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【打開の翼】第7話「切り口」

医務館に着いた成保は自分のエリアで負傷した人の病室へ案内してもらった。

「あのー失礼しますー(おおお!正しくセクシーに絡まってたお姉さんたちや~~~!)」
「なにか?」
「昼の戦闘で…蜘蛛殺したの俺なんです…」
「ほう?」
「すんません!お姉さんたちが捕まっとるのは分かってたんやけど…
 蜘蛛殺す方優先してもうて…!」
「おーい!功労者が見舞いに来てくれたぞ!」
「へえ、あなたがあたしらを助けてくれたの?」
「あのエリアは新兵が配置されてたはずだけど…」
「はい!まだ入隊して1カ月弱の新米です!すんまへん…ぼとぼと落としてもうて…怪我させて…」
「ぷ、あはははは!」
「あたしらは飛行兵士だよ?あれ以上の高さに自力で飛べるし、高所から落っこちるのなんて慣れっこ。
 防具も落下衝撃抑える機能あるし。」
「糸に絡んだせいで体力削られたから、一応療養してるだけで、どこも怪我はしてないよ。朝には退院だ。」
「そ、そうなんや、エアユサールてすごいんやな…かっこええわ…」
「お兄さんもかっこよかったよ?名前教えてくれる?」
「あ!成保です!今後ともよろしくお願いします!」
「成保君ね。よろしく。また一緒に戦いたいわ」
「俺もです!お姉さんたちが絡まってもがいてる姿、セクシーでした!」
「…………」

「あ…すんまへん…」
「あはははは!!!元気出た?坊や」
「え、あの…」
「上手かったもんねえ、狙撃。いや、これはマジよ。新兵であの武器正確に当てられるって素質有るわよ?」
「あ…ありがとうございます!」
「ま、あたしは床上手の方が好きだけどね?クスクス」
「か、からかわんでください…」
「あはははは!赤くなってる!かーわいい!」
「ごめんねえ、あたしら女ばっかりで、女子校ノリになっちゃうんだよね。悪い癖だから許して」
「エアユサールて女性と男性で部隊が分かれてはるんですか?」

「え…?いや…エアユサールは、女性専用の兵科だよ?」

「え…?(うちのマッチョ隊長もエアユサールなんやけど…え?)」
「?知らなかった?」
「は、はい…不勉強ですんまへん…」
「新兵のうちは、チームに居ないとなかなか会わないからねえ。
 うちらは空中戦特化ってこともあって、特定の場面でしか呼ばれないから。
 このままクリーチャーの攻撃がおさまってくれりゃいいんだけどね…」
「でもそしたら成保君と会えなくなっちゃうじゃん。
 ねえ、成保君エアユサールになりなよ!
 君の体格と顔の可愛さだったら全然問題ないよ!性転換してきて~」
「俺は男でいいですううううう!!」
「あははは!ごめんごめん。一緒に戦いたいって言いたいだけよ。
 かわいい顔してるってのは本心だけどね。今日は助けてくれてありがとね。」

成保は会釈すると病室を後にして自室へ…

「よう。おかえり。きれーなねーちゃんのお友達はでけたか?」
「肝の据わったキレーなお姉さま方におもちゃにされたわい。」
「ははは、兵科でチーム組んでるってことは一人前認定済みの先輩隊員てことやからな。肝も据わっとるやろ」
「ああもう…手のひらでコロンコロンされたわ…あ!あのな…病室には女性しか居てなくて
 まあそらそうやろけど、糸に絡まっとったのも女性だけやったろ?
 せやから『エアユサールて女性と男性で部隊が分かれとるんですか?』て聞いたら…
 『エアユサールって、女性専用の兵科だ』って言われたんよ…」
「!」

 充斗はマニュアルをめくる。
 エアユサールの項には細かい兵科の特性が書かれていた

「あった…ほんまや…『軽量であることが求められるため女性のみの兵科となる』…」
「ちょ、うちの隊長エアユサールやんけ!あれ女性なん!?マッチョはともかく、180以上あるで!?背丈!」
「そこは…色々あるのかもしれへんからとりあえずおいといて…
 引っかかってた謎が解けたわ…」
「謎?」
「入りたての時、柚ちゃんと朝飯食うてた時、兵科の欄が3択やったて話したやん?
 あんとき柚ちゃん「え?」って顔しとったんよ…」
「せやったか…?」
「隊長はエアユサールですよね?ていうから、新兵は選べへんのとちゃう?くらいに思ってたけど…
 今日もお前が走り回っとった時『私がエアユサールを選んでたら…』とも言うてたんよ…」
「つまり…?」
「柚ちゃんの入隊希望書にはあったんや…兵科の選択肢にエアユサールが…」
「ほな、うちのにはあったで?て言うたらええやん」
「まあ、そうなんやけど…隊長がエアユサールなのは、なんやLGBTとかそういうのんもあるのかもしれんから
 それで気ぃ遣うたんやったら納得や…でもそれって…女性専用の兵科やて知っとったってことやんか…?」
「…入隊前に調べてきただけちゃうん?柚ちゃん真面目やから可能性なくはないで?」
「まあ、そうやけど…なんやモヤモヤするんよな…」

そんな会話がなされていることを、私は当然知る由もなかった…

<つづく>

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