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えんじぇる。の詩集

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えんじぇる。の詩集です。
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記事一覧

[詩]「傘をください」

冷たい雨の中を一人歩いていく いつもの街並みは姿を変えて すすり泣くように声だけ響くから 鼓膜を優しく傷つけていくみたい ぶつけ合う傘を避けるように まっすぐ歩いていけやしない 戸惑うようにはじけ飛ぶ雨の雫 心の中まで濡らして凍りつく 通り過ぎる傘の向こうから 誰かが来るような気がして ふと笑顔を作ると見知らぬ人 僕は慌てて目をそらす 雨に濡れることなんて構わない 身体が冷たくなっても構わない 傘を放り投げても構わない ただ心に降る雨に傘を下さい

[詩]「一人で生きてゆければ」

夜更けの街に降る雨に 濡れたまま 立ち尽くして 一人の淋しさ握りしめて このままここにずっといたい 風が吹いても 雪が降っても 果てしない空の下で 一人で生きてゆければいいのにね 楽しさ悲しさ一人じめにして 一人で生きてゆければいいのにね 優しくすべてを受け止めて。。。

[詩]「優しさが輝くまで」

雪の降りそうな日がスキ 君の悲しそうな顔がスキ いつか忘れてしまいそうな ほんの小さな優しさが そこにあるのだから 夏の青い空がキライ 僕の笑い方がキライ 「いつか思い出しそうな ほんの小さな悲しさがあるから」 と君は 優しさの裏には悲しさが 必ずつきまとうけど 悲しさの裏には優しさが そっと声を潜めて隠れている 君はわからないと言って 横を向いていたね 思わず笑っちゃうくらい 君の悲しさを感じてみたい そして涙があふれるくらい 君の優しさを感じてみたい いつか悲し

[詩]「涙」

暗闇の中で神は立ち 光の中で神は見えず ああ 僕は目を開けていられない そして 僕は目をつむる 全てが安らぎの中にあるように そして 僕は目を開く 光の中でも輝く神を求めて 全ては哀しい努力の跡

[詩]「夕日に飛ばした紙飛行機」

別れの日の足音が聞こえる教室で 放課後、二人ただ話してたね いつも一緒にいたから 隣に君がいないことなんて 想像もしたことなかったんだ 窓から見える夕日がまぶしくて 目を細めてただ眺めてたね 空と地平線の境目なんて はっきりしてるわけじゃない そのあやふやな感じは悪くない ふと君が投げたのは ノートを破いて作った紙飛行機 一瞬見えた両翼に書かれた数式なんて そのまま消えて行くものなのかも知れない 僕は思わず笑ってみたよ 夕日に向かって飛んで行くまま 赤く染まって燃

[詩]「優しい鎖」

「好きだよ」 「君が大切だよ」 「愛しているよ」 「僕のそばにいて欲しい」 優しい言葉の羅列に酔っていた私 きっとあなた自身も酔っていたのね 甘い言葉は冷たい鎖となって 二人を繋ぎ合わせただけなのかも 閉じ込められてるみたいでさみしいの スィートホームなんて言わないで 広ければ広いほどそれだけ 私の命も時間も削られていくだけ 私はあなたの所有を望んだけど 所有されてみるとさみしい そんなこと気付いた今になって かわいい日記につけると涙ににじむ 「どうすればいい」 「泣

[詩]「仔猫」

土砂降りの雨の中 一匹の仔猫が泣いていた みんな誰も気付かないふり 冷たい泥水はねかけて 足早に過ぎて行くだけ 僕は仔猫を抱き上げて 狭い家に連れ帰った ミルクを飲む仔猫 そっと背中を撫でてやった その夜、仔猫は僕の手の中で 小さな寝息をたてていた でも、仔猫にとっては 別にそれが僕でなくても 他の誰かでも良いんだよね それでも良いんだ 君が安らかに寝られれば きっとずっと一緒にいてくれよ

