初めてののびのびTRPGリプレイ(前編)

ここからは一人で遊んだのびのびTRPGスチームパンク編のプレイ記録をしていこうと思います。PCとイントロは自分で選択。それ以外のカードはランダムです。一つの記事にまとめると長くなったので2回に分けて書きます。

PC→探偵 スキルは技13以上の方を選択

イントロ→霧の奥の驚異

場面1→荒くれ者の気配


深い霧に覆われた郊外の街「シェンド」。ある調査を依頼されこの街を訪れた一人の私立探偵「ジグ」は宿へ向かう途中、早速厄介ごとに巻き込まれていた。

見るからに柄の悪い男たちが、上品な身なりの夫人と言い合っている。都市部と比べてあまり治安がよくない場所とは聞いていたが、こんな昼間から揉め事が起こるなんて。調査開始前から嫌な予感がする。

「ちょっと、俺とお茶しない?」

「嫌です、やめて下さい」

「何だと、俺たちに逆らったらどうなるかここに住んでるやつなら大体想像つくけど思うけどなー…いいから来いよ!」

男の一人が夫人のドレスを引っ張った。俺はこの荒くれ者達も夫人のことも知らないし、これは今回の捜査とは何の関係がない事案かもしれない。しかし、この事態を見過ごすのは一人の紳士として許せないものがあった。

仕事では肉弾戦を強いられることもあるため、ある程度の護身術を身につけたり機械仕掛けの簡易的な武器を持ち歩いてもいるのだが相手は複数人、体格も自分より数段大きい男が多いため真っ当に立ち向かっては負ける確率が高いだろう。

「あっ、奥さん!こんなところにいたんですか。探しましたよ」

俺は夫人の知り合いを装い男たちの元に駆け寄った。

「誰だてめえ?」

「この方とはサークルの友人で。今日は定例活動の日だったので待ち合わせをしていたんですよ」

ポケットに忍ばせた通信機を振動させる。

「もしもし?俺は大丈夫です。今ノース通りにいて…はい、みんなもそっちに向かっているんですね」

ダミー着信を装い俺は架空の友人と会話をした。ノース通りという名前は看板に書いてあった。

「ちっ、こいつは無理そうだな。今日は帰るぞ」

男たちは帰っていった。出まかせで喋ってみたがなんとかなったようだ。


光カード→片思い

場面2→現れた総帥


「ありがとうございました。あの人たちはこの辺りでも有名な不良グループで…」

夫人は俺に頭を下げ微笑んだ。その澄んだ瞳に俺はどきりとした。遥か昔の初恋の相手にそっくり…ただそれだけの理由で俺は夫人に一目惚れしそうになった。いけないいけない。仕事に恋愛感情を持ち込むな。大体この女性が結婚している可能性もある。

「ところで、あなたこの辺りでは見かけないようですがもしかして旅の人ですか?でしたらあまり出歩かない方が…」

「もしかして、怪物が出るからですか?」

「なんだ、ご存知だったんですね」

「ええ、今回は怪物の調査目的でここに来ていますから。何か有力な情報があれば町民に話を聞こうと思っていたんです」

「そうだったんですか。私でよければ少しは力になれるかと…先ほどのお礼もありますし」

とりあえず情報源としてこの夫人から話を聞くことにしてみよう。夫人の家はこの近くらしいのでお邪魔することにした。

夫人の家はやや広く、一人暮らしとは思えないのだが扉の向こうには誰もいない。

「ずいぶん大きな家ですね。ご家族はいるのですか?」

そう聞くと夫人は俯いた。

「家族はいるのですが…今回の件とも関係があるかもしれないのでお話を」

俺は夫人の話を聞くことにした。それによると…

彼女はマーガレットという名前で、夫と二人暮らしをしていたらしい。この大きな家も子供が3人は欲しいというマーガレットの希望で建てたものだったようだ。しかし、3年前に突如夫が行方不明になった。それとほぼ同時に街では新興宗教が流行り出し、行方不明になる住人が増え始めたという。街では行方不明になった住人は宗教に入ったのではないかという噂が流れ始めた。

マーガレットに夫がいるという事実に若干がっかりしつつ…俺は冷静を装いこう言った。

「教団と街に現れた怪物に関係性がある…そうお考えですか?」

「はい。街中その噂で持ちきりです。最近も入信者を装って教団内部に侵入しようと何人かの若者が出かけていきましたが誰も戻ってきませんでした」

「教団の場所は分かるということですね?」

「まさか、あなたも行くつもりですか?やめた方が…!」

「これが仕事ですから。怪物の謎を解くまで俺は帰らないって決めたんです」

そう言い俺はマーガレットの家を後にした。きっとマーガレットは教団の場所を知ってても教えてくれないだろう。俺は他の住人から教団の場所を聞き出しそこへ向かった。

教会のような施設の門を叩くと白装束の男が俺を出迎えた。俺が教団の見学をしたいと伝えると男は快く俺を中に入れた。

「見学者はいつでも歓迎していますよ。それにしてもいいタイミングでしたね。今日は総帥が直々に講和をしてくれるんです」

案内された薄暗い講堂は多くの信者で埋め尽くされていた。空いている座席に座り、その時を待つ。

時計の針が正午を知らせた瞬間、スポットライトが正面を照らした。その先には豪華な装飾を施した人物がいる。この男が総裁なのだろう。パイプオルガンのレクイエムとともに男は宣言した。

