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なぜ子供は電車が好きなのか

町の踏切や駅のホームをしばらく観察してみると、殆ど必ず子供達が電車を見て喜んでいる姿を確認することができるだろう。(カメラを持った大きなお友達もそこそこの確率で確認できるだろう)

私の息子二人も例外なく電車が好きだ。長男はお父さんお母さんよりも「デンシャ!」という単語を覚える方が早かった。ちなみにその次に覚えた言葉は「カンカンケン!(新幹線の意)」だった。

そんなわけで私はなぜ子供はこれ程までに電車のことが好きなのか、その理由を電車への嫉妬をこじらせるかのようにして真剣に考えることになった。

 

古来より人は生死に深く関わるものを崇拝の対象としてきた。

例えば雷。轟音を鳴らし、木々を焼き払い雨季を知らせる。破壊と再生の象徴である。ギリシアではゼウス、インドではインドラ、日本では神鳴り、稲妻とも呼ばれ、東西問わず崇められてきた。

例えば蛇。毒で人を殺めるが、脱皮を繰り返し生き続けることから死と生命力の象徴となる。旧約聖書のイブをそそのかす蛇、中国神話の女媧と伏犠。古事記では八岐大蛇など、いずれも古い神話の時代から人間と密接に関わっている。

やがて蛇は水流や気流を象徴する「龍」と同一視され、日本では主に水神、川の神として崇拝の対象となる。川は人を運び恵みを与えるが、人の命を奪うほどの力を秘めている。手足が無く、流れるように動く蛇は、小さな川の姿のようにも映る。

そこで私は考えた。


電車とは、龍である。と。


電車は都市を繋ぐ現代の川である。電車は人を運び人に恵みを与えるが、人の命を奪うほどの力を秘めている。轟音を鳴らし、手足は無く、流れるように動く。

子供は大人より本能的に現象を認識し、言語から離れた抽象概念の中に生きる存在である。

私の息子達は電車という現象から太古の記憶を呼び覚まし、神の存在に触れ、本能的に畏怖の念を抱いているのかもしれない。 

ないか。


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