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なんとかなった一日

素晴らしく晴れた3月の日曜日、朝6:30。
子供達の父親が「息子にヒーローショーを見せてあげたい」というので、私は6歳児と1歳児を連れて集合場所の船乗り場へと車を走らせていた。

子供達の父親(以下、パパと表記)とは一緒に暮らしていないので、現地集合だったのだけど。
念のため...と思って出発時に送っておいたLINEスタンプに、返事が来ない。
目的地駐車場に着いたことを連絡したら、そこでようやく反応があった。

「もう着いたの?」
「早くない?」

いや、早くない。子ども2人連れて荷物持って乗船券発券してトイレ行かせる時間まで含めたら、ギリギリくらいだ。

出航まであと20分。
背筋も凍る、パパからのLINE

「勘違いしてた」
「まだ家にいる」

嘘でしょ。さすがにそれはないでしょ。
昨日船の時間スクショした画像送ったじゃん。
集合時間はっきり言えばよかった?
7時には着いててね、って言えばよかった?

叱責やら自責やらいろんな言葉が駆け巡ったけど、とりあえずすぐに出発して原付すっ飛ばせばギリ間に合うと判断し、こちらに向かうよう伝え、私は祈りながら船の座席に座った。

だが しかし パパは 間に合わなかった

長男の「パパ間に合わなかったね」に「そうだね....」としか言えず、天を仰ぐ私。
いや、だって、行き帰りの船は同行しても、それ以外は別行動する予定だったから、想定外すぎるんよ。

いつもの肩掛けバッグと、集合したら渡す予定だった、オムツや着替えが入った袋しか持ってない。
いつも使ってる抱っこ紐がない、という絶望感がすごい。

そんな装備で大丈夫か?

子ども2人連れて歩くには、最低限両手が空いててほしいのに、この有り様。
しかも気温が高くなってくると子供達のアウターも荷物に加わる。

さらに、パパが連れて行くことになっているわけだから、当然ヒーローショーのチケットなんて持ってない。
息子のリュックには、ギーツのベルトとマグナムシューターが入っている。
今さら行けないなんて言えない。

出航してしばらくしてから電話がきた。
内容はこうだ。

急いでたら原付横転した。服は破れて軽く怪我もした。次の船に乗るけど午前中のショーには間に合わない。受付時間になったら事務局に電話するからそれまで待って。ていうかチケット一枚なくした。

ここまで盛りだくさんの情報が次々与えられて、「起きたことはどうにもならないから、とりあえず今どうするかだけ考えよう」と言えた私は偉いと思う。
両脇に幼児2人を抱えながら、だ。

船が着いたらまずどこへ行く?入れるかどうか分からないヒーローショーの会場に行く?ダメだったらどうする?
何もかもノープラン。
この時点でまだ朝の7:30。
子供達はパンに齧り付いている。

とりあえずショーの事務局の電話受付時間(9時半)まで現状出来ることは無いということで、船が本土に着いてから私が行くべき場所は一つに絞られた。

アルパカがいるところ。

ヒーローショーの会場まで徒歩10分圏内。
入れることになればすぐ会場に向かえるし、ダメでもアルパカがいる。屋内遊戯場もある。

衝撃の“船乗り遅れ事件”からあっという間に一時間が経ち、私達は本土に降り立った。

とりあえずいつものように駅行きのバスに乗る。
若い女性の隣が一人分だけ空いていたので、申し訳ないと思いつつ声を掛けて座らせてもらった。
膝の上に座る男児2人。可愛いけど重い。重いけど可愛い。

「赤ちゃんうるさくなったらごめんなさい」とお隣のお姉さんに言ったら、「全然大丈夫ですよ。ていうか私赤ちゃん抱っこしますよ」と返された。
究極の2択。
お言葉に甘えるか、断るか。

普通だったら断るでしょ、というところで、だがしかし、私はその女性に次男を託した。

半分投げやりな態度のパパとやりとりしながら、到着後のことを考えながら、子供達の相手をしながらの船旅で、心が折れかけていたのだ。
そこに差し伸べられた救いの手が、どんなにありがたかったか。

若い女性に抱っこされた次男は、めちゃくちゃご機嫌な顔になった。
おい、ママに失礼だろ。

どうやらその女性も1歳と2歳の子がいるらしく、その日は旦那さんに子供を任せて息抜きに海を渡って来たのだという。(いいなぁ....)
道理で子供への対応が上手なわけだ!

