、松田がビルドアップ隊を形成しています。これによって、藤田がポジションを1列前に上げることができ、原川、福田とマッチアップする構図が生まれています。このポジションチェンジが最大のポイントでしょうね。

松田にボールが入った時に、鳥栖は前線が積極的に奪いに行く形を取り、プレッシングに入りましたが、この選択をするためには、ビルドアップの経由地であるデサバト、藤田に対して、原川、福田の二人が前に出ていかなければなりません。前線に連動して、原川がデサバトに対してプレッシングに行きましたが、福田が藤田にプレッシングに入るのがやや遅れたため、藤田が清武にフリックできるスペースと時間ができてしまいました。

もうひとつ、前線と中盤が前にプレッシングに出て行ったという事は、最終ラインもそれに追従して出ていかなければ、最終ラインの前にスペースを作ることになります。このシーンでは、原川、福田が前に出て行ったものの、最終ラインはメンデス、奥埜を見るためにステイしていました。序盤はボランチが空けたスペースに、清武がサイドを変え、メンデスが引いてくるなど、双方がスペースに入ってくる動きを見せていましたが、このシーンでは、メンデスは鳥栖の最終ラインをピン留めする役割でステイしていました。この選択も、序盤とは異なるもので、清武がフリーでボールを受ける事のできた要素の一つでしょう。安在は、丸橋を見れるような位置にはおりましたが、木本側に展開したタイミングでプレッシングに出ることに備えてやや高いポジションを取っていたため、リトリートが追い付かずに丸橋にクロスを許してしまいました。

こうなってくると、監督の戦術も含めた、チームにおけるすべての動きが失点の原因であるように思えてきますよね(笑)監督の判断、選手の判断、相手チームの判断、そしてその判断を着実に遂行することのできる選手の技術。あらゆるものが絡んで得点や失点に影響を与えます。チームスポーツのだいご味ですよね。

■ セレッソの守備組織

鳥栖の攻撃の仕組みは、前節までの試合とほぼ変わりませんでしたが、全体的な傾向として、セットアップでは5レーンに均等に選手を配置し、原川やクエンカが入ってきたレーンで数的優位を作るという形を構築していました。特に、クエンカと安在のポジショニングは(指示がでていたと思うのですが)4-4で構えるセレッソの守備におけるいわゆるハーフスペース(サイドバックとセンターバックの間)にポジションを取り、セレッソの守備組織を動かす役割を担っていました。

しかしながら、クエンカ、安在に対しては、サイドに開いたタイミングでしかボールが供給されず、ハーフスペースでボールを呼び込んでいるときには、なかなかボールが入ってこないため、中央を崩すような仕掛けが思うように取れませんでした。その原因は、ビルドアップのパスが福田を経由するのを、セレッソの守備陣が徹底的に帽子したことにあります。

鳥栖が最終ラインでボールを回している際には、メンデス、奥埜の二人は、必ず福田を見る形でセンターバックへのプレッシングをかけていました。これによって、鳥栖のビルドアップの出口は原川、三丸、小林などの外に追いやられる格好となり、福田へのルートを探すためにボール保持を続けると、機を見て清武、水沼が鋭いプレッシングでセンターバックに追い込みをかけ、長いボールを蹴っ飛ばさざるを得ない状況となりました。また、鹿島戦と異なるのは、このプレッシングに相手のボランチがでてこないために、蹴っ飛ばして豊田が競り合った後のセカンドボールに対して確かなイニシアチブを握るとまではいかず、効率的に(再現性をもって)攻撃を組み立てるという事ができませんでした。

このセレッソの守備組織によって、直接サイドに出すボールは比較的通っていました。高丘や祐治、秀人から三丸に直接ボールを送るシーンは何回も見てとれましたが、これは、セレッソ側の判断として、ボールが福田を経由するくらいならば、三丸に渡った方が良いという取捨選択の結果とも言えます。

鳥栖は開幕からこれまで何度もクロスを送り込んでいますが、なかなか精度が上がらない(フォワードと合わない)ので、セレッソとしては、確率の問題として、中央を割られるくらいならば外はくれてやるという形を取ったのかもしれません。実質、鳥栖がクロスからチャンスを得たのは、クエンカのクロスからゴール前で金崎がうまく拾って放ったシュートくらいでしたからね。

■ クエンカのクロス
これまで試合を見てきて、クエンカが「ファーサイドの味方を目がけて蹴るパターン」と、「ニアサイドのスペースを狙って蹴るパターン」でクロスを使い分けているのを感じます。ファーサイドのクロスは良いのですが、ニアサイドの場合は、選手が飛び込んでくれば惜しいシュートシーンが作れますが、そうでない場合は、何も起きずにゴールキーパーがキャッチするようなクロスとなってしまう事もあります。

