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あの頃へGO!

1974年

1974年、この年の10月、ひろみの初主演ドラマ「ちょっとしあわせ」の放送が始まる。脚本は、1980年代に「金妻」ブームを起こす鎌田敏夫。1967年の竜雷太主演のドラマ「でっかい青春」で脚本家デビューした。主題歌の「よろしく哀愁」はオリコンシングルチャートで初の1位を獲得しアイドル人気絶頂のひろみの金字塔となった。前年にリリースされたシングル「モナリザの秘密」のB面「この愛はどうなる」がこの曲の路線に敷かれたあり蓋然性が高かったナンバーかと思う。モナリザは微笑んでいた。

1月、前年リリースされた「裸のビーナス」と「魅力のマーチ」の両シングルが収録されたアルバム「ひろみの部屋」がリリースされた。初登場でオリコン2位にランキングされた。タイトル通りひろみの部屋という設定で電話口から慣れ親しく語りかける台詞が挿入されている。往時流行ったウィスパーレコードを思い出す。アルバムの注目ナンバーはA面に収録された「夢子よ」だ。ノリのよいテンポで好きなナンバー。1987年にリリースされる萩原健一のアルバム「Straight Light」に収録された「影子」と同様、女性の名前がキャラを表す式の伝統的なリリック、そしてサウンドもどこか共通点を感じる。B面に収録された「パピーラブ」は、1972年にドニー・オズモンドがリリースした同名のカヴァーだ。オリジナルは、1960年にポール・アンカが自ら歌いビルボードには2位にランキングされた。ジャクソンズのライバルとして人気を博したオズモンズは、ニッポンではカルピスのCMで有名になった。

アルバム「ひろみの部屋」収録曲
『題名(邦題)』作詞(訳詞)/作曲/編曲
1.『夢を破らないで』岩谷時子/筒美京平/筒美京平
2.『光を求めて』岩谷時子/筒美京平/高田弘
3.『旅立ち』岩谷時子/筒美京平/筒美京平
4.『夢子よ』岩谷時子/筒美京平/高田弘
5.『きもの姿の君』岩谷時子/筒美京平/筒美京平
6.『魅力のマーチ』岩谷時子/筒美京平/筒美京平
7.『ラブ・ミー』アラン・オスモンド、メリル・オスモンド、マイケル・ロイド/日本語詞・片桐和子/高田弘
8.『夢で会おうね』岩谷時子/筒美京平/高田弘
9.『小さな愛のワルツ』アラン・アンド・マリリン・バーグマン、メリル・オスモンド、マイケル・ロイド/モーリス・ジャール/日本語詞・安井かずみ/高田弘
10.『僕たち』岩谷時子/筒美京平/筒美京平
11.『パピーラブ』ポール・アンカ/ポール・アンカ/日本語詞・千家和也/高田弘
12.『裸のビーナス』岩谷時子/筒美京平/筒美京平

3月、シングル「花とみつばち」がリリースされた。男の子と女の子の関係を花とみつばちに喩えた岩谷のリリック、それを軽快なロックンロールで包む筒美サウンドは印象的だった。イントロはザ・キンクスの「All Day and All of the Night」のリフがオマージュされている。さらにビーチボーイズ風なコーラスもフィーチャーされ爽快感が塗されている。曲の出だしではもう一つ、ベイ・シティ・ローラーズの「サタデー・ナイト」を彷彿させるリズムセッションが入るが、この曲が収録されたアルバム「エジンバラの騎士」がリリースされるのは同年10月になる。いずれにしてもテレビで歌うひろみを気にし始めた曲だったことは忘れもしない。

6月、アルバム「ひろみの朝・昼・晩」がリリースされた。前作に続いてこのアルバムでもひろみの1日がテーマという企画が練られた。ひろみの台詞やサウンド・エフェクトが所々に入る。シングル「花とみつばち」はステージの雰囲気を醸し出す効果が曲の頭とお尻に加えられている。コンセプトということで仕方がないが、各々の楽曲をよく聴いてみると中にグッとくるナンバーに気付かされる。B面「僕のドラマ」は夏の海をイメージさせてくれるサウンドとリリックで、ハイハットとベースそしてサックスが泣く甘く切ないジャジー、高田弘の世界が広がる。ところがちょっと余計と思われる台詞がイントロに入っている。同じく「バス・ルーム」にも銭湯っぽい効果音が聞こえる。悲しい気持ちを洗い流すコンセプトは、1980年にリリースされる山下久美子の「バスルームから愛をこめて」と同じだ。アルバムのエンディング「君と眠れたら」の1曲前の前のナンバーとして必須なタイトルだったのだろう。エンディングはA面「君たちがいるから僕がいる」と同様にひろみが女性コーラスが前面に出てきて掛け合いで歌う形式となっている。コーラスの変則的な使い方にも関心させられる。

