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【打開の翼】第6話「蜘蛛の糸」

「なんやこれ!?敵って蟻だけちゃうんか!?」
「最悪や…もー最悪やあああああ!」

新たに出現した敵は巨大な蜘蛛だった。

「ぴょんぴょんしよるし、ビルに上るし…あんなんどうせーっちゅんじゃ!」
「ちょ…あれなんや…?」

充斗の指さした方にはネットに絡まった市民や隊員たちの姿があった

「この蜘蛛、巣、作るんかい!」
「蜘蛛やからな!」
「そら作るわな!」
「でも…どうすれば…攻撃したら捕まった人に当たっちゃう…」

「大丈夫だ。」

隊長が飛んできた。

「あの糸は攻撃で切れる。と言うことはぐるぐる巻きになってる人にダメージはない。」
「衝撃っちゅーもんがあるやろ!」
「じわじわ窒息死するのと打撲で助かるのとどっちがいい?」
「くっそ…そういう選択肢なんかい…」
「糸は主とのつながりを断てば消える。
 人に当てないように周囲の糸を切ればいいんだ。」
「なんや、それをはよ言えや」
「あの糸の怖さは窒息死だけじゃない。絡まっただけでじわじわダメージを受ける。
 急げ!」

隊長はビルの上に飛ぶと糸に射撃していた。

「あの人なんで飛んで戦わへんのや…」
「飛んだら照準ぶれるんちゃう?」
「そんなんで隊長やれるかい!あの距離で当てれてんねんぞ!?」
「でも…これ…いくらやってもその場しのぎなんじゃ…」
「せやな…とりあえず絡まっとる人は助けられてるけど…」
「ていうか…一般人は糸が取れたら走って逃げてる…ダメージ負ってるのは隊員だけな気が…」
「のんきに考察しとる場合ちゃうで!あいつ!あの蜘蛛、倒さな無限に吐くやろ!糸!」
「で、ですよね…」

あらかた絡まった人は助け出されたが、予想通り蜘蛛は逃げ回っては糸を吐いて新しい巣を作る。

「人が居ない蜘蛛になら攻撃してもええんちゃう?」
「やってみるわ!」

成保は一刻も早く蜘蛛に去ってもらいたいようで
走り回って攻撃が届きそうな場所を探す

「相変わらずあいつの逃げ足の速さは逸品やな…」
「意地でも糸に触りたくないんですね…すごい避け方…」

しばらく周囲を回っていた成保だが、戻ってくる。

「あかんー!この武器やと本体に届けへんーーー!!!」
「俺も近接向けのしか持ってへんのよな…」
「私がエアユサールを選んでたら…」
「ああ…隊長みたいに飛べたら攻撃できるんやけどなあ…」

「成保は何をやってたんだ?」

隊長が飛んでくる

「蜘蛛の本体を攻撃しないといつまでも糸を吐くんで
 人が捕まってない蜘蛛に攻撃できないか試してたんです!」
「ああ…その通りだ。本体を撃破しないと無限に吐き続ける」
「隊長、飛べるんやから行って突いて来てや!」
「あの蜘蛛にエアユサールは一見有効だが、実は天敵なんだよ…
 エアユサールの飛行エネルギーは武器のエネルギーを使っている。」
「武器のエネルギー…?」
「武器使う時、いちいち弾薬を込めないだろうが。
 そんな暇はないから、飛ばしているのは弾薬に似たエネルギー弾だ。」
「…言われてみれば…弾込めたことないな…レーザー系の武器は分かるけど…」
「打撃武器もクリーチャーに効くエネルギーが充填されている。
 話を戻すと、軽量化のために飛行用バッテリーを単独で組み込めなかったのか知らんが…
 おかげで無暗に飛んで糸に捕まると、糸を切る武器のパワーもなくなってるから…ほら」

隊長の指した方にはたくさんのエアユサールが巣に絡まっていた。

「…なんやあれ…コントか?」
「ま…マヌケに見えるのは分かる…」
「つか…………なんや…エロいな…………
 露出度高い戦闘服の女性兵士が糸に拘束されて、もがいとるって…………」
「本部のセクハラだ…
 エアユサールは飛行のために軽量化が必須とはいえ…
 あんなデザインにする必要はないやろがい!
 ヘルメットのツインテールもどきの羽根飾り取ったら
 首から胸に当てる分の布作れるやろが!クソボケスケベデザイナーが!」
「まあまあまあ…」
「あの…私たちでは蜘蛛本体はどうにもできないんでしょうか?」
「ふう…持ってる武器を見せろ」