豊田は主戦場がファーサイドです。クエンカ的には、豊田目がけてアバウトなボールを蹴るというよりは、豊田がピン留めしてくれているおかげで空いているスペース目がけてクロスを上げる方がチャンスメイクとしては理に適うという考えを持っているのではないかなと思います。そうなってくると、タイプ的には、スペースに対して飛び込んでくる選手(大久保嘉人とか佐藤寿人とか)の方がクエンカのクロスと相性が良いでしょう。

クエンカのクロスに限ったことではないのですが、クロスを待ち構えるときに、ニアサイドに人がいないというケースが多くみられるので、流れの中でのペナルティエリア内でのポジショニングはまだ整理する価値はあるのかなと。豊田がファーサイドにいることは分かっているので、他の選手はあえて同じファーサイドにポジションを取らず、ニアサイドにどんどん入ってきてほしいですし、そうすると、クエンカから良いボールが来てシュートチャンスが増えるのではないかなと思います。

■ 安在と松岡に違いはあったのか
今節は、連勝に貢献してくれた松岡がトゥーロン国際に出場するため、代わりに安在がスタメン出場となりました。安在と松岡に違いがあったのかといわれると、違いが見て取れるポジショニングの傾向はありました。

二人のポジショニングの傾向を比較するにあたってわかりやすいシーンがありまして、まず、松岡は鹿島戦64分のシーンが参考になります。高丘のフィードがミスとなって鹿島の選手にわたります。その際に、松岡はハーフウェーライン近くで右サイドのタッチライン際にポジションをとっています。鹿島はボールを奪い、鳥栖から見て左サイドのレアンドロにボールを渡しますが、レアンドロがゴール前に迫るころには、松岡は中央に絞ってペナルティアーク付近にポジションをとっています。その後、右サイドに控える安西にボールがでたタイミングで、中央からサイドに出ていく動きを見せました。

それに対して、セレッソ戦の22分の終わりころから23分のシーンですが、セレッソが鳥栖の右サイドでボール保持しているときは、鳥栖は4-4のきれいなラインで守備組織を構築しています。ところが、そこからセレッソがサイドチェンジして鳥栖の左サイドで攻撃を組み立てているとき、安在は中央に絞りきらずに小林よりもアウトサイド側にポジションをとっています。これにより、福田との間に大きなギャップ(スペース)が生まれ、この位置に清武がうまく入り込んでいました。(逆を言うと、安在は丸橋にボールが出た際にはすぐにマークにつける位置にはポジションを取っています。)

ゾーンディフェンスの教科書的には、松岡のポジショニングの方が正しいとされるでしょう。ボールの位置に応じて、味方全体が左サイドにスライドしているため、全体の流れに合わせてスペースを空けないように左サイドにスライドするのが定石です。特に中央のスペース(いわゆるバイタルエリア)を空けるのは、シュートレンジのスペースを相手に与えてしまうことになるので、大きなピンチの種となりえます。このセレッソの攻撃のシーンでは、メンデスがシュートを放って終わったのですが、中央の清武へのパスという選択肢も大いにありえる状況でした。

ただし、安在には、監督から丸橋を気にするポジションを取るように指示がでていたかもしれないので、一概に安在が良い悪いというものではありません。チーム戦術の中で、鹿島戦とC大阪戦でサイドハーフが押し込まれたときに取るべきポジションを変えていたという可能性はありえます。また、選手がサッカーを行ってきたポジションの経歴も関係しているのではないかと推測します。安在はサイドバックの経験が長いのでどうしてもポジションがアウトサイドに行く傾向があり、松岡はユース時代からボランチ経験が長いでしょうから、中央に対する意識が強いのかもしれません。そういった経歴から来るポジショニングの傾向の違いはあるのかなとも思います。

いずれにしても、前半のシーンでも書いたように、安在のポジショニングというのは、鳥栖の守備における大きなポイントのひとつではありました。そして、失点のシーンでも、安在のスライディングがわずかに及ばずにメンデスへのクロスを上げられてしまいました。前半40分頃の失点でもあり、ある程度相手の狙いが明確になっている段階の中でやられてしまったのは、チーム戦術的にも、個人の質的にも、セレッソ大阪の方が上回っていたという事なのでしょう。

■ 安在と義希の交代の目的とは
ミョンヒ監督は、57分に安在に代えて義希を投入します。インタビューにもどこにも載っていないので、この交代の意図が知りたかったのですが、負けている状況で中盤の運動量を増やして攻撃を活性化するためなのか、カウンターなどの場面で丸橋を抑えるために福田をワイドに出したかったのか。

