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東大のディープラーニング公開講座になぜ行くのか

一昨日書いたこの記事がえらくバズっておどろいたんだけど、昨日も東大のディープラーニング講座の第4回に行ってきた。

終了後に、いっしょに通っている廣瀬くんが「今日もブートキャンプを生きのびたぜ」みたいな投稿をFacebookにしていたけど、本当にそうだった。

授業中に出てきた数式の数は、たぶん50個くらい。「この部分、計算過程は省略してますけど、各自あとで手で計算して確認してくださいね」という講師の発言が、5回目くらいで、教室に静かな笑いが起きた。(できねーーww)みんなのこころがひとつになった瞬間だ。

高校生のころに、微分積分とか確率統計を「こんなの一生使わないだろwww」と投げ出した自分に、タイムマシンで戻って「お前は25年後に東大の人工知能の講義で死ぬほど苦労する」と説教したい。この講義、数学力とPython力とNumpy力の全部が必要で、めっちゃきついよ。

なんで経営者のぼくがこんなことをしているのか? よく聞かれるし、疑問に思う人もいると思うので書いておこう。

一言で言うと、できることとできないことを知りたいからだ。

ディープラーニングという技術を使うと、なにができて、なにができないのかをぼく自身が深く理解することで、会社としてどういう意思決定をすればいいのかがわかる。

技術というのは、問題解決の手段のひとつだ。だから要素技術の理解があればあるほど、解決できる課題の数が増える。

iPhoneが発売された時に、「これまであった技術の組み合わせじゃないか」という批判があった。そうじゃないよね。それまでの技術を組み合わせて、ああいう製品に仕上げたことがすごいのだ。静電容量式タッチパネルと、省電力マルチコアプロセッサー、加速度センサー、iPod、Wifi、そして電話。これらをあんなにうまく組み合わせるイメージと、組み合わせたあとの人々のライフスタイルの変化のイメージは、スティーブ・ジョブズ以外、持てなかった。

こんなとがった話じゃなくても、そういうことはよくある。

ログのデータを1行ずつエクセルにコピーして、整形して整理するような仕事を何時間もかけてしているひとがいる。でも、エンジニアに相談すると、SQLを1行かけばすむような話で、一度だけコードを書いてもらえば、その仕事は消滅する。よくある話だ。

逆に、非エンジニアが、こんなことをしたいんだけど、システム改修してくれませんか?と、気軽に言う。でもそれは、技術的にものすごくたいへんで、というかほとんど不可能なこと、みたいなこともよくある。

だからぼくは、マネジメント層は技術もある程度わかる必要があると思っている。もちろん代表者個人じゃなくて、経営グループでわかるひとがいればいいとも言えるんだけど、ぼくはやっぱり両方知っておきたいのだ。

ぼくは、インターネットまわりの技術については、けっこうわかっているつもりだ。だからその分野では、できること、できないこともわかるし、新しいことをするのにどれくらいの工数がかかり、どれくらいの難易度なのか、実現した場合の速度やコスト感がわかるから、ビジネスになるかどうかもある程度、判断できる。

でも人口知能の分野の技術は、そういうこれまでの分野とかなり断絶している。はっきりいって、ぜんぜん肌感がちがう。たとえば先日の記事の、数字の手書き文字認識の課題でいうと、学習プログラムの中で、6000億回以上の掛け算と足し算が行われる。

これはウェブプログラミングには出てこない桁の数字で、現代のコンピュータのパワーでもそこそこ大きなデータ処理だ。だからプログラムの書き方で、ものすごく差が出るわけだ。工夫せずに書いたら1時間かかるけど、うまく書いたら3分!みたいなことが普通に起きる。

ぼくは、そういうことが知りたくて講座に通っている。まだ内容は入り口にすぎないんだけれど、もっとすすめば、いろいろわかるようになるはずだ。解きたい課題があったときに、その課題のサイズ(計算量)が想像できて、CPUやGPUのパワーについてもわかっていて、「あ、きっとできるね!」「それは難しいけど、課題を切り分けたらいけるかな」「100億円かければまちがいなく行けるけど、それだと商売にならないからだめだね」と、わかるようになりたいのだ。

すばらしい講義を、無償で提供してくれている、東京大学には感謝である。税金払ってきてよかった!と思う瞬間だ。

で、そんな技術を使って、ピースオブケイクはなにをするつもりなんだよ、という話は、長くなったからまた書く。

最後に、お知らせを。

ピースオブケイクでは、人工知能エンジニアを募集してます。データも、GPUも、解くべき課題も、ぜんぶあります。興味があるひとはこちらまで。

あと、あの講義を受けているひとがけっこう読んでる気がするんだけど、ぜひ教室でもどこでも話かけてください。飲みに行きましょう!


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