中国語で聴くさだまさしの歌

さだまさしは日中国交が回復した直後に「日本人としてはじめて」中国でコンサートを開いたミュージシャンということもあり、1980年代ころは中国大陸でもそれなりに人気があったようです。

そういう理由もあってか、さだまさしの楽曲が中国語でカバーされているものもいくつかあるようです。

ということで YouTube などを探してみたのですが、ここでは3つだけ紹介していきます。

风里的歌(天までとどけ)


歌っているのは台湾のベテラン歌手、費玉清さん。数多くのヒット曲を持っており、特に彼の代表曲「晚安曲」は台湾では知らない人が居ないくらい広く歌われている曲のようです。

さて、上の「风里的歌」は、さだまさしの「天までとどけ」のメロディそのままですが、歌詞は微妙に違いがあります。

「天までとどけ」の歌詞が男女の出会いをテーマにしているのに対し、「风里的歌」は、自然に身を任せ、長い道のりを歩むことで、心の中の霧みたいな悩みも風の中に消えて行くよ、というような歌になっています。

男子汉宣言(関白宣言)

「男子汉宣言」は中国語版の「関白宣言」

1980年代から中国語でも歌われていたみたいですが、2017年に封切られた映画「乘风破浪」でも主題歌として使われたことから、あらためて中国で話題になったようです。

映画の中では、結婚前に歌われた「男子汉宣言」と、結婚後に歌われた「男子汉誓言」の二曲がセットになっています。

この二曲の関係は「関白宣言」「関白失脚」の関係に似ていて、「男子汉宣言」では強い立場だった旦那側が、「男子汉誓言」では弱い立場に立たされていることが歌詞から見て取れます。

男子漢宣言:你在每天晚上 不能睡的比我早
(あなたは毎晩 私より早く寝てはいけない)
男子汉誓言:我在每个晚上 一定睡的比你晚
(私は毎晩 いつもあたなより遅く寝てる)

その他の歌詞は以下の百度百科のサイトにまとめられているので、中国語が読める人は読んでみてください。

https://baike.baidu.com/item/%E4%B9%98%E9%A3%8E%E7%A0%B4%E6%B5%AA%E6%AD%8C


「関白宣言」の歌詞の内容は、日本でも発表された直後に大変に騒動を巻き起こしたと聞いていますが、中国でもその辺の事情は変わらないようです。

中国のネットでは、この歌詞の内容は「直男癌(女性の気持ちがわからない男のこと。蔑む対象として。)」とかなり強い批判の対象になっていたようです。

https://baike.baidu.com/item/%E7%9B%B4%E7%94%B7%E7%99%8C

直男癌一词源于网友对活在自己的世界观、价值观、审美观里,时时向别人流露出对对方的不顺眼及不满,并略带大男子主义的人的一种蔑称或调侃。

もちろん賛否は両論あり、日本でも有名な作家「韩寒」はこの歌の主人公を擁護し、「自分勝手で頼りない男に見えるが、仕事に努力し、妻を愛し、家族を守ろうとしている男である」というような批評をしたりしています。

两首歌加在一起,其实表达的是一个有点自私,有点懦弱,有点卑微,但非常努力地在为家庭工作、并深爱着自己的妻子、很有家庭责任感的一个男人。

この韩寒の発言がさらなる反応・批判を呼び、テレビとかでも取り上げられるような事態になっていたようです。

たしかに、今の御時世、どの国でも「関白宣言」的な価値観の歌を受け入れてくれといっても、なかなか難しいところがあるように思います。

もちろん、もともとの「関白宣言」が落語のようなテイストをもったコミックソングであったとしても、発表当時の日本で男性の地位が下がりつつあるのを風刺するようなスタンスで作られたとしても、です。

我家在那里(桃花源)

最後の曲はさだまさしの作った歌ではなく、もともと台湾で歌われていた歌がさだまさしにより「桃花源」としてカバーされたもの、です。

「我家在那里」は台湾の映画「晚秋」の主題歌として作られたもののようです。タイトルを日本語に訳すと「私の家はあそこ」といった感じでしょうか。

細かい歌詞は「我家在那里」「桃花源」でだいぶ異なりますが、美しい自然を歌った歌という意味では共通しており、美しいメロディの上で伝えたい歌詞の世界も同じようなものにたどり着いたのだな、と感じます。




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