日記①

あー、聞こえるか?こんな洞窟の中に何があるって……ああ、分かってるよ。行けばいいんだろ行けば。少しくらい話してくれてもいいだろ……ったく。じゃあ、これから進んでいく。

中はかなり冷える。涼しいってレベルじゃないな。肌寒いくらいだ。
しかも狭いし……くそっ、なんで俺がこんなところに……ん?
いや……別に、なんでもない。ちょっと臭っただけだ。多分、潮の匂いだと思う。先に進む。

しかし……足場が悪いな。海岸の洞窟だからか?
は?洞窟なんて入ったことねぇからわかんねぇよ。とにかく肌寒いわ足場が悪いわでさっさと外へ出たいね。
っと……おい、行き止まりだぞ。海水が溜まってる。
……わかったよ。まぁダイビングスーツやら酸素ボンベやら装着させてんだ。こうなることは予想してたさ。
しかし、臭いな……これ潮の匂いか?なんか、嗅いだことはある気がするんだが……まぁいいか。とにかく先に進む。

コポ。コポコポ。

……ぶはっ。ふう。おい、こういう洞窟に溜まった海水に入るのは危ねぇって聞いたことあるぞ。何かあったら責任とれよな。
んん……?なんだ?なんか音楽が……。
は?タンゴ?なんでそんなもんが海水溜まりを抜けた先で聞こえんだよ。いや、ちょっと待て……くせぇ!これ納豆の匂いだ!ようやくわかったぞ!
音楽も匂いも洞窟の奥から聞こえてきやがる。先に進む!

(しばらくD-××××の息遣いとタンゴのリズムだけが聞こえてくる)

だんだん音が大きくなってきやがった。しかも納豆くせぇ……。
……あ?なんだ、これ。ナメクジ……?いや、ちげぇな……ウミウシか……?
うっ、くせえ!このウミウシ、納豆くせえぞ!しかもこいつらからタンゴの音楽が聞こえてきやがる!おいうるせえしくせえ!なんなんだこいつら!?

え?なんだ?遠くから……なんか……タンゴじゃねぇ。別の音が……。
おい、待て。待て待て待て。音が。音がするぞ。に、逃げるぞ。いいか?いいよな!?にっ

(インカムマイクが落下したと思われる衝撃音。のち、マイクの充電が切れる2時間後までタンゴのリズムだけが聞こえる)

HGN-005「ウミウシと納豆のタンゴ」調査記録①


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