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ライブレポ|これさえあれば平気さ(T字路s まむしの2マンツアー 5/26)

 このツアーの情報が出たとき、「なんだこのアツい対バン相手は!」と思い、気づいたらチケットを購入していた。

T字路s まむしの2マンツアー 東京キネマ倶楽部 w/ピーズ

 3年前のフジロック(その年はコロナの影響で過去のライブ映像の配信だった)でT字路sに出会い、妙子さんの歌声に惹かれ、いつかライブに行きたいと思っていた。3年の月日が経ってやっと見ることができ、さらに対バン相手がピーズということもあり、この日のライブをとても楽しみにしていた。
 途中、エレベーターでピーズの茂木さんと一緒になるというプチラッキーがありつつ、会場のある5階に到着。自分の番号は210番と少し遅めだったため、フロアにはすでに100人ほどが並んでいた。ジャンルがジャンルということもあり、普段行くライブより年齢層が高めで落ち着いた様子だった。
 ふとステージを見てみるとハルさんがセッティング行っていた。あまりにもフラッと現れたため、ほかのお客さんも少し驚いていた。セッティングが終わると逆四つん這いのような状態でハルさんが袖へ捌けていき、会場では少し笑いが起こっていた。

 開演時間から少し遅れた19時10分、ライブはピーズから始まった。ハルさん以外のメンバーが上のステージから現れ、各々の立ち位置についたあと、下手の袖からハルさんがひょこっと登場。そして、「ヤツが来る前にさっさと始めようぜ」と言ってライブがスタート。実は、ライブが始まる直前に地震があったのだ。会場も少しざわついていたが、それを明るく昇華させ、不安を安心に変えるハルさんらしいスタートだった。
 何の曲のときだったか忘れてしまったが、間奏のときにハルさんが噛みしめるようにフロアを眺める姿が印象に残っていて、顔には笑みが浮かんでいた。近くで見る我孫子さんのギターはとてもかっこよく、さらにはずっとライブで聴きたかった"生きのばし"も聴くことができたことがとても嬉しかった。
 また別の曲の間奏中、上のステージへ続く階段に登り、降りていくパフォーマンス(?)を見せた。演奏が終わった後のMCでハルさんが、「みんな上から出てきたから俺も登りたくなっちゃったよ」と、ここでもハルさんらしさを感じた。一切気取らず、むしろ自然体でいるのにかっこいいと感じるハルさんを見て、こういう大人になりたいと思った。
 前回ピーズを見たときはイノマーロックフェスのときで、ステージから少し離れた位置からだった。しかし、今日は表情が見えるくらい近い距離で見ることができて、これだけで元を取ったような気がした。

 ピーズの演奏が終わり、転換作業が始まる。妙子のエピフォンのギターのギターや篠田さんのエレキベース・ウッドベースのチューニングがされる中、見慣れないギターが現れ、ステージには電球が並んでいた。

 そんなこんなでT字路sライブがスタート。妙子さんは赤いドレスにいつものベレー帽、篠田は黒の中折れ帽に白いシャツ姿で登場。低めながらもヒールを履いていたが、お立ち台に登って飛ぶなど、アグレッシブな姿も見せた。
 「一生分の勇気を振り絞って歌います」と言って始まったRCサクセションのカバーの"スローバラード"。色んな人がカバーをしている名曲だが、その中でT字路sのカバーが一番だと思う。青いライトに照らされるステージの中でぼんやりと光る電球、その中で歌う妙子さんの姿はスポットライト越しの影すらも素敵だった。
 ライブ中盤、始まる前にセッティングしていた見慣れないギターを肩に掛け、NHKラジオ ラジオ深夜便のテーマ曲になった"夜も朝も午後も"、みんなのうたで放送された"遠い世界に"、そしてピーズの"そばにいたい"の3曲を続けて演奏。演奏後のMCでこの見慣れないギターは、とある楽器店に作ってもらった特注品で、T字路sとしては初のソリッドボディ(ボディの内部が空洞になっていないギター)のギターとなっていて、ヘッドには「T」の文字とボディにアコギを模した黒い円盤が打ちつけられていて、音は然ることながら遊び心もある。
 ライブも終盤。ギターもいつものエピフォンのギターに変わり、「皆様の健康とご多幸をお祈りして、そしてこの世界から憎しみや恐怖がなくなることを願って、"泪橋"行ってみよう!」と言って"泪橋"が始まった。自分がT字路sに出会ったきっかけの曲だ。聴けたことの嬉しさはもちろんのこと、ギターとベースの音色、お二人の演奏している姿、そして妙子さんの力強くも温かい歌声、すべてが合わさって気づいたら涙が出ていた。T字路sに初めて出会ったあの日、この"泪橋"を演奏していて、YouTubeのコメントには「声ww」や「ガラガラじゃんww」などのコメントも流れていたが、自分はその歌声に惹かれた。そして今日、あの日見た"泪橋"を聴いて自分の耳に狂いはなかったと確信した。
 アンコールでは芸人のオズワルドの入場曲にもなっている"これさえあれば"、そしてカンザスシティバンドの"新しい町"の明るい2曲を演奏し、華やかにライブを締めくくった。

 冒頭にも少し書いたが、T字路sは人から教えてもらったなどではなく、自分で見つけたアーティストで、自分が聴いてきたアーティストの中では少し特別な存在だった。今まで見たライブの中でも上位に入るほど素晴らしいライブだった。

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