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「千と千尋」に学ぶ実習の在り方

「千と千尋の実習  「千と千尋の神隠し」は、言わずと知れた、宮﨑駿監督の長編アニメ映画です。
千尋という少女が神々の世界へ迷い込んでしまい、湯婆婆の経営する銭湯(油屋)で働きながら、人間の世界へ帰ろうと奮闘する物語です。
千尋が成長していく姿が描かれています。

千尋は成長できたからこそ、様々な困難を解決し、最終的に人間の世界に戻ることができました。  

この千尋がおかれた状況を理学療法の実習と重ねてみましょう。


千尋が実習生で、リンがスーパーバイザー、湯婆婆は実習指導責任者、カオナシとハクは患者です。
ハクは学校の教員でもあります。
臨床実習では、自分で選ぶことのできない知らない病院に行き、そこで治療を体験し、合否判定を受けて学校に戻ってきます(合否判定は学校という場合も増えています)。
千尋は油屋という実習施設で、カオナシやハクの治療を体験し、合格して人間の世界に戻ってきます。


では、千尋が「合格」できた要因は何でしょうか?  

最初に釜爺のところに行った時、千尋はおどおどしてすぐに話しかけることはできませんでした。
でも、物語の終盤で、たくさんの豚の中から豚に変えられた両親を当てる場面では堂々としていました。
「それがお前の答えかい?」と聞かれて、力強く「うん」と答えています。
あんなに堂々とした実習生は滅多にいませんよね。千尋の劇的な変化の原動力は、両親を助けたいという強いモチベーションと、自分の判断でハクを助けようとし、いろんな助けを受けながらも、自分の力で成功させたことだと思います。
実習でいえば、患者さんをよくしたいという強い思いのある学生は、自分の判断と行動が患者さんの変化につながるという体験を積むことで自信を深めていくのと同じです。

千尋はいい経験を積んで成長したのです。  

もう一つ注目すべきポイントがあります。釜爺のところからリンに連れられ湯婆婆のところに行こうとした時です。

釜爺のお世話になったにも関わらず、釜爺への挨拶をせずに行こうとして、リンに怒られていました。でも、油屋で働くことになり、皆に紹介された後には、ちゃんと自分から挨拶して立ち去りました。

もしここで挨拶をしていなければ、千尋は油屋で受け入れられなかったでしょう。

当たり前のことがちゃんとできるようになったということです。挨拶がうまくできない実習生って結構いますよね。  

リンにはスーパーバイザーとしてのいいところがたくさんあります。リンの指導がなければ千尋は「合格」しなかったでしょう。リンは自分とは違う世界の千尋を案外すぐに受け入れました。

実習でいえば、いまどきの学生をすぐに受け入れたということです。

挨拶のことなど大切なことはちゃんと教えています。説明しないとわからないところは説明し、できそうなところは任せており、千尋の力量をちゃんと把握しています。いざという時にはすぐに手伝ってくれます。オクサレ様の自転車のハンドルにひもを巻きつけるのを手伝っていましたね。

仕事を離れたら気さくでいい人ですし、「いつかあの町に行くんだ」と自分の夢を語っていました。千尋が銭婆のところに行くとき「お前のことどんくさいと言ったけど取り消すぞ」と千尋の変化に気づきそれをちゃんと伝えました。

リンを見ていると、自分の指導力の無さに気づかされます。  実習に行く前に、あるいは実習を受け入れる前に、ぜひじっくりと鑑賞してみることをお勧めします。」

—『今はまだ理学療法を語らず』松崎仁志著
https://a.co/fDe9AbD

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