[詩]「昨日、ふうせんを見たよ」

昨日、ふうせんを見たよ 赤い小さなふうせんだった 青い空にふわふわと 風に浮かんでいたんだ 誰かが手を離したのかな 自由になったふうせんは 行く当てもないままに 風に流されて行くだけ 遠い記憶の彼方 捜し求めるふうせんは 手を離した僕の心を 空に連れて行ったまま できることならきっと 今ならふうせんに結ぶのは 悲しい気持ちと涙と 誰かに伝えたい想い 昨日、ふうせんを見たよ 赤い小さなふうせんだった 青い空にふわふわと 風に浮かんでいたんだ

[詩]「空のスクリーン ~星の綴り方~」

いつでも会えたあの頃は 言葉なんていらなかった ただそばにいるだけで 君を感じていられたよ 「遠恋なんて続きはしない」 笑っていたのが悔やまれるばかり 「大丈夫だよ」と何度も言って 先に言わなきゃと言葉が続かない 何度も繰り返すメールも電話も 伝えきれないことが多すぎて 言葉だけではもどかしすぎて この空をスクリーンにして 君への想いを描きたい 輝く星をつなぎあわせて 君への想いを伝えたい 何度も繰り返す不安な気持ちも うつむきかげんな君だから たとえ切り取られた空だ

[詩]「あの夏の日」

遠く通り過ぎたなつかしい日々 もうどこにもないような気がするけれど あの頃の夢を君は叶えたのか 優しかった時間は長くはない 淡い思いはいつの間にか セピア色に輝いているもの あの夏の日 通り雨を待っていた 君の横顔 切なく見えていた 悲しかった思い出ばかり それでも君がいてくれたから 僕は明日を夢見ていた 雨が止んでいつか 日差しが伸びていた 君は笑顔で 虹を探し求めてた

[詩]「釣り」

一日中冷たい雨の降っていた翌日 草の香りにむせぶ川辺を歩く 釣り竿をかつぐ父親と 赤いバケツをぶら下げた少年 「せっかくの休みなのに」と言いながら 朝早くから弁当を作ってくれた母親 水筒にはコーヒーとお茶 窓にはテルテル坊主が揺れていた 水かさの増した早い流れの川 水辺はいつもより狭くなっていて 二人はガードレールに腰掛ける 鳥の鳴き声すら聞こえない 交わす言葉も少ないままで その濁った流れに竿を振る 父親に遅れまいと少年は焦る 日の出の薄い明かりが強くなっていく 流

[詩]「ピエロ」

ショウが終わりライトが消える 誰もいない観客席に目を向け 私はため息を一つ吐く 一日の終わり 何も残らない テントの柱によりかかり 派手なコスチュームは汗ばんでいた 笑い顔のメイクを落とし 鏡の中に自分を探す 見つからぬ悔しさに涙が浮かぶ それでも同じ微笑みを作り続ける ピエロはいつも笑っているはず 許される涙はいつどこで 空を飛ぶ魚 海を飛ぶ鳥 全ては幻想 全ては現実 サーカスのショウにピエロは一人 誰にでも笑いを与えるひと時を 愚かな道化はいつもあなたのそばに ピエロ

[詩]「空が高すぎて」

空がこんなに高くなったのはいつからだろう 確かにあの頃は 見上げることなんてなかったけれど こんなに空が高くはなかった 友よ 一体君は何を捨てて 友よ 一体何を残して行ったのか 一人でいられることなんて無かったのに 一人でいる必要なんて無かったのに 君は冬の冷たい風に吹かれて・・・ 今 空が高すぎて どこまでも青くて いつから いつまで こんなに空が高いのだろう ※亡き友に捧ぐ。

[詩]「雨のお茶会」

朝から雨の降る日には 一人でお茶会を開きましょう お気に入りのショパンをかけて 甘いミルクティーを飲みましょう 好きな人なんて忘れて 雨にすべてを流しましょう てるてる坊主なんて外して 甘いチーズケーキ食べましょう そして 赤いレインコートで 雨の並木を歩きましょう 枯葉に落ちる雨音踏みしめたら 元気なんてほら・・・