「うちは本当はパパが一緒に来るはずだったし、なんならこっち着いたら私だけ別行動する予定だったんですけど、パパが船に乗り遅れまして」
と事情を話したら、「うっっわ最悪」と3回くらい言ってくれたので、スカッとしたしめっちゃ笑った。

そんなこんなで、優しさに盛大に救われながら駅に到着。まだ朝の9時。
時間が惜しかったのでタクシーに乗り込み、アルパカに会いに行くことに。
片道2,800円かかった。びっくりした。

可愛い

アルパカを囲う柵に頭を突っ込んで「メェー!メェー!!」と連呼する次男。
「アルパカだよ」と教えたら、「あぱか!」と繰り返し、またすぐに「メェー!」と言いながら柵に頭を突っ込んでいた。

カピバラもいた

長男はカピバラに興味津々で、じっくり観察していた。「恐竜時代の生き物とどこどこが似ているから、きっとそこから進化してカピバラになったんだ」とか何とか言ってた。知的。

そんな風に動物で時間を稼ぎながら、電話やLINEでパパとのやり取りが続く。アルパカは可愛いし子供達も可愛いんだけど、私はずっと生きた心地がしなかった。

事務局に電話がつながって話がついたのが、10時頃。どうやらパパの持っているチケットの画像を見せて確認が取れれば、特別入れてくれる“かもしれない”という話に落ち着いたらしい。
ちなみに開演は10時半。

会場近くで待機してて良かった!
でも、大人の足で徒歩10分ってことは、子連れだと15分はかかる。時間がない。どの方角に向かうのかも分からない。

Googleマップを片手に、次男を抱えて小走りで会場に向かった。
Googleマップの案内が間違っていたら。真逆の方向に行ってしまったら。きっと開演には間に合わない。
事情が今ひとつ分かっていない長男に、「ごめんね、ちょっとだけ急ぐから小走りで着いてきてね」と何度も声をかけながら。泣いたりのけぞったりする次男に手を焼きながら。なんとか無事会場に着いた。最後の最後までGoogleマップを信用してなくて、本当に着くんかこれ?!と疑いながら走った。
会場に入る前に水分補給をして、頑張って走ってくれた長男を褒め称えた。今日一番頑張っているのは長男だよ、と心の底から思っていることを伝えた。
パパと一緒に乗るはずだった船。本当はパパと見るはずのヒーローショー。タクシーでも小走りでもなく、本当だったらレンタカーで快適に移動するはずだったらしいのに。

仰け反って泣く次男を抱えて事務室に入ると、事前に電話で事情が伝わっていたようで、思いのほか温かく対応してもらえた。
本当なら絶対無理でしょってところを神対応で通してくれて、私は何度も何度もお礼を言って席に座った。人の優しさに泣きそう。

そしてヒーローショーを見ている間に、本来だったら一人で見るはずだった映画「RRR」の上映時間になり、事前予約したチケット代が返ってこないまま映画チャンスは終了した。

でも、まぁ、そんなことは良いのだ。
右膝に次男、左膝に長男を座らせて。
2人でパチパチ拍手して、仮面ライダー達を応援している姿が見られたのだから。
ヒーローショーのチケット代の方が高いしね。

3回ほど涙腺を刺激するシーンがあったり、第二幕になって登場したリバイスに「やったー!」と興奮してしまったり、早入れ替え演出に「これこれぇ!」と前のめりになったり。もしかしたら私が一番楽しんでいたかもしれない。

