#24「人生積み減らし」


就職活動をしていた頃、座右の銘を聞かれることがあって、「ベタだなー」と思いながら、でも自分として答えが思いかずに悩んでいました。

困ったら人のものを拝借すればよい。
ということで、尊敬する若林さんから座右の銘をお借りしました。

「人生積み減らし」

これは岡本太郎さんが言っていた言葉らしく、最初意味がわからなかった私はググりました。

人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。
ぼくは逆に、積み減らすべきだと思う。

財産も知識も、蓄えれば蓄えるほどかえって人間は自在さを失ってしまう。
過去の蓄積にこだわると、いつの間にか堆積物に埋もれて身動きが出来なくなる。
人生に挑み、本当に生きるには、瞬間瞬間に新しく生まれ変わって運命をひらくのだ。
それは心身とも無一物、無条件でなければならない。
捨てれば捨てるほど、いのちは分厚く、純粋にふくらんでくる。 
今までの自分なんか、蹴とばしてやる、そのつもりでちょうどいい。

           ー『自分の中に毒を持て』岡本太郎著 青春文庫ー




最近の私は、よく妄想引き算をします。

妄想といえば膨らますものだと思いますが、私の場合は自分のこれまでの人生から引き算をしていきます。

「もし今の大学に入っていなかったら…」
「もしテレビっ子じゃなかったら…」
「もし高校生の時に深夜ラジオに目覚めていなかったら…」
「もしオードリーのことを好きになっていなかったら…」


22年間の人生の中でいろいろな経験をして、その中から「これがなかったらどうなるんだろうなー」というものをピックアップしては妄想を膨らませますが、その引き算の答えはなかなか出ません。



先日、横浜アリーナで行われた「ナインティナインのオールナイトニッポン歌謡祭」に参加しました。

2年ぶりの開催ということで少し久しぶりな感じはしましたが、大学生になってからは毎回参加しているイベントで、今回は学生最後の思い出にしようと思い、前にスケジュールがあったにもかかわらず、それを早急に終わらせて新幹線へと飛び乗りました。

なんとか開演時間に間に合い、横アリ特有の座席表に苦戦しながらも、眺めの良いセンター席に無事に着席。

間も無くして始まり、ナイナイのお二人がステージにそろって歌う「POISON」を聴きながら泣いている自分がいました。

イベントはこれまでの岡村さんひとりの時代の古き良き伝統を受け継ぎながらも、ナイナイ2人の新しい門出ということもあって新たな面白さもたくさんありました。

終演後に別の席で見ていた友人と合流し、お互い普段から多くを語らない間柄なので、感想をあれこれ語り合うつもりもなかったのですが、でもどうしても我慢できなかった私は、思わずこんなことを口にしてしまいました。


「こういうのを面白いと思えて、それを自分と同じような人たちと共有できてる自分が誇らしいわ。」


これを聞いて特に反応する相方ではなかったものの、なんとなく言わんとすることはわかってくれたのではないかと思っています。


めちゃイケを見ていた世代なので「ナインティナイン」という存在は自分にとっての青春であることは間違いないのですが、
第七世代が売れていくのを見てきたど真ん中の世代なので、「好きな芸人は?」と聞かれて「ナインティナイン」と答える人はほとんどいないと思います。

きっとこの番組を聴いていない友人は、校歌である知念里奈さんの「DO-DO FOR ME」も知らないと思います。世代ではないので当然です。
「ワチャゴナ」と聞いてちんねんさんのことだと理解できる私の方が異常なわけです。



ナイナイのお二人もイベントの中で言っていましたが、自分の周りにいたお客さんたちはどう見ても自分より上の世代、自分の親世代と言っても過言ではない人たちが集まっていました。

周りの友人に話を合わせようと思ったら、ナイナイのラジオを聴くよりもTikTokを見ている方が効果的です。

正直、コーナーで擦り倒されているネタや岡村さんから出てくる人物名や過去の話題などはわからないものがほとんどだったりします。

でもなんとなく雰囲気が好きだったり、他のテレビ番組とかでその話題とかが上がると多少聴き馴染みのあるワードに笑ったりしてしまうので、無理に友人たちに話を合わせるよりはこっちの方が良かったりもするのかなと思います。



今回振り返っていろいろと考えてみた結果、「人生積み減らし」は意図的にできるわけではないと思いました。

人生の中でいろいろと積み上げていったものは、自分の中に自然と染み込んでいくし、自分に刺さらなかったものは気づかないうちに自分から離れています。

刺さらなかったものは積み上がっているとはいえないのかもしれませんが、まずはこの無意識のうちに自分から離れていくものを「積み減らし」と捉えて、積み減らすためにはこれからもいろいろなものに積極的に触れていこうと思いました。

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