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邦楽の埋もれてしまっている名盤 〜Food Brain 「晩餐(Social Gathering)〜について

今回私が紹介したいのは日本のプログレッシブ、ハードロックバンドのFood Brainだ。いやはや、しかしながらこのジャンルの括り方が正しいのかは僕にもわからない。なぜなら、このバンドが活動していたのは1970年頃であり、この頃の日本のロックはまだまだ黎明期であった。GSからニューロックと言われる自分たちのロックをやろうとする集団が出てきてその代表格とも言われる人たちが集まったスーパーバンドである。当時、日本語ロック論争というものが起きており、これからはロックを日本語で歌うべきだ、という連中と内田裕也のような英語で歌うべきだ、という連中だ。結果的に前者のはっぴいえんどを代表とするようなミュージシャンが覇権を握ることは言うまでもないのだが。しかし、このFood Brainは先述もしたようにいわゆるスーパーグループでありこの曲が収録されているアルバム一枚を残して解散してしまった。スーパーグループあるあるである。メンバーはGtに陳信輝(ちんしんき)、Baに加部正義、Keyに柳田ヒロ、Drにつのだひろという皆それぞれパワーハウス、ゴールデンカップス、エイプリルフール、ジャックスという60年代後期のニューロックを引っ張っていったグループから加入した人々である。

曲目は以下の通り

1 ザット・ウィル・ドゥ
2 禿山
3 M.P.B.のワルツ
4 レバー・ジュース自動販売機
5 カバとブタの戦い
6 目覚し時計
7 片想い
8 穴のあいたソーセージ
9 バッハに捧ぐ
まず、なんといっても一曲目のThat will doを語らずにはいられない。この時代にここまでの完成度を誇るブルースロックの楽曲が存在していたことに衝撃を覚えた。12分という長尺だが、メンバー四人の個々人の技量の高さが窺えるシーンが何度もある。つのだひろの迫り来るかつ煽るような緊迫したドラム、加部正義の太い音を巧みに駆使し、グルーヴィーなフレーズを出しまくるベース、陳信輝の曲のイメージを強固なものにする歪んだギターソロ。そしてなんといっても柳田ヒロのサイケデリックで狂気じみた長尺のキーボードソロがこの曲の一番醍醐味だと感じる。私はこの曲を聴くとこのくらいの時期から日本のロックは本格的にスタートしているのだなと感じる。独創性やクオリティが本場のロックに全く引けをとっていない。


このアルバムは全曲を通してインストである。陳いわく「歌っちゃうとなんか違うんだダヨね、、」らしい。That will doの他にも、壮大でハードな、そして加部のベースが最も楽しめるかもしれない「目覚まし時計」や、King CrimsonやFrank Zappaを彷彿とさせる実験的な「穴の空いたソーセージ」など楽しみどころ満載である。

四人のメンバーはこのアルバム一枚でバンドを解散しソロ活動をしたりまた違うバンドを結成したり(スピードグルー&シンキなど)するが、このバンドは日本のロックを語る上で埋もれがちである。しかしながら、日本人がまだオリジナルなロックの土壌がない中でこのクオリティの楽曲たちを作れたということは非常に大きな意味を持っていると私は感じる。

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