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協働企画の作り方 ~win-winとなる第3案の着想【いちばん身近な協働論】


1、異なる意見が出る協働プロジェクト

以前の記事で、協働プロジェクトを実施する時には、企画前からさまざまな立場の方々の声に耳を傾け、意見やアイデアを集めながらコーディネートすることが必要だと述べました。
以前の記事↓

▶異なる意見に収拾がつかなくなるのでは?

しかし、異なる立場の主体が、それぞれに異なる意見を口にした時、それらをどうやってすり合わせ、企画に落とし込めば良いのでしょうか?

バラバラでまとまらない企画…

バラバラな意見でカオスになってしまうなら、最初から意見などに耳を傾けず、決定済みの企画で進めた方がやり易いのではないでしょうか?
実際、そのように形式的な協働に終わってしまうケースも少なくないと思います。

▶異なる意見を、最高のヒントにしよう!

しかし、さまざまな異なる意見を上手く取り入れることができれば、未来に向けてプロジェクトをどう舵取っていけば良いかを考えるための、最高のヒント・道しるべとなります。
ですから、どうか異なる意見に耳を傾けることを、やめないでほしいと願っています。

2、ポイントは、互いのメリットを重ね合わせること!

▶「交渉学」を参考に!

異なる意見をまとめていく上で、参考になる考え方の一つが、「交渉学」です。譲歩して交渉がまとまるケースはほとんどなく、共通の利害を探し当てることが必要だということが、以下の書籍で「交渉学の神髄」として解説されています。
参考書籍↓
Deep Skill ディープ・スキル 人と組織を巧みに動かす 深くてさりげない「21の技術」 [ 石川 明 ]

▶win-winの協働を企画する!

協働企画をまとめる時、互いの主張の妥協点を探すよりも、それぞれの魅力を見出し、メリットを重ね合わせようとする方が、上手くいきます。
そして、win-winが叶う協働企画は、関わる人たちのモチベーションも自然と高くなり、協働の目的を達成しやすくなります。

3、第3案の着想 〜ミックスジュースのような協働企画!

では具体的には、win-winの協働はどのように企画すれば良いのでしょうか?
例えば第1案と、相反する第2案がある時、それら両方のメリットを取り入れた第3案を、どのように着想すれば良いでしょうか?
順を追って説明していきます。

(1)取り入れるべき要素の検討

今まで集めた、さまざまな意見をまとめ、その主張の真意や、求められている事などを検討します。全てを取り入れようとするのではなく、協働の目的に照らし合わせて、取り入れるべき要素を選んでいきます。

(2)ヒントとなる事例を調べる

ウェブ検索を徹底的に行い、企画のヒントとなるような先行事例を調べます。先行事例をそのまま模倣することはできませんが、「この方向性はいいな」「この表現は参考になる」という風に、部分的に生かせそうなヒントを見つけるのは有効です。

先行事例をしっかり調べる!

また、たくさんの事例を調べているうちに、その分野の全体像が見えてきたり、自分自身でも何か着想が得られたりする場合があります。

(3)同じ立場の協力者と相談

異なる立場の人たちの意見を十分にキャッチできた後は、今度は同じ立場の協力者と対話を重ねて、企画の相談をしてみることをお勧めします。
いわゆる「壁打ち」と呼ばれる過程で、まだ固まっていない素案を話して整理し、少しずつ企画の輪郭を見出していきます。

批判的な人もいるので注意しよう…

ただし、この場合、相談する相手は選んだ方が良いと思います。人によっては、まだ出来上がっていない企画を前にすると、イライラしてしまったり、出来ていない部分について批判的な発言を重ねる人もいます。
未完成な状態であることを前提として素案を見せても、冷静にコメントをくれる相手を選ぶことが重要です。

(4)ひらめくまで考える!

(1) ~ (3)を繰り返しながら、頭をひねり、「これだ!」というひらめきに至るまで考えて、考えて、考え続けます。
この過程は、最終的に良い案に至れるのか分からない不安の中で、悩み続けなければならない「産みの苦しみ」の時期と言えます。
ですが、悩んで考え続けることは非常に重要で、この過程抜きにして、さまざまな声をまとめ上げる協働企画の着想はないと言っても過言ではありません。

粘り強くアイデアを考え続けることについては、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」や「ネスタリゾート神戸」などの再建で有名な森岡毅さんの書籍も、とても参考になります。
例えばこの書籍↓
USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? (角川文庫) [ 森岡 毅 ]

ミックスジュースのような協働企画

こうして企画を考え抜いて、「関わる人たちの意見やメリットの重なり合う案はこれだ!」と着想出来た時、さまざまな異なる魅力が詰まった、まるでミックスジュースのような企画案が生まれます。

4、企画案を覆す「勇気」と「覚悟」

ここで一つ重要な点について特筆しておきます。
それは、一生懸命考えついた企画であっても、まだ「企画案」であり、最終決定前には、異なる立場の皆さんに共有し、意見をもらいながら、さらに案を覆して修正をする「勇気」と「覚悟」が必要だということです。

それは決して、全ての要求に応えるという意味ではありません。
ですが、共有した企画案に対して、極めて妥当なコメントや、さらに良くするアイデアが寄せられることがあります。
そのような場合には、企画案に修正を加える姿勢を失わないことが必要だということです。

覆して修正する勇気を!

これをしようとしない人というのは、自身の考えた企画案が否定されているような気持ちがして、周りの人の意見やコメントを受け入れられなくなっているのです。

ですが、関わる人たちの満足度が高まらないままで協働企画がスタートしてしまうケースは、とてももったいないことです。
手間はかかりますが、最高の企画を目指して、最後まで修正を続ける気持ちを持ち続けることで、協働に関わる人たちとの一体感は増していきます。

5、そして皆の協働企画になっていく…!

「協働コーディネーター」の役割は、異なる立場の人たちの間に、虹のような架け橋をつくることです。
win-winとなるような協働企画を舵取りしていけるかどうかは大切な挑戦で、皆の興味関心が向けられる協働プロジェクトでは、互いの間に「進行感」が生まれ、わくわくした感情を共有できます。

虹のような架け橋を…!

そのような、本質的な協働が、一つ一つ増えていくことを願っています!


※このnoteでは、各地での協働の推進を目的に、協働や協働コーディネーターについての一般論や考察、個人での地域との関わりなどを発信しています。(行政の職務上知り得た個別具体的な事例については書けませんので、ご了承ください。)



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