初めてののびのびTRPGリプレイ(後編)

おおまかな前編の内容…探偵ジグは怪物が現れる街の調査に来ていた。事件と関係があると思われる信仰宗教団体の施設に潜入すると、機械人形に命を吹き込む儀式が行われていた。施設から逃げ出すが教団からは顔を覚えられ手首には謎の紋章が刻印されてしまった…

光カード→新聞記者(NPC )

場面4→水晶宮殿のいざない


取り調べが終わると辺りはすっかり暗くなっていた。ひとまず宿に戻ることにしようと警察署を出た瞬間、見覚えのある顔があった。新聞記者のフリッツだ。彼はこの街の住人ではないが、数日前から怪物事件の取材に来ているという話は聞いていた。

喫茶店に入り、俺たちはこれまでにあったことをフリッツに話した。

「なるほど、機械に命を吹き込む儀式ですか。あの教団が何をしているのか、その目的は謎に包まれていましたがこれはすごいスクープですよ!」

フリッツは目を輝かせる。

「お前はこの数日で何かいい情報はあったのか?」

「今日までは特に何もありませんでした。でも、今日の午後になって突然ジグさんが怪物事件に関わっている人物だというニュースが流れはじめて…びっくりしましたよ。今までもあなたと同じように事件に関わっている疑いがかけられて逮捕されていった人が何人かいたのですが、無実を証明できなかった人は次の日処刑されていましたから」

マーガレットが俺のアリバイを証明していなければ俺は処刑されていたということか。背筋が凍る。

「教団は儀式の時にカルヴァンの例を除いて、と言っていた。あれが儀式に成功した唯一の例という推測はできるのだが…ここからどう捜査をすすめるべきか…」

そう言うと、フリッツは一枚の地図を出しある地点を指差した。

「この辺りに怪物が消えていったという証言がいくつかありました。僕は明日ここに行ってみようと思うのですが」

次の日、俺はフリッツと一緒に例の場所を訪れることにした。と言っても、地元住民ですら行くことのない森の中だ。この辺りに施設があるという情報は聞いたことがない。闇雲に森を歩くだけでは迷子になる…そう思った時だった。

(あなたを待っていました…さあ、こちらへおいでなさい…)

「誰だ!?」

「どうしたんですかジグさん」

「フリッツ、お前には聞こえていないのか?」

「何がですか?」

どうやらその声は俺にしか聞こえていないようだった。

(こちらです…こちらですよ…)

俺は声のする方へと歩き出した。

「ジグさん、そっちに行くと遭難しますよ!」

「いや、ここで合ってる。いいから俺についてこい」

俺は声の導きに合わせ道なき道を進んだ。その先には…

目の前に突如として水晶の宮殿が現れた。誰がどうやってここに建てたのだろう。

(さあ、こちらへ…)

声の導きは続く。俺は宮殿の入り口へ進んだ。

判定→技11以上で成功(1人プレイのためマイナス4して7)

結果→元の数値4+3+6+新聞記者ボーナス1=14なので成功


光カード→相棒

場面5→秘密の武器製造工場


俺は再び手首に灼熱感を覚えた。あの時刻まれた紋章が輝いている。宮殿の扉が開いた。やはり、この施設は教団と関係しているらしい。

中に入るが誰もいない。教会のような雰囲気ではあるが…

前に進むと、突然歯車が回転する時のような音がした。すると、自分が乗っている床のタイルが沈みはじめた。体がゆっくりと地下へと沈んでいく。

地下に着くと、そこは地上と異なり工場のような雰囲気を放っていた。壁は水晶ではなく金属であり、絶えず歯車の音が鳴り響いている。

ベルトコンベアに乗せられて金属の塊が運ばれている。機械の作業により金属はパーツをつけられ、一つの製品として形が作られていった。これは…間違いない、あの時教団で見た機械人形だ!この工場で量産されていたとは!よく見ると、機械の胸には俺の手首と同じ紋章が刻まれている。儀式のとき、この部分に光線が打ち込まれ機械に命が宿ったのだ。

俺たちは機械人形が運ばれていく先を追った。人形は倉庫に運ばれ数百体もの数で保管されていた。さらに一体ずつ別の場所に運び出されているのが見えたがその先までを追うことはできなかった。

「地下で分かるのはこれくらいか。一旦戻る方法を考えないと…」

そうフリッツに話しかけた時だった。

「侵入者発見!」

どこからともなく声が聞こえた。教団の人間に見つかったか!?

