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【打開の翼】第11話「天空の戦姫」

UDMに入隊して8カ月。新人の期間は1年。
それが過ぎると残るか去るかの選択が与えられ、残る場合は新たなチーム…
主に同じ兵科のチームに配属され、「一人前の兵士」として扱われる。

新人期間も残り4か月、私たちはすっかり呼吸を合わせることができるようになっていた。

「新しい敵が出たって言うから来てみたら、なんやねん…あれ」

これまでは巨大な昆虫ばかりだったが、今回はどっからどう見てもドラゴンだった。

「急にファンタジーかいな」
「ヒャッホー!これなら楽勝やでえ!!」

虫から解放された成保は、うっきうきで攻撃する。

「アホ!見た目で判断すんなや!いつもと同じ感じで行かんかい!」
「虫じゃないと張り切るんですね(笑)」

が、充斗の言葉はそっくり反映されてしまう。
ドラゴンは飛行するうえ、炎を吐く。飛び回る蟻のようなものだった。
飛行もトリッキーな動きで予測がつかない。
成保はおろか、柚の弾丸すらもなかなか当たらなかった。

「難しい…成保さん!そんなに動き回らないで!」
「そう言われても、じっとしてもおられへん!こいつらどっからでも襲うてくる!」
「危ない!!!」

充斗が突き飛ばしてくれたおかげで私は無事だったが
充斗は腕に傷を負ってしまった。

「痛って!!!こいつ、炎だけやない!噛みつきの方がよっぽど厄介や!」
「大丈夫!?」
「ああ、俺はこのアーマーやから、かすり傷程度や。でも…」

「うわああああああああ!」

あちこちで悲鳴が上がる。
歩兵は翻弄され、頼みの飛行兵のエアユサールも苦戦している。

「…ヤバいです…エアユサールの皆さんが…」
「炎を避けると後ろから別のが噛みついてきよる!こら、背後固めなあかん!」

私たちは背を合わせて応戦するが、これはいつもの陣形じゃない。
壁を背にしても動きが制限されて炎が飛んでくる。

『エアユサール壊滅!』

「はあ!?」

アナウンスに思わず焦りが出る。
飛行種に飛行部隊が機能しなくなったら地上からの遠距離攻撃しかない。
私たちの地帯は厄介な敵に苦戦し、どんどん数が減らされていった。

「ダメです!いつもの陣形に戻しましょう!」
「せやけどこれもう…無理ちゃうか…?」

珍しく充斗が撤退を促す。
それも道理だ。周りの先輩たちはほぼ壊滅状態。
半人前の私たちが生き残ってるのが不思議なくらいだった。
しかも無駄に生き残っているせいで一斉にドラゴンはこっちに向かってきた。

「撤退!撤退です!」

逃げようとした瞬間、回り込んできたドラゴンが私の目の前に来る。

「柚ちゃん!」

成保が私を庇って覆いかぶさる。
が、それを良いことにドラゴンは成保に噛みつき、咥えたまま上昇した。

「ああ!!!!」
「何をしている!早く撤退を…」

かけつけた隊長もあちこちに焦げ跡や噛み傷を負っていた。
私たちに向かってきた敵に果敢に立ち向かっていたのだろう。
生き残れていたのは隊長の援護もあったからだった。

「成保さんが噛みつかれたまま持っていかれました!」
「何だって!?」
「あれや!あそこに飛んでる奴!」

成保は何とか逃れようとしていたが、体のあちこちに牙が食い込んで逃げられない。
あちこちに同じように咥えられている他の隊員たちの姿もあった。
咥えたまま殺すでもなく食べるわけでもない。
ドラゴンはまるでUDM隊員を弄んでいるようだった。

