安橋正人

安橋正人

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ショート書評その3

マックス・ヴェーバー著、清水幾太郎訳『社会学の根本概念』 マックス・ヴェーバーが社会学体系をとりまとめようとした未完の書。「名目的定義のオンパレード」という批判もあり、一貫した主義主張に欠けるため読んでいて退屈感は否めない。しかし、観念的・非現実的なものであれ、「理想型」を一つの尺度としそれとの距離を明らかにすることを通じて、私達は現実の行為の理解へ近づくことができる、という訳者の言葉は非常に説得的(清水幾太郎の解説による)。なお、清水幾太郎の訳文はいつものように読みやすい

    • ショート書評その2

      戸堂康之『途上国化する日本』 著者の主張は次で尽きている:「日本経済の途上国化が進んでおり、それを阻止して日本経済を再生するには、日本人や日本企業がグローバル化するしかない。」この問題意識をテコにして、幅広く企業のグローバル化に関する経済事象を研究対象としたい。留学生を雇用した(中小)企業の海外展開などのパフォーマンス、海外赴任者を通じた知識・技術スピルオーバーなどは、扱うに難しいテーマとはいえ、十分面白いミクロ実証の研究対象になると思われる。以上は自身の研究のための備忘録

      • ショート書評その1

        遠藤環・伊藤亜聖・大泉啓一郎・後藤健太[編]『現代アジア経済論』:「アジアの世紀」を学ぶ』 アジアといえば開発主義国というイメージが強く、マレーシアの輸出産品といえば錫やゴムというのがかつての地理の教科書にも記載されていたが、現在では半導体部品がマレーシアの輸出の多くを占めている。アジア経済=どマクロな開発経済学という見方を覆し、本の表題のとおり現代アジア経済の新しい問題にも取り組んでいる。イノベーション、都市化、高齢化、環境問題といったテーマでアジアを語る必要が多くなった

      ショート書評その3