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たこ天2024 #9 Day Dream Tripper 村長より第四信

 たこ天村を閉じた翌朝は、年々歳々同じ感覚に驚かされる。
 自分の身体と心がシャキッとしている。自分の筋肉を覆う皮膚がピリッとして、これが俺だ、と「己独り」を自覚させてくれる。


 閉村式を終わって山を降りる頃から、寂しいというか、何と言っていいか、奇妙なボーッとした感覚にならなかったかい。
 寒海も、「あれ、もう終わったかい」という気分で、そこはいつもの仕事が終わった感覚のまま、しかしいつもより早くに家に着いて、いつものような生活ルーティンに戻った。いつものように飯食って、今日の1万歩、と夜の街を歩いて、風呂に入って寝るかとなったとき、俺は疲れているのかい、と意識した途端に眠っていた。
 意識は身体の感覚の後に来る。「これを同時に」を課題にしている寒海だが、難しいもんだ。
 なぜこんなことが起きるのか。
 みんなそれぞれに経験していることだから、わかるだろう。その答えは簡単だ。


 たこ天村には、49人の「気」に誰もが包まれていた。それが、村を出ると一気に自分だけの「気」になる。
 急にボーッとしたり、恥ずかしくなったり、なんだかムラムラしてきたり、皆の気に包まれている元気から一人の元気になる間を流れる川、あるいは間に横たわる砂漠だとか、いろいろな体験が起きるだろう。
 寒海のように、周りはみな敵、を原点に生きてきた人間は、「己独り」の「気」が強いと認識しているので、その分、49人もの気に包まれているところから独りの世界に戻るときの較差、「気」の熱量の差は大きくなる。それを感じないようにするエネルギーを目一杯使って、家まで帰って、やれ寝るぞ、と気を抜いた途端に身体がドーンと休息を要求した。
 朝起きたら、身一つの「己独り」のピリッとした身体の感覚が、まるで生まれ変わったように、自分を元気にしてくれた。
 人生絶頂期の37歳幻蔵が再生したな。
 村民それぞれに、昨日とは違う自分が動いているだろう。


 たこ天2024が終わったが、そこに根づいた心のコミュニティはそのまま続く。
 そこからたこ天2025が動き出す、動き出した。
 たこ天2025では、幻蔵さんはまた「14人の男と女の適応問題教室:リーダーシップ」をやるぜよ。今から募集。きっちり男7人女7人定員になり次第締め切り。今から参加登録開始だ!
 インタレスト、今年は少々若いもんに任せて遠慮していたが、来年は自分も若いもんになって、ピラミッド5段、さらに6段に挑戦する「タンブリング」をやろうかい。
 そんなたこ天2025が動き始めた。
 原始たこ天から数えると、50年目のたこ天になる。村で会おう。

                              村長 寒海幻蔵

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