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グリーンエネルギーを地域で使う

SAGAMICO BERRY GARDENの畑の上には現在容量272kWの太陽光パネルが設置されています。これは一般家庭70軒以上の電気が賄える容量です。私たちはここで発電した電気を国の固定価格買取制度(FIT)で全量、電力会社に売電しています。

もし、この電気を電力会社に売らないで地元前戸地区で使うことにしたらどうでしょうか。まさにグリーンエネルギーの“地産地消”ですね。

単純に考えれば、ご家庭の電気代が1kWhあたり25円~30円、私たちが電力会社に売っている価格が18円ですから、この電気を電力会社に売るのをやめて20円で直接地域のご家庭に提供できたら、お互いがWin Winということになるのですが・・・今日現在、残念ながらそうは簡単にいかないのが実情です。前戸地区のような小集落で電気を作ってその場で使う、これを共同自家消費と呼んでいます。再エネ先進国と言われるドイツやスペインでは、小規模分散という形で再生可能エネルギーの普及が進んできており、こんなことが容易にできるようになりつつあると聞いています。
日本も、FITの買取価格が年々下がり、いまや、作った電気を売るより自ら使う方がお得な時代になりました。併せて、菅政権に代わってから2050年までにカーボンニュートラル達成の目標が掲げられ、国としても再エネの拡大に本腰を入れて取り組む機運が盛り上がっています。
1年前とは明らかに流れが変わってきました。
最近は、地方自治体が中心になって新電力と呼ばれる電力小売り会社を設立して地元で作った電気を地元に供給するスタイルが芽生えてきていますが、果たして今後どんな形で定着していくのでしょうか。

ここで、いまエネルギーの“地産地消”を阻んでいる問題点は何か、どうしたら実現できるのかについて、少し掘り下げて考えてみたいと思います。いろいろ解決を要する問題があることは確かですが、遠からず、日本でも、もっと容易に地域で作ったエネルギーを地域で使う形が実現できるようになればいいと思っています。

1. 電線の使用料が高い
現在は、既設の送電線は送配電会社の持ち物になっていますから、発電した電気を消費者に届けるには送配電会社に託送料を払って電気を運んでもらうことになります。託送料は電気代に含まれて請求されてきます。
実は、その託送コストがバカにならないのです。問題は、託送料というものは、今のしくみだと電気を遠方から運んできても数十メートルの近場から運んでも値段は変わらないのです。地産地消で近場の電気を運ぶ場合は安くな
る仕組みがあればいいのですが・・・。
また、託送料には、原発の廃炉費用や福島の原発事故関連コストなど純粋に送配電に関わるコスト以外のものが上乗せされていることです。
そのため今後も上がることはあっても下がる要因がほとんどないといわれています。
今の制度では既設の送電線を使う限りこれらのコスト負担から逃げることはできないのです。
2. 自営線を引けないだろうか
それでは、既設の送配電網を使うのをやめて、自前で電線を引いてしまえば託送料は払わないで済むのではないかと誰しも考えるでしょう。
確かに、自宅の屋根上にソーラー発電設備を付けて建物内や敷地内の施設で発電した電気を使うとか、農家の庭先に小規模のソーラーシェアリングシステムを設置して発電した電気を自家消費することを考えれば成り立つのですが、発電設備と使用する場所が少し離れていて、間に公道が横切っていたり、発電と電気の使用者が同一人でなく1対複数だったりすると、今の制度の下では自営線を引くこと自体が認可されないという制約があります。
また、少し難しい話になるので内容は省略しますが、1需要地1引き込みの原則という電気事業法上の制約もあり簡単には行きそうもありません。
3. 電気の不足や余剰にどう対応したらいいか
太陽光発電の場合、晴天でフル発電したとき電気が余ってしまいます。家庭用の10kW未満の設備ならFIT制度で余った電気を決められた価格で電力会社に売電できる(余剰電力売電制度)のですが、業務用と言われる10kW以上の設備になると同じ低圧電力(50kW未満)でも無条件では引き取ってもらえないのです。
また、太陽光発電の場合、逆に夜間や悪天候の場合は電気が必要でも発電してくれないという問題があります。その調整弁として蓄電池が考えられてきました。蓄電池さえあれば、日中に余った電気を貯めて必要な時使うことができるし、防災面でも機能します。
ただ、問題は蓄電池のコストです。
かねてから言われ続けてきましたが、未だコスト高は解消されていません。
最近は一般家庭でも蓄電池の導入が増えてきましたが、電気代の節約というよりも防災の観点から採算度外視で導入するご家庭が大半のようです。蓄電コストが下がれば再エネの拡大は一気に加速するといわれています。高効率低コストの蓄電技術の開発、電気自動車の活用、車載電池の再利用、外国品の積極利用などを考えれば、それが実感できる日も遠くないでしょう。

その他にも地産地消を阻んでいるいろいろな問題がありますが、日本がガラパゴスにならないためにも、しっかりと世界の潮流を見据えた改革が望まれます。

(2021.3.13 山川陽一)

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