鳥栖の攻撃の仕組み上、左サイドはサイドハーフ(クエンカ)ボランチ(原川)、サイドバック(三丸)の3人で構築できるので数的にも質的にも問題は発生しないのですが、右サイドはボランチがビルドアップ(アンカー)に回るので、原則、サイドハーフとサイドバックの2人で構築しなければなりません。そうすると、右サイドからゴール前まで侵入するためには、「(人数で勝負するために)フォワードもしくはアンカーを攻撃に参画させる」もしくは「(質で勝負するために)個人で突破できる選手を配置する」のどちらかが必要となります。ちなみに、人数をかけるということは、手薄になるエリアがでてくるということになりますのでフォワードが参画するとゴール前の人数が減ってシュートにつなげることのできる確率が下がりますし、アンカーやセンターバックが参画してくるとカウンター攻撃による失点のリスクが高くなります。

57分に安在から義希に代わったタイミングで福田がポジションを変えてサイドハーフにはいりますが、交代してすぐの攻撃では、最終ラインに福田が引いてしまった状態で義希とのパス交換を行ってそこから右サイドの小林に展開したので、小林が2人に囲まれてボールロストしてしまいます。この後も義希が飛び出しを見せたりとなんとか工夫をしようとしますが、組織戦術の中での動きというよりは、個人のプレイ性質を互いになんとか補完しようとする感じになり、グループとしての崩しがなかなか実現できていませんでした。

これを見て、右サイドの攻撃を機能させるために、金崎がサイドバックの裏のスペースに顔をだすようになりました。つまり、フォワードを攻撃に参画させるという選択を選んだことになります。そうすると、このままでは、右サイドからクロスが上がったときにゴール前の人数が一人減ることになりますので、原川や例えば秀人がオーバーラップでゴール前に入ってくるなどをしてゴール前に人数をかけないと、シュートが放てる確率としては低減します。

右サイドがあまり機能していなかったのが見て取れる66分がよい例なのですが、小林、福田、義希の3人で崩しにかかり、セレッソのディフェンスも数的に同数だったのですが、なかなかアタッキングサードに侵入できず。それを見て状況を打開するために金崎が右サイドの裏にポジションを変えてヘルプで入ってくるのですが、金崎がゴール前から離れたタイミングで義希がクロスを上げます。わざわざゴール前の人数を減らしたタイミングでクロスというのは、ちょっと効率悪いですよね。結局、右サイドの攻撃が活性化されない状態であったため、最後のカードはフォワードではなく右サイドバックの原を投入し、ロングスローも交えた攻撃で打開しようとしましたが、最後まで得点は取れませんでした。

試合は右サイドだけで行われているわけではないので一概には言えませんが、単純に右サイドだけの攻撃を考えると、右サイドハーフの交代は人数をかけずに個人の質で勝負できる島屋もしくは原というのもおもしろかったかもしれません。いずれにしても、右サイドにおいて、コンビネーションで崩すグループ戦術ですよね。小林、福田、義希(金崎)のグループによる崩しがなかなか成果を上げることができず、右サイドが停滞してしまう格好になってしまいました。

■ おわりに
運も実力のうちとは言いますが、金崎の66分のシュートは本当にツキがなかったですね。シュートが右にずれたら入っていたし、左にずれたらポストの跳ね返りが小野のところに行きました。セレッソのDFが詰めていたというのもあるでしょうが、ほんの数センチの世界なので、ツキがなかったと思って胸に納めるしかないですね。

ということで、現実逃避します(笑)
サポソン愛好家としては、セレッソ大阪のサポソンは好きな部類でして、試合前のアップ時なんかは耳を傾けてしまいます。
スネアドラムが強いチームのサポソンは好きです。セレッソは強いですね、スネア。
最近は叩く機会がなかったのですが、久しぶりに家にあるスネア引っ張り出して叩きました。近所迷惑(笑)

特に好きなのは
・エクスタシー大阪
・狼少年
・CRZゴール
・大阪の街の誇り(Ob-La-Di, Ob-La-Da)
ですかね。

最後の曲は勝った時のセレブレーションソングなので、できれば聞きたくなかったのですが、負けてしまったからにはしょうがないということで、せっかくなので聞いておきました(笑)

■ Appendix < ざっくり用語解説 >
・ ビルドアップ
ゴール前にボールを運ぶための仕組みづくり(パス交換の仕組みづくり)

・ トランジション
攻守の切り替え

・ ポジトラ
ポジティブトランジションの略。守から攻への切り替え。

・ ネガトラ
ネガティブトランジションの略。攻から守への切り替え。

・ ハーフスペース
4バックだとセンターバックとサイドバックの間。3バック(5バック)だと両ストッパーの位置

・ デュエル
相手との1対1のマッチアップ

・ ディフェンシブサード
フィールドを3分割したときの自陣ゴール側

・ ミドルサード
フィールドを3分割したときの中央

・ アタッキングサード
フィールドを3分割したときの相手ゴール側

・ リトリート
自陣に引いている状態、もしくは自陣に下がる動き

・ レイオフ
ポストプレイからの受け手が前を向けられる落としのパス

・ オーガナイズ
組織化されていること。チームとして秩序が保たれている事

・ 偽サイドバック
サイドバックがポジションを変えてセントラルハーフのような役割を演じる事


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