「紋章を持たない者の侵入を検知した!各位、見つけ次第処分に当たるように!」

フリッツは自分を指差して目で訴える。

「紋章を持たない者って僕のことでしょうか…?」

「だろうな。教団の関係者じゃないものは入れないシステムになっているらしい。悪いな、こんなことに巻き込んでしまって」

「そんな、宮殿の中に入った僕にも責任はあります。こうなるのも予測して僕は取材を行なっているんですから」

「何言ってるんだ、今までもいろんな事件があったじゃないか。その時も一緒に乗り越えてきたよな、相棒」

「ジグさん…!」

まずはこの追っ手から逃れよう。大丈夫、俺たちに解決できない事件などない。


光カード→熱いファン達(NPC)

クライマックス→開かれた神秘の門


「教団の目的が分かりました」

水晶の宮殿から何とか抜け出した俺たちは、その後も様々な調査を続けついに事件の真相へ辿り着いた。この報告に対し、目の前には大勢の警察官や新聞記者がいた。

「怪物事件の犯人は、例の新興宗教団体が関わっています。その目的は、機械の体に人間の魂を移し永遠の命と圧倒的な武力を得ることです。怪物の正体は数少ない成功例が人を襲ったものです」

「その機械の体にはどうやって魂を移すんですか?」

「教団の儀式で、私はひとすじの光線が人間の胸を貫き機械に吸い込まれていくのを見ました。その光の正体なのですが…これは、今の科学や技術では説明のできない力だと考えられます。理屈は分かりません。でも、その光に人の命と機械を繋ぐ力があるのは間違いありません」

「その光を止める方法はないのですか?」

「その光は異次元から繋がるゲートから溢れていることまでは分かりました。ただ、閉じる方法が…」

「そんな、このままでは教団の野望が…」

その時、眩い光が当たりを包み地響きがした。慌てて外に出ると、例のゲートが空を覆い尽くすように膨張しているのが見えた。どこからかあの時出会った総帥の声が聞こえてくる。

「遂にこの時が来た。今まではゲートを完全に開くことができずに不完全な機械生命ばかりが生まれていたが、今日私達は紋章を持つ人間を集めることによりゲートの力を増幅させることに成功した。さあ、今こそ信者たちによる世界が作られるのだ」

なんてことだ。このままではゲートが開いてしまい大量の機械人形に支配された世界ができてしまう。

「紋章を持つ者よ、祈るがよい。さすればゲートは開かれる」

数分の沈黙。しかし、ゲートの大きさは変わらなかった。

「…どうやら紋章を持つ裏切り者がいるらしい。今すぐそいつを探し出し抹殺せよ!」

紋章を持つ裏切り者、間違いなく自分のことだ!見つかるのも時間の問題か…

その時だった。

「ジグ様、私たちにできることは何かないんですか?」

振り向くとそこには自称「私立探偵ジグ様ファンクラブ」を名乗る迷惑な(少なくとも自分にとっては)女性たちがいた。

「できること…か。じゃあ、俺の賭けに乗ってみるか?」

数分後、ファンの女性たちの手首には俺と同じ紋章が刻まれていた。賭けの第一段階は当たったようだ。この紋章、念じれば他人に写すことができる!

「この紋章を街中の人に写せ!そして念じろ!ゲートを閉じるのだと!」

ファン達は散り散りになっていった。

「あの、僕にも紋章を」

「私にも」

気がつくと、周りは紋章を求める人で溢れていた、そして…

遂に信者を超えて増えた数の紋章を写された人が念じ続けた結果、ゲートは次第に小さくなっていき、やがて消えた。

「やりましたね、ジグさん!」

フリッツが紋章の刻まれた手を掲げた。俺の賭け、最終段階は当たったようだ。こうしてまた一つの事件が解決した。


怪物事件を解決してから一か月、再び平穏な日々が訪れるかと思いきや…

「ジグさん、また依頼の手紙が来ているのですが」

新しく助手となったマーガレットが俺に手紙の束を差し出した。

「えっ、こんなに引き受けるのか?参ったな…」

事件の影響で俺の名前が他の街にも知れ渡ることになり、しばらくはさらに忙しい日々を送ることになりそうだ。

「大丈夫ですよ。だって、あなたにはこんなにもたくさんの仲間がいるじゃないですか」

事務所の外を見ると、窓からフリッツが手を振っていた。さらに目を凝らすとファンクラブの女性がこっそりこちらを覗いている気配も感じた。

まあ、こんな生活も悪くないか。


おわり

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