「成保!もがくな!もがけばドラゴンは噛む力を強める!!」

隊長は叫ぶが、声は届かない。
だが徐々に成保はもがく力を失っていった。
ドラゴンはさらに咥えたまま上昇する。

「助けてください!成保さんは私を庇って連れ去られたんです!」
「!」
「隊長!お願いです!成保さんを…」
「…………」
「隊長!」
「私も助けたい!でも私じゃ無理なんだよ!
 私の体重だと、あのドラゴンの飛行速度と距離に追いつけない!
 私は『たまに飛べる歩兵』なんだ!」
「…………」
「エアユサール+ソルジャー+スティールウォーラーみたいな人やもんな…………」
「司令塔って意味じゃ…マニピュレーターも混ざってますよね…」

「他のエアユサールは!?」
「ダメです!動ける隊は他の現場に…」

他の隊もエアユサールの全滅に混乱していた。
隊長は唇をかむと、私の腕を引っ張った。

「…………来い!柚!」
「え!?俺は!?」
「充斗は救護班の所へ行ってその傷を消毒!そのまま待機してろ!」

私は隊長に手を引かれて負傷したエアユサールたちの所へ連れていかれた。
隊長は比較的軽症のエアユサールたちに言う。

「こいつに合う装備を貸してくれ!」
「え!?私!?」

私はもちろん、負傷したエアユサール隊員も戸惑う。

「でも…その子はソルジャーじゃ…」
「いいから!」
「…装備を…外して見せて…」

先輩に言われるままソルジャーの装備を外す。

「うん。その体格なら…これが良い…着替えてみて」

負傷して手当てを受けている先輩の使っていたエアユサールの装備を渡され、着てみる。
しっかり馴染む。

「さすが私…ピッタリね…武器はそこにまとめてあるから…好きなの使って…」

エアユサールの武器…
分からない…………はずなのに…

上空を見ると、たくさんのドラゴンの中に一匹、その数倍ある大型のドラゴンもいた。

「じゃ…じゃあ…これと…これを…って、私が成保さんを助けに行くんですか!?」
「それしか今は選択肢がないんだ!大丈夫だ!お前はできる!」

エアユサールのヘルメットには望遠装置がついている。
見上げると成保が噛まれた傷跡から血が垂れているのが分かる。

「出血してる!」
「行け!」

 バシュッ

私は夢中で成保に向かって飛んでいた。
途中何度かビルにとまり、エネルギーを回復させながら近寄る。

「ここからなら…行ける!」

一気に距離を詰めると、ラステの電撃が成保を咥えているドラゴンの羽根をはぎ取る。
衝撃に口を開けた瞬間、ドラゴンから成保を奪還すると、ビルに向かって飛ぶ。
子を撃ち落とされて怒った大きなドラゴンが向かってくる。

L字のマンションの陰に成保を一度おろす。

「持ちこたえてください。」

私はマンションの上に飛ぶと向かってくる大型のドラゴンに向けて大きな武器…「エクスブラスト」を構える。

 ドン!

エクス(※エクスブラストの略称)の威力はすさまじく、大型のドラゴンははじけ飛び、落ちて行った。
地上で戦闘を見ていた負傷したエアユサールたちと隊長がつぶやく。

「うそ…あの子…エクスを単発撃ちした…!?」
(エクスは大砲に見えて実は連射武器だ。一発だけ発射するにはテクニックが必要だ…
 こういうのは身体が覚えてるもんだからね…)
「エネルギー管理も完璧だ…
 だいたい…最初に連鎖雷撃銃のラステと一撃必殺大砲のエクス選んだ時点で…」
「単独行動なら、自分に合ったやつが良い。」
「なんで…あの人…ソルジャーなんですか…?」
「さあ?ローリングしたくなったんじゃない?」

私は成保を抱えて救護班に引き渡しにいく。
先に手当てをしてもらっていた充斗が驚いて私を見た。

「充斗さん!」
「え…?柚ちゃん!?」
「エアユサールの負傷した方から装備を借りました!成保さんの手当てを!」
「お、おう!」

軽症の充斗が成保を救急の方へ連れて行くのを見届けて、隊長の元に戻る。

「成保は救護班に任せろ。
 せっかく装備を貸してもらったんだ。
 残ってるあのドラゴンども、駆逐して来い」
「え?ええ!?」

<つづく>

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