終演後、「グッズ販売を見たい」という長男の意思を尊重してグッズ販売列に並んだが、どれもこれも爆高くてビックリした。
会場まで走らせちゃった負い目があるので、買ったけど.... タオルとキーホルダー。大事に使ってくれると嬉しいな。
ちなみに次男は第二幕からずーっとぐずぐずだったので、グッズ販売列で何度も床に転がって泣いていた。マジで大変だった。

終演後、私達はなんとまた歩いてアルパカのところへ戻り、食べたいと言っていたホットドッグとクレープを食べた。お昼の12時をちょっと過ぎていた。
いっぱい歩いてお腹ペコペコ。

マスタードが...ついてますが....大丈夫??
チョコバナナにブラウニー追加。自分を甘やかす


そうしている間に、船からレンタカーに乗り換えてパパが合流。
この頃にはもう怒りやら失望やらもどうでも良くなっていた。頼むからこれ以上トラブルを起こさないでくれ、というお気持ち。

まぁその十数分後に「駐車券なくした」と言って、クレープワゴンの方まで探しに戻ったけど結局見つからなかった、というプチ事件が発生するんだけどね。

それからみんなでショッピングモールに行って、私はようやくここで当初の予定通り別行動開始。
一人でお買い物なんて久しぶりで、一体どこで何をすれば良いのやら。という感じ。

見かけたら絶対入っちゃう

とりあえずKALDI
楽しいよね。ずーっと徘徊していられる。
パンに塗るコーヒーホイップクリームが好きで、ここに立ち寄るとほぼ毎度買う。

きゃわ

次男に引きちぎられる覚悟で買ったアクセサリー。
なんかいろいろ散々なことになっているので、魔除けっぽい石のブレスレット。
それから、なんかワンダーウーマンっぽくない?と思って買った指輪。

伝わる?

ささやかな買い物をして、満たされた。
一人で身軽に動けるという解放感ね。

そのまま船の時間まで子供達任せちゃおうかな。そしたらギリアントマン字幕で観れなくもないなぁ。とも思ったんだけど、朝からあの調子で信用0だったので、早々に合流した。

なんか増えてた

通りすがりの人が二度見するプレーリードッグ。
次男はぐっすりお昼寝タイムに入っていた。

それから公園に行ったり、また買い物をしたり、ご飯を食べたりして、あっという間に帰りの船の時間。
長男が「絶対行きたい」と言っていた量り売りのお菓子屋さんに行けて良かった。

ほぼ毎度行く。カラフルで目移りしちゃうお店
カーフェリー船内。2等ジュウタン席

船に乗ってからも、ずーっと元気いっぱいの子供達。
マックのナゲットやポテトを食べ、おつまみケバブを食べ、おにぎりを食べ、転がって遊んで食べての繰り返し。
2時間半もこの状態よ。疲れて寝てくれるかと思ってたのに。

途中、次男が「おぱい!おっ、ぱぁーーい!!」と半径20mに響き渡る声で騒ぎ始め、近くにいた男子高校生の集団が一瞬ざわついた。
気まずい思いをさせてしまった乗客の皆様には大変申し訳ないのだけど、めちゃくちゃ面白くて可愛くて笑ってしまった。

男子高校生諸君、あなた達もこーんなに可愛い赤ちゃんだったんですのよ。

とまぁ、なんやかんやあったけど、終わりよければ全て良し。
家に帰って子供達を布団に寝かせて私も歯磨きをして布団に潜り込んだら、なんだかすごく安心した。
どうなることかと思ったけど、パニックにならずに一個一個対処できてよかった。
私一人で息子2人連れて旅行するのも、出来なくはないってことが分かったし。装備さえちゃんと整っていれば、あんなに大変な思いはしなかっただろう。

人生っていろいろある。
失敗もある。
後悔もある。
それを乗り越えて生きていく私の姿を見て育ってくれ、息子達よ。

仮面ライダーの姿でも良し。
かっこよかったね!!

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