【パラ・キャリ】水本光×かんのめぐみの場合1
[音楽家、写真家、そして介護福祉]
大阪在住の水本光さんは、写真家。
香川在住のかんのめぐみさんは、シンガーソングライター。
二人とも、高齢者介護現場にて従事しながら、アーティストとして活躍中。
特に四国出身という共通点をもつ二人は、『ウタと写真とものがたり』というコラボレーション活動を行なっています。
ちょうど、二人の新しい作品『風呂屋の香り』が4/17付でアップされていたのでシェア。(『稲刈りの季節』は、その前の作品になります)
[アーティストである事が介護の底力に変わる時/介護従事がアーティストの底力に変わる時]かんのめぐみさんの場合
歌詞とウタを担当するかんのめぐみさんは、
オリジナル楽曲をつくる際、
[お年寄りさん]と呼んでいる(介護サービス)利用者の口癖や、思い出話から着想し、その世界を深めていくのだそうです。
そして、現在のお年寄りさんと、かつてのその方の暮らしが交錯する/再構築した[ものがたり]をウタにしたてて、放り投げる。
不思議なことに、
放り投げたウタを受け止めた時、なぜだか[お年寄りさん]の口癖の向こうにあった深い深い感情が我々聴衆の心に沁みてくる・・・・そのダイナミズムがこれらの作品の強度そのものだと思います。
(今回リリースの『風呂屋の香り』は、最初に歌と詩が、かんのさんサイドで先に仕上がっていたものに、水本さんが、そのイメージに合わせてロケーションを確認しに行き撮影したのだそうです。)
[アーティストである事が介護の底力に変わる時/介護従事がアーティストの底力に変わる時]水本光さんの場合
一方、水本さんの場合は、写真を担当するにおいて、施設で暮らす認知症の利用者の方の目線で想像しながらロケーションを探し撮影・編集することを心掛けているそう。
ウタの中に生きるものがたりが、そのイメージの世界を舞台に、立体的に立ち上がります。
カメラマンの仕事で施設や介護現場での撮影でも、介護士としての視点はとても役に立っていると話す水本さん。
『風呂屋の香り』とは逆に、水本さんが利用者の方の目線からの想像で撮影したものを元にしてかんのさんが詩と曲をつくったパターンが『稲刈りの季節』だそう。
『記録用の写真』ではなく、『施設にこられた家族と過ごす様をリアルに』届けたいと日頃から意識しているからこそ、『目線を想像する』『モデルの方に成り代わる』という視点の構築が可能なのであり、それは日常的に介護就労をしているからこそできることであると共に、ただ介護就労をしているだけでは、辿り着けない場所なのだろうと感じます。
≪介護の仕事の難しさ≒相手の立場になることの難しさを超えて≫
一般的に介護職に求められる性質または姿勢として、
いかに対象、個人個人の視点や目線を意識できるか?尊重できるか?という部分があります。
が、しかし、言うは易し…実際、その世界に入り込むことは誰にでも簡単にできるわけではありません(多くの人がそのジレンマで苦しんできたようにも思います)。職業倫理的に「そうでなくてはならない」というバイアスがあったとしても、本当の意味で誰かの目線に成り代わることは難しい。
だからこそ、この二人のコラボレーション活動そのものや、その作品は目を惹くのかなとも感じます。
透かして向こうに見える世界の解像度の高さ。
存在感、分厚さ。
「なぜ、ああいう口癖なのかな」
「どんな風景が目に映っているんだろう」というシンプルかつ無邪気な問いかけを入り口にして。
驚くほどスムーズに
「遠い、どこか、世代も地域も、大きく隔てられた…知らない人を想像した世界」
に我々は誘われるのです。
不思議なことに。
答えを出さないといけないのではなく、
より深く想像をしようと
対象を見つめるその姿勢と温もりが誰もの心に響き、また、
同時に想像を明確に[ものがたり]に折り返して示す技術と[ものがたり]を成立させきる熱量こそが、このコラボレーションのキモ(肝)でありましょう。
ただ介護をしているだけでも、
ただ表現活動をしているだけでも、
きっと辿り着けない面白い作品です。
是非みなさま、ゴールデンウィークの間、お時間ある時に、ご覧になってくださいませー!
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