『あ・うん』向田邦子
週末は好きなコンテンツを紹介しています。
今週読んだなかでいちばん心に刺さった本はこれでした。
最近、向田邦子さんの本をいろいろと読み返してるのですが、唯一の長編小説の今作を、読んでいなかったのです。Kindle版があったので、購入してみたら、文字通り一気読みでした。
向田邦子さんのエッセイには、生活の細かなできごとから、はっとするような視点や考えを提供するものが多いように思います。そこに、家族がからんだり、戦争がからんだり、食べものの話や友達の話が出てきます。
でも、唯一出てことがあって、それは恋愛にまつわる話です。向田邦子さんのエッセイでは、恋愛だけはすっぱり抜け落ちているんですよね。その部分は、小説やテレビドラマの脚本のような、フィクションの領域でばっちり書いていました。
本作のテーマは、友情、夫婦、戦争、そして恋愛です。太平洋戦争前夜の東京を舞台に、男二人の美しい友情があり、同時に、一方の妻へのもう一方の恋を、美しく描きます。すごいなと思うのは、「葛藤」のようなわかりやすい気持ちに至っていない、微細な心の揺れを、ほんとうにさらっと、ごく自然に書いてしまうところです。
読み終わったあとも、どうしたらこんな文章が書けるんだろうな、と思って何度も読み返しています。
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