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【夜の徘徊者クロスオーバー】灘からの三宮

気づいた時には遅かった。

終電だった、寝過ごした。
寝過ごしたんだから、そのまま三宮にでも出れば良かったんだが、もう遅い。
灘駅で降りちゃったんだ。

その時点では、タカをくくってました。
なんぞあるでしょ。この時代に。
ネットカフェやファミレス、最悪、飲み屋でもいいけど。
神戸市灘区といえば、繁華街 のすぐ隣ですからね。甘かったわ。歩いたら阪急 王子公園駅もすぐですが、ええ、このエリアまるで何もないのね。空いてるのはコンビニのみ。

しゃあない。歩くか、、、タクシーとか使いたくない!もったいない!歩いても30.40分てところでしょ、三宮まで。まぁとにかく、眠かったんだろうなぁ。

街はほんとに車通りすら少ない、歩いている人はほぼ皆無。

おそらく歩いてて、寝ぼけていたが、それでも、大きな危険もなく、僕は1人歩く。

この都会の幹線道路沿い、こんなにも夜は広く深い。1人で吸い込む夜は、楽しむ気にならなければ、ただの孤独でしかないのである。

寝ぼけ眼で歩いて20分、阪急 春日野道駅近く、一瞬、夜にあぶれた人を数組みかけたが、また通りこせばいよいよ、僕1人の世界。時空の切れ目に迷い込んだかのごとく、1人の世界。

ところが、暗闇になんとなく人影が動く、、男性かなぁ、、杖をついている。散歩か。。
1時35分、まぁ、居てもおかしかない。
ところが、なんか、違和感てのがあるんだよね。
杖をついて歩くその姿、バランス、単なる健常者ではないだけではない、軽い麻痺もあるか。
よく考えたら、割と薄着。ふむ。

だんだんと目は覚めてきた。
あゆみは遅く、おそらくはその人の家ではない、、のに、扉を触りながら歩いている。

なんとはなく5分ほど付かず離れずの距離で観察しては居たが、可能性は僕の中で確信に近づき、声をかけてみる。

おじさんすみません、僕、迷子になってしまったんやけど、ココどこですかね?

ん?ここはぁ、、、西区、、ですよ。

西区、ですか。僕は西宮から来たんですが、ここはほんとに西区なんですね?春日野道って書いてたんですが。

あー、今?今はここは…中央区かな。

おじさんは、西区の人なんですか?
足、大丈夫ですか?
電車で来たんです?

あーうんうん。西区です。
歩いて、そうだね。うん。歩いてね。
そうか。あなたは西宮から、ね。大変だね。

なんとなく、怪訝な空気に変わり始める、その前に、『ありがとうございました!おじさんも気をつけて』と声をかけて、その場を離れる。

ほぼほぼの確信を、さて、どう伝えようかと考えつつ、1番近くにある葺合警察に連絡をいれる。

※短期記銘力、いわゆる短期記憶はしっかりとしている。

※見当識障害(いつ、どこの感覚の障害)は、そこそこしっかりしているけれど、なんか曖昧

※歩行のリズム、、何かしら、脳機能障害の後遺症はある様子

※認知症かどうかはしらんが、
認知機能上、なにかしらの障害はある様子

【確証はないけど、念の為、おまわりさんから、聞いてあげた方がいいと思います。人の家の防犯センサーとかに反応したら、もう一個ややこしくなるかも】

おまわりさん、そこそこ早く来てくれて、付かず離れずの距離で見守っていた僕は、状況説明と自己紹介をして、その場を離れた。

三宮まで、そこから10分ほど。僕はとりあえず、トイレに行きたくて。駅前のネットカフェに入った。

その後、お巡りさんから連絡が入ったことによると、そのおじさんは朝から神戸市西区の自宅から『春日野道に行く』と言って出たきり帰ってこず、捜索願が出ていた人だったとのこと。
保護して自宅まで送った、と。

そうか。やはり。

そういうパターンもあるわなぁ。
何もかもがわからないのではないから、
そこまでパニックではなく、
周りからも違和感なく
夜の帳を1人で歩く。

その意味では、僕もおじさんも
変わらない。

まぁお互い無事でなにより!

僕はとりあえず、眠くて眠くて、マッサージチェアで即寝た。始発で、シュタッと帰宅するつもりが、始発から2本ほど遅れて、そして、また、寝過ごして2駅ほど行き過ぎた。

僕もおじさんも変わらない。



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