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バイクの東

空から雨のように降る松葉杖を眺めていたら東に辿り着いた。

東には本物の雨が降っており、僕はずいぶん驚いてしまう。

「生活だ。生活なんだ。俺は詩人だが、生活をしていないから本当の意味で詩人だと言えるのかわからない」

声はそんなことを言うが、思うに詩人というのは天から声を授かった者のことであるから、生活は関係がないはずだ。

「手紙だ。俺は手紙というものを送ったことがないな」

ああ、手紙を送ったことはないのは、とてもまずい。

僕はそう思ったが、言わないことにした。