中国を舞台にしたさだまさしの歌

フレディもしくは三教街(コミュニケーション)

この度の武汉肺炎の世界的な流行に際し、武漢・漢口を舞台にした歌「フレディもしくは三教街」を思い出したさだまさしファンも多いだろうと思います。

「フレディもしくは三教街」の歌詞の世界は、さだまさしさんの母である喜代子さんが青春時代に過ごした漢口での思い出をベースに、さださんなりの解釈で作り出した創作、とされています。
(くわしくは佐田喜代子さんの本「永き旋律」を)

そのような背景があるとはいえ、この曲を23歳、プロデビュー3年目に作り出してしまったさだまさしの多感さと老成さには驚かされます。

この歌では、二人の幸せを奪っていったのは「飛び交う戦闘機」でしたが、幸せを突然奪っていくものは戦争だけではない事をこの度の件で強く思い知らされます。日常というのは常に続く日々ではないのだ、と強く思い知らされます。

「フレディもしくは三教街」はもうだいぶ人口に膾炙していますが、映画「長江」などを製作したり、アルバムのタイトルや楽曲名に「帰去来」「桃花源」「静夜思」「梁山泊」などとつける事でも垣間見えるように、さだまさしからは中国に対する憧憬を感じる時期があります。

ということで、この記事では、さだまさしさんが作成した楽曲のうち、中国を舞台にしている曲についてまとめてみます。

上海物語(風のおもかげ)

「上海物語」は、上海の租界を舞台とし、時代としては「フレディもしくは三教街」とほぼ同じくらいの時期(第二次大戦中)を舞台にしていると思われます。

全体的にブルージーな曲になっているのは、名曲「上海ブルース」を想起しているのでしょうか。歌に出てくる舞台も、共通しているものが多いですね(四馬路、ガーデンブリッジ、碼頭)


歌の中に描かれた上海の姿は、ノスタルジーの世界の上海で、今は近代化が進み高層ビルが立ち並ぶ風景になっています。バンド周辺は、若干の昔の面影を残しつつも、イルミネーションが鮮やかな観光名所になっています。

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南京路は、上海の中心地を東西に結ぶ路で、今でも多くの商店が立ち並んでいる繁華街です。一部は歩行者天国になっており、休日は人で賑わいます。

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ちなみに、南京路(Nanjing Road)を南に2つ下ると、漢口路(Hankou Road)があります。

上海小夜曲(自分症候群)

「上海小夜曲」は、当時のバックバンドだった「亀山社中」のギタリスト立山健彦さんが作ったメロディに、さださんが歌詞を載せた小品です。

アルバム「自分症候群」はヒット曲「恋愛症候群」が含まれているアルバムですが、アルバムと同名のショートエッセイ・小説集もあわせて発売されています。

その中には、アルバムの曲と同名の作品もいくつか収録されています。もちろん「上海小夜曲」も。

お話の内容は、「西郊宾馆」というホテルの酢豚が食べたくて、上海をタクシーでさまようという珍道中ドタバタエッセイでした。

お話の結末は書籍をご覧になっていただくとして、さださんが探し歩いた西郊宾馆はおそらくこの建物なのではないかなと思います。今でも酢豚が食べられるか、探し求めていた食堂があるかは不明。

私も、今の騒ぎが収まったころに、一度訪れて見たいなと思います。

あこがれの雲南(風のおもかげ)

「上海物語」と同じアルバムに含まれている作品です。

雲南は緯度的にはかなり南にありますが、2000mを超える高山地帯に広がる街なので気候は温暖で涼しく、「四季如春」と称されるくらい過ごしやすい環境のようです。

そんな雲南への憧れを、ユートピア的な表現で歌われているのが「あこがれの雲南」です。

歌詞に度々出てくるシーサンバンナン(四双版纳。ピンイン読みだとsi shuang bang na スーシュワンバンナ。基はタイ語らしい)は、雲南の最南端にある、タイ族と呼ばれる少数民族の自治区で、象がいたり、多くの仏教寺院が立ち並んでいたりと、昔ながらの東南アジアの情景を深く残している地域のようです。

私も雲南は訪れた事はないので、これ以上あまり書けることはありません…。

ビクトリア・ピーク(夢回帰線Ⅱ)

「夢回帰線Ⅱ」は、音楽で世界旅行をするというコンセプトで作成されたコンセプト・アルバム「夢回帰線」の続編で、このアルバムでも世界中の街を舞台にしたと思われる曲が多数収録されています。

個人的な話ですが、この夢回帰線シリーズは、とてもロマンチックな楽曲が多く、音楽のサウンド的にもバラエティに富んでいて、個人的にはとても好きな作品集です。「夢回帰線」には風に立つライオン、「夢回帰線Ⅱ」には天然色の化石と、後の代表曲となる楽曲も収められています。

「ビクトリア・ピーク」は、香港を舞台にしたラブソングです。ビクトリア・ピークはもちろん香港を代表する観光地であるビクトリア山の山頂、そしてそこからの夜景。

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さださんが、この風景を借りてどのような心情を映し出そうとしているかは、ぜひ楽曲を聴いてみてください。

香港はとてもフォトジェニックな場所も多く、食べ物も美味しい素敵な場所なので、諸々の事が解決して、また気軽に観光できるようになると良いな、と思っています。









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