隊長は3人の武器を確認する。

「成保はスナイパーライフル両手持ちで十分だ。お前の身体能力ならやれるだろう。
 充斗は…もうちょっと射程距離のある槍系でもあれば良かったのだが…これだと厳しいな…
 柚は…ん?え…ボルケーノ持ってるのか!?なぜこれを使わない!」
「でも!それ…支援には向かないんで…だってぶっちゃけ大砲だし…無暗に撃ったら前に居る味方に…」
「己が前に出ればいいだろうが!」
「でも…私は援護を…」
「確かにお前は支援に優れているが前線に出ていけないというわけでは…」

「ダメです!!」

(柚ちゃん…………?)
「私は…………支援に徹しないといけないんです…!」

充斗はらしくない怯え方をしている柚に違和感を感じる。
と、成保が前に出る

「…………柚ちゃん、それ俺に貸して。」
「は…はい…………」

成保はボルケーノを受け取ると撃ち方を確認する

「俺が行ってくるわ!
 嫌がっとる女の子に無理さすんはタブーやで!」

と言って敵の方へ走っていった。

「戦場では性別は関係ないと…!」
「それはあのアホも理解しとります。急がなあかんねやろ?かっこつけたい奴にかっこつけさせてやれまへんか?」
「…………」

成保は走り回ったおかげで見つけた狙撃ポイントに行くと大砲を撃つ。

「撃破!?」
「すごいな…………初めて扱ったんだろ…?あれ…」
「ビギナーズラックやな。2発目からが勝負やで」

成保は初めて扱う武器に驚いていた

「うっわ…これ、めっちゃクセあるな…
 弾が弧を描くし、構えて撃つまで身体固まるやんけ…
 …今のはまぐれや…さっきの弾道を考えて…」

2発目以降も外したのは1度だけ。他は全て命中させていた。
このあたりの撃破は全て成保の活躍によるものだった。

「ふう~どや!?」
「パチパチパチ」
「成保さん!すごいです!」

「柚ちゃんこれ使わへんねやったら、俺にくれへん?」
「喜んでプレゼントします!」
「わーい!柚ちゃんの愛のプレゼントやー!」
「ねだっといて何言うとんねん…」
「…………よくやった。お前の吹き飛ばした敵のネットに捕まってた仲間の救出に行ってくる」

隊長はそう言うとネットから落っこちたエアユサールたちの救出に向かって行った。

「なんや、不機嫌やな。隊長」
「知らん知らん。帰ろ帰ろ。」


宿舎に帰った私は自己嫌悪に陥っていた

(全然動けなかった…………隊長の言うとおり…最初から私が前に出てあれを撃ってればよかったのに…
 どうしてもできない…………私は…………兵士失格だ…………)


その頃、充斗と成保は自分たちの部屋で…

「優しいんやな」
「かっこつけたかっただけやで?」
「俺にもつけへんでええて…あんな柚ちゃん見たんは初めてや…」
「嫌なもんは嫌や。俺にはよくわかる!」
「自分の虫嫌いと一緒にすんなや。あれはただの好き嫌いとちゃう…」
「んじゃ、なんやねん!俺は理由なんてなんでもええ。嫌や言うのに無理強いすんのは好かん!だから代わったった。それだけや。」
「せやな…俺はお前に虫殺しを強いるけどな。」
「『せやな。』言うといてなんで俺にはOKなん!?」
「やかましいなあ…お前が撃って落っことしたエアユサールのおねーちゃんの見舞いにでも行ってこいや」
「なんやねんな…まあええわ。かわゆいお姉ちゃんとお友達になって羨ましがらせたるわ!」

成保は部屋を出て医務館へ向かって行った。
充人は部屋のベッドに座って思う。

(あの怖がり方は好き嫌いやない…柚ちゃんは虫を殺す事は怖がれへん…
 前線に出るのが嫌なんや…前線で戦う自信がないとかでもない…
 自分が前線に出たら悪いことが起こる…そういう怖がり方や…
 でも…何が起こるっちゅーんや…?)

<つづく>

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