アルバム「ひろみの朝・昼・晩」収録曲
『題名(邦題)』作詞(訳詞)/作曲/編曲
1.『目覚め』岩谷時子/筒美京平/高田弘
2.『フレンズ』岩谷時子/筒美京平/高田弘
3.『空のむこう』岩谷時子/筒美京平/高田弘
4.『君たちがいるから僕がいる』岩谷時子/筒美京平/高田弘
5.『花とみつばち』岩谷時子/筒美京平/筒美京平
6.『僕のドラマ』岩谷時子/筒美京平/高田弘
7.『夕暮れの街』岩谷時子/筒美京平/高田弘
8.『悲しみをわけて』岩谷時子/筒美京平/高田弘
9.『バス・ルーム』岩谷時子/筒美京平/高田弘
10.『君と眠れたら』岩谷時子/筒美京平/高田弘

6月、シングル「君は特別/太陽のシャワー」がリリースされた。「花とみつばち」のインパクトがあまりにも強烈だった為か、印象の薄いナンバーだ。今聴き直すとフィリー・ソウルなサウンドの仕上がりであることを認識させられる。1975年にリリースされるキャンディーズのシングル「その気にさせないで」と曲調が近い。筒美京平がフィリー・ソウルを追求した代表作となる岩崎宏美の「センチメンタル」がリリースされるのも同じく翌年10月になる。

1974年、シングル4枚、アルバム2枚、ライブアルバム1枚リリース。
1月 アルバム「ひろみの部屋」
3月 シングル「花とみつばち(岩谷時子/筒美京平/筒美京平)/悲しみをわけて(岩谷時子/筒美京平/高田弘)」
6月 アルバム「ひろみの朝・昼・晩」
6月 シングル「君は特別/太陽のシャワー(安井かずみ/筒美京平/森岡賢一郎)」
9月 シングル「よろしく哀愁/セーターに愛をこめて(安井かずみ/筒美京平/森岡賢一郎)」
12月 ライブアルバム「HIROMI ON STAGE〜よろしく哀愁〜」
12月 シングル「わるい誘惑/ふりむいた君(有馬三恵子/筒美京平/森岡賢一郎)」

9月、シングル名曲「よろしく哀愁」がリリースされた。冒頭でも触れたテレビドラマの主題歌。作詞は前年に沢田研二の「危険なふたり」でヒットを飛ばした安井かずみ。イタリアンツイストで仕上げられ、シングル「モナリザの秘密」のB面に収録された「この愛はどうなる」が姉妹曲。1977年、吉田拓郎がリリースしたカヴァーアルバム「ぷらいべえと」でもカヴァーされ、楽曲の評価が高まったことは言うまでもない。1994年、シンシアもカヴァーしシングルとしてリリースさたが、酒井政利は著書で「言ってみれば南沙織が長女、郷ひろみが長男みたいなもの」と語り「よろしく哀愁」は、酒井のプロデュース業の原点といえる両名の歌唱ヴァージョンが存在する唯一のシングルA面曲となったと述懐している。

12月、ライブアルバム「HIROMI ON STAGE〜よろしく哀愁〜」がリリースされた。演奏は歴代ジャニーズのアイドルのバックで演奏していた「アニメーション」がクレジットされている。

ライブアルバム「HIROMI ON STAGE」収録曲
『題名(邦題)』作詞(訳詞)/作曲/編曲
1. オープニング・テーマ、レッド・ツェッペリン『移民の歌』
2.『ツイストは踊れない』エルトン・ジョン
3.『よろしく哀愁』
4.『夢を破らないで』
5.『ジェット』ウイングス
6.『イマジネーション』グラディス・ナイト&ピップス
7.『メリー・ジェーン』つのだ☆ひろ
8.『裸のビーナス』
9.『モナリザの秘密』
10.『THAT MY GIRL』オズモンズ
11.『花とみつばち』
12.『UTAH』オズモンズ
13.『君は特別』
14.『小さな体験』

12月、シングル「わるい誘惑」がリリースされた。前作「よろしく哀愁」と同一路線のイタリアンツイストで、作詞はシンシアに楽曲を提供してきた有馬三恵子が担った。同一路線でのリリースに踏み切った意図は不明だが、このシングルを最後にひろみはジャニーズ事務所を退所する。

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