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コンピュータ将棋を見て、クリエイティブについて考えた。

将棋の佐藤天彦名人が、コンピュータと対戦して敗北した

相手のソフト・Ponanzaのレイティングは、名人より800以上高いと言われている。レイティングというのは強さの指標で、400差があると高い方の勝率が9割になる。800差というのは、9割勝つ相手に9割勝つということで、勝率でいうと99%になる。だから、勝敗はある程度わかっていたことではあるんだけど、内容はやっぱりおもしろかった。

対局前に、羽生さんが「コンピュータの将棋には恐怖心がない」という意味のコメントをしていた。どういうことかというと、人間は、よさそうな手でも先を考えてみて「危なそう」だと指さないのだ。でもコンピュータはそこに平気で踏み込んでくる。結果、人間が考えたこともなかった手を、序盤からどんどん指してくるのだ。

人間の脳は、リスクを大きく見積もるようにできている。人生は一度きりで、危ないことをして死んでしまったらおしまいだからだろう。つまり恐怖心というのは、生存に有利な機能として人間に備わっているものだ。

コンピュータが強い理由は、いい手を思いつくことできるからでもあるんだけど、それをきちんと検証できるというのもじつは大きい(Ponanzaは1秒間に数百万手を読むことができる)。人間が怖くて指せない「危険そうな手」も、安全そうな手と同じように先を読んで確かめて、そっちがよければ躊躇なく指す。つまり、読みの深さと正確さが、発想を補っているのだ。

それで、ぼくは仕事がら、クリエイティブってどういうことなのか?ということをよく考えているのだけれど、このことと共通点が多いことに気がついた。

クリエイティブな人というのは、発想の幅が広いというのもあるんだけど、それを脳内でシミュレーションしてみる量が多いのだ。普通の人は、すぐに考えるのをやめてしまうんだけど、クリエイティブな人はずっと考えている。

この差はどうしてなのかなと常々思っていたんだけど、もしかすると、これも恐怖心が関係してるかもしれない。だって、いろいろ考えるの、つらいもんね。出てくるアイデアってほとんどつまらないものだし、いまこの世にないもののほとんどは、必要じゃないものだ。だから、その案がダメな理由なんていくらでも思いつく。それってやっぱり、ちょっとだけ傷つくのだ。

じゃあ、クリエイティブな人は考えることに傷つかないのか? いや、もちろん傷つくでしょう。だから、ちがいはたぶん、「覚悟」とか「知性」なんじゃないかな。あと「慣れ」もありそう。

コンテンツの秘密

ドワンゴの川上さんの本。ジブリでの自身の体験を通じて書かれた本で、クリエイティブの才能というのは、シミュレーション能力ではないかという話が書いてある。

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