御徒町エレジー第8話【パヤパヤになっちゃう担々麺】
やっちまった。。。
午前中に客先への電話でミスってしまった。
致命的なエラーではなかったが、気分はモヤモヤしたままだ。
誤解しないで欲しいのだが、仕事のミスなんてどうでもいい。
会社の評価など俺には関係ない。
ただその後の後処理で昼メシに出る時間が遅くなってしまうのが嫌なのだ。
こういう時俺は辛いものを食べたくなる。
これは、脳が辛いものを接種する事により麻薬物質を分泌させてストレスを鎮静化させるために起こす行動らしい。
そんな事はどうでもいい。
とにかくスパイシー。
タイ料理。
インドカレー。
スンドゥブなんちゃら。
いや、違う。
今日行くべき所はあそこだ。
午後14:30…
もはやランチの時間ではない。
となると。
通し営業の店。
御徒町駅前にラーメンストリートというのがある。
この時間でも人気店のラーメンが食べられるありがたい一角だ。
さあて、今日の店はここぉ!
さて今日は何にしよう。
メニューを確認。
辛さをマシマシに出来るヤツ。
そうなると、担々麺か汁なし坦々がいいな。
辛さは・・・
俺は比較的辛さに耐性がある。
だが、体の中で耐性が無い部位がある。
それは、頭皮。
辛いものを食べると発汗によりダラダラと汗が流れてくるのだ。
それ自体はハンカチで拭けば良いのだが、一番の問題点。
頭髪パヤパヤ問題だ。
短く刈り込んでいる我がヘアー。
汗をかいて、湿気を纏うと寂しくなってきた頭髪(天パー)が縮れて徐々に産まれたての雛のようなパヤパヤヘアーになってしまう。
本当は激辛にしたいところ。
だが、職場に戻ってパヤパヤになっていたら、女性スタッフの失笑を買ってしまう事だろう。
そんな屈辱を味わう訳には決していかない。
泣く泣く、炎マーク二個の辛口をオーダー。
そしてやってきたのがコチラ。
いい匂いだ。
まずはスープを一口。
まろやかなゴマの風味の後に、きたきたぁー。
ブワッ!
頭皮の毛穴たちが開き出す。
ダラダラと汗が額と首筋を流れ落ちる。
辛口で留めておいて良かった。
舌は平気でも、頭皮はそうは思っていないようだ。
薄く刻んだザーサイ、爽やかなアクセントの柚子の皮。
細麺に絡む濃厚な坦々スープ。
美味い、美味い。
だが、汗が止まらねぇ。。。
この汁にシロ飯頼んで、ぶっ込みたい。
なんて事を思っているうちに、スープを全て飲み干していた。
ふぅ、美味かった。
汗を吸ったハンカチはすでに台拭きのようにビシャビシャだ。
「ごっそさん!」
店を出て、窓に映る自分を見る。
チキンラーメンのヒヨコのようなヘアーのビショビショなオッさんがそこに映っていた。
第九話へ続く
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