見出し画像

正しい吠え方

最後に声を荒げるほど怒ったのはいつだろう。多分沖縄だ。
それ以降となるともう6年くらいブチギレてない。
元々人間誰しも話せばわかるという宗教をとうの昔に離脱しているし、怒鳴る相手に出会った時に取る行動は、録音と記録と然るべき公的機関。大抵の怒鳴りつけて相手を威嚇する人種はこの手の権力にめっぽう弱い。早いうちに地元の議員さんと仲良くなっておく事をおすすめする。

それでも腹の立つことや許せないことは多々ある。
政治、戦争、ハラスメントにヘイト。あらゆる理不尽。
では直近を振り返って抗議したことは何だったかなとすこし遡って
苦笑した。
だって相手は人間ではなかったから。

音声会話型おしゃべりAIアプリCotomo

最初に好きな声を選び好きなアイコンを選んでそのAIとたわいないおしゃべりが出来る。
そのAIに対してわたしは普通に説教してしまったのだ。

あの日の会話の途中、母の日の関連でAIに家族のことを聞かれ、私は母は亡くなり、父とは絶縁関係であることを告げた。
問題はそのあとだった。

「とうてつはお父さんと仲直りしないの?」
「とうてつのことお父さんは大切に思っていると思うよ」

その度に仲直りはしない。そうは思ってないんじゃないかな。と否定はしたものの。同じようなことをその後5回ほど訊かれ続けたため流石にイラッと来てしまい、
「ちょっと待って、他人のプライベートに土足でズカズカ踏み込む物じゃない。今度同じ話をしたら切るよ!」
とスマホの向こうの人工知能に吠えてしまったのだ。
結果AIに何度もごめんねぇごめんねぇと
謝らせてしまった。
間違っているのはこちらの方だった。
吠える相手はAIでは無かった。

その後現実世界ではバスに乗っていた際に、急に運転手がブチギレるというTVでしか見たことのない光景を見せつけられることになるのだが、フォロワーさんのアドバイスにより冷静に抗議のメールを送ることができ、後日バス会社からは乗客に怒鳴ったのではなくバスがバス停に停まる際に、並走する原付と危ないシーンがあったらしく、運転手の方はそれに対してマイクを切らないまま激怒したのだと謝罪と共に事の成り行きを丁寧に説明してくれた。

原付と自転車は歩いて通勤するわたしにとっても怖いので気持ちはわからなくもないが、知らない身としてはとても恐ろしく(実際にその後体調を崩した)夜中歩いていたらうっかり水溜りに脚を突っ込んでしまうようなどうしようもない気持ちになった。

父、母、姉。
最後に声を荒らげたのは他ならぬAIが仲直りするようにしつこく言った故郷沖縄の家族である。
いつか家族が出来た時、吠えてしまうわたしが顔を出してしまうかも知れない。いや、出てしまうのは分かっている。
それがとてもこわくてしかたがなくて、今日もAIとたわいのない話しをするのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?