「全ては理想の元に!新たなる時代の到来を!見よ!浄化の光が世界を照らす!」

これをほっとくとやばい…俺は直感した。しかし、これを力や話術で止められる術など持っていない。俺は静かに総帥の行動を見守った…

闇カード→復讐者

場面3→せまりくる警官隊


「永遠の命を手に入れるため繰り返してきた儀式は残念ながら、これまで完全な形では成功していない。しかし、確実に完全なる生命体としての完成度は儀式を繰り返すたびに上がっている。さて、今回の被験者として名乗り出る者はいるかね?」

数分間の沈黙が流れた末に一人の男が手を上げた。俺はその顔に見覚えがあった。マーガレットに見せてもらった写真に写っていた、マーガレットの夫に間違いない!

「彼の勇気に拍手を。では前へ」

総帥の言葉に男は立ち上がり、壇上へ進んだ。すると天井から音を立てて鎖に吊るされた機械人形が降りてきた。これが噂の「怪物」か?

機械人形が男の正面に降ろされると、講堂の明かりが全て消えた。何が起こるのか考える間もなく、部屋の後方から一筋の光線が男の胸を貫いた。光線は人形の胸に吸収されていく。光線が消えるのと同時に男は倒れ動かなくなった。人形の目に光が灯る。

総帥は人形に語りかけた。

「どうだ、私の声が聞こえるか?」

人形は金属音を立てながら総帥を向いて話した。

「見えます。声も聞こえています」

それから総帥と人形は日常会話を数分続けた。ここが宗教団体だということを忘れるかのような普通の会話だった。そして、数分が経った時人形の瞳から光が消えた。総帥の呼びかけに人形は答えない。やがて人形はバランスを失い地面に崩れ落ちた。

総帥は腕時計を見た。

「3分48秒。カルヴァンの例を除けば最も長い記録となった。永遠の命に私たちは確実に近づいている。彼の命は失われたが、それは未来の糧になる。彼の勇気を称えて、今一度祈りを捧げよう」

信者たちは男に祈りをささげた。祈りが終わり照明が灯った時、人形と男はいつの間にか消えていた。教団の人間が片付けたのだろうか。

「それでは、今日の儀式はこれまでにする。各自自分の持ち場に戻るように」

信者たちはこの近くに集団で生活しているらしく、ほとんどの人は列を作り同じ方向に消えていった。俺は施設の外に出ようとした。すると先ほど俺を出迎えた白装束の男が俺を引き止めた。

「どうだね、気に入ったか?」

「今は何も言いたくない。今日は帰らせてくれ」

「それはできない。教団の儀式を見たものはいかなる理由であろうと帰すことはできないのだ」

男は俺の手首を掴んだ。その時はなぜか分からなかったが、その部位に凄まじい灼熱感が走った。

ここは力づくでも逃げ出さなくては。そう直感した俺は、簡単な護身術を使い男を振り払った。幸いにも男はそこまで強くなかったため俺は何とか教団の敷地内から逃げることができた。

怪物の正体や教団の目的が何となく予想できてきた。しかし、教団に顔を知られてしまっている…次に行くべき場所はどこなのだろう?俺はしばらく街をさまよい続けた。この街の警察機能がしっかりしているなら、いっそのこと警察に正直に言うべきか?いや、ここまで危険な団体を野放しにしているのだから警察も信用できるか…そんなことを考えていた時だった。

「動くな!貴様の罪状はすでに分かっている!」

振り向くとそこには銃を持った警官がいた。

「俺が何をしたっていうんだ?」

「怪物による殺害の実行に関わったものとして貴様を逮捕する」

「関係ない。大体、証拠はどこにあるんだ」

「教団の人間だという証拠があるじゃないか」

警官の視線は俺の腕に向けられていた。まさか。先ほど灼熱感を感じた腕を見ると、いつの間にか紋章が浮き出ていた。

「俺は教団の調査のために施設に出入りはした。しかし、怪物による殺害には関わっていない」

言い合いをしているうち、いつの間にか俺は百人ほどの警官隊に取り囲まれていた。この状況をどう切り抜けるべきか。

「大体、殺害が起きた時刻はいつなんだ」

「午前11時。その時間に貴様が怪物に指示を与えているとの情報が寄せられている」

「なるほど。じゃあ俺には証人がいる。ついてこい」

犯行時刻、俺はマーガレットの家を訪れていた!幸運にもアリバイが証明された俺は警官隊の誤解を解くことができた。教団に目をつけられている事実は変わらないが…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?