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コンタクトレンズの入れ方を説明する

ぼくらの会社には、アルバイトやインターンのひとがけっこうたくさん来てくれている。そこで先月から、月に一度、編集やライティングの勉強会をすることにした。毎回、課題を出して、やってきてもらって、それに対して講評をする形で行っている。前回の課題のひとつにこんなのがあった。

コンタクトレンズのつけかたを説明してください(180字以内)

やる気のあるひとは、ここでいったん読むのをやめて、実際に書いてみるとおもしろいと思う。これはつまり、説明文の書き方を理解してもらうための課題だ。

典型的な回答をあげてみよう。

まず手をよく洗います。そして、ケースに入っているレンズを人差し指で優しくすくいます。指の上に乗せて、横から見たとき、ふちが丸みを帯びていたら表、外に反っていたら裏です。表にしておきましょう。そして人差し指のレンズを落とさない様に、薬指で目を「あっかんべー」のようにして、そのまま人差し指のレンズを下から優しく乗せ、  目をつむってなじませたら完了です。(176字)

だいたい、こんな感じになるかなという文章だ。わりと上手に書けていると思う。

ぼくの用意した解答例はこれ。

まず、手を石鹸で2回、洗ってください。手をすすいだら、人差し指の腹に凸面を下にしてレンズを乗せて、反対側の手でまぶたを大きく開いて、目の中に入れます。レンズが目に張り付いてから、静かに目を閉じると、空気が抜けてきれいに密着します。失敗したら、最初からやり直してください。2つ目のレンズを入れる前に、もう一度手を洗います。その後、同じようにして装着してください。(180字)

最初の例にある「手をよく洗う」というのは入れるべき話なんだけど、「よく」は人によって違うから、こういう説明文ではいまいちなのだ。もっと具体的に「石鹸で2回洗う」「手をすすぐ」と書くことで、誤解のしようのない文章になる。「静かに目を閉じる」といった細かなコツも意外に重要だったりするし、装着に失敗したときのケアも行っている。

最後の重要なポイントは、2つ目のレンズを入れる前に、もういちど手を洗うことを指摘していること。ぼくはずっとコンタクトを使っているんだけど、2つ目のレンズをいれるときに、少し目がしみることがあって不思議に思っていた。あるときに、こういう説明をしている冊子を眼科で見つめて、猛烈に感動したのだ。説明文は、想像力と思いやりが、大事なんですね。

6月7日 土曜日

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