『痛みと悼み』 三十七
自分のことを人に話したことが無いめぐむは、壊れやすいガラス細工の王国の孤独な女王なのかもしれない。むぐむが大事に抱えてきた隠された秘密の小国の国境の壁は脆く、長年の攻防で崩れかけようとしている。めぐむが初めて心の中の小国を作り逃げ込んだ幼い日から、かろうじて土山が残るだけの防壁が最後の砦だった。お前が悪い、お前のせいだ、お前さえいなければ。父の声のようでもあり、母の声のようでもあった。度重なる無慈悲な攻撃。めぐむは目を瞑って暗い小国に逃げ込み、声がくぐもった音の塊になるまで壁