羽生さんの話
将棋の羽生善治さんに取材させていただいたことが何回かある。羽生さんは、質問をされると、一瞬考えて、それからゆっくり答えてくれる。どんな質問にも全力で誠実に答えることに決めているんだと思う。言葉の選び方も的確で毎回しびれます。
先日の名人復位のインタビューを読んで、印象に残った箇所が2つあった。
こだわらず40代羽生流 第72期将棋名人戦を振り返る
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11243177.html
――「羽生善治」の強さって、何なのでしょうか
う~ん、こだわりがないところ、でしょうか。
じつは、羽生さんの将棋には、わかりやすい特徴がない。この形になったら強いとか、この戦法が強いとか、そういう、素人でもわかるような特徴がないのだ。でも、とにかく強い。その大きな理由が、ここにあるんだと思う。
狭いところにしぼって得意な形を持つというのが普通のやりかたなんだけど、それってもしかすると「手抜き」なのかもしれないと思わされる迫力がある。かっこいいです。
もうひとつ。
――見たこともない形が現れた時、どういう心理になるのですか
どういうふうに考えていったらいいかを考える、という時間が長くなります。指し慣れた形なら方法論があるので、それに沿って考えるが、類似もない将棋は何を羅針盤にして局面を判断し、方向性を決めるのかというところから考えないといけない。難しさと面白さの両方があります。
見たこともない問題にあたったら、普通はあわてて対処法を考える。羽生さんは、どういうふうに考えるのかという「考え方を考える」のだという。たしかに、新しい問題が起きたときは、思考のフレームワーク自体を問われていることが多い。だから、そこを考えるのがいちばん大事なんだけど、いざそういう局面を迎えると、なかなかそんな心境にはなれない。
しかもこれを、楽しそうに、淡々と、何十年も続けてるんですよ。ほんとにすごいひとです。
7月